苦悩する皇帝陛下
休養して2日経った後の事、次の日、新たに学園から支給された制服に着替える為にメイドと共に着替え室に向かう。
「さぁ、杏月様。次からは気をつけて下さいませ?何かあったら直ぐに私共か照之様に必ずお伝え下さい」
「はい、気をつけます……が、何故そんなにくっついて歩く必要あるんでしょうか……??」
「もちろん、おおありでございます!こうして朝のスキン……ゴホン、誘導しなければなさりませんといけませんので」
「えっ……今スキンまで言いましたよね?!それに誘導する必要ないですよね!!誤魔化さないでください!」
「誤魔化してはおりません、さぁ先を急ぎましょう!!」
メイドはズカズカと杏月を引っ張って部屋に入る。
メイドは活き活きして人形を着せ替えるようにルンルン気分で進めていく、今日の下着はレースの入った淡い水色、ワイシャツを止め次々にカスタムする。
一通り終わるとメイドは白のオーバーニーソックスを履かせる、そして愛でるようにスーッとひと撫ですると杏月はビクッと身体を震わせた。
「さぁ、完璧でございます。今日も一段と麗しい杏月を拝める事ができ最大の祝福でございます」
「そ、そんなことないです……。いつも着替えの方、ありがとうございます」
「は、はい……。もちろんでございます」
杏月の笑顔にメイドは毒気が抜かれたように見惚れてしまった、直ぐにはっと我に返り腕を引きながら玄関に向かう一方、玄関ではともきと照之が話していた。
「いや、それにしても何も無くて良かったです、もしそんなことが起これば俺はアンタを殴りかかっていたかもしれません」
笑顔で言うともきに照之は苦笑いしながら答える。
「物騒だな……まったく。俺もビックリしたのだぞ!でも襲われる前に助けられたのは不幸中の幸いだったな」
「ですね、特にみずきはこう見えて大好きな姉ちゃんを傷つける奴には物凄いタックルしてきますから気をつけて下さいね」
「見かけによらず恐ろしい奴らだなお前らは……」
ともきと照之は話していると杏月が近くに寄ってくる。
「照之様、申し訳ございませんでした。お陰様でこの通り、回復致しました」
杏月は満面の笑みを浮かべ報告すると照之も照れながらうむうむと満足気に頷いた。
「でわ、行こうか。杏月」
「はい、照之様。先に行ってくるね、ともきに2人とも!いってきまーす!!」
「うん、姉ちゃんいってらっしゃい!!」
「いってらったい!!!!」
「おねぇーちゃんいってらー!!」
3人の弟達に手を振って屋敷を出て、学園に向かう。
車でのんびりしていると照之が思いついたように杏月に話しかける。
「あっ、そうそう。この時期に学園の方で運動会があるんだったな、杏月は何かしたいのはあるか?」
「と……仰いますと?それに運動会にしては遅いんですね、ここの学校は……」
「まあな、ここの学園は夏は忙しい奴らしか居ないから秋頃に運動会をするんだ、あの学園はな。それにだ、普通の学園にはない規模で行われるのだ!」
「普通の学校ってリレーとかボール入れとか綱引きとかですよね……?ではここの学校はどんな事するんですか??」
「よくぞ聞いてくれた、ここの学園のイベントの1つだが先ずは屋台が物凄い数が並ぶ、そしてプロのリレー選手が走るのを見る!!様々なプロの出し物はもちろんのこと、在学生徒にもする行事も少しある、内容が内容の為、3日間かけて行われるのだ」
「な、なんか凄いですね……それはもう運動会の領域を超えているような気がします」
杏月は苦笑いしながら言う。
「お主の気持ちも分からなくはないが……なんせ富豪が集う学園だからな。それに普通の学園よりイベントが多いのもここだけだ、因みに学院祭は春夏秋冬でその季節ごとに風流を楽しむのはみな一様に賛成だとかでな?楽しいし美味しい物ばかりだぞ!!」
「おぉー!それは凄いですね、楽しみです!!」
「そうだろう、そうだろう!!それに無理して運動会に出なくても良いんだぞ?1人1回でも何かの種目に出れば後は運動会を見るなり屋台を回るなり出来てな、その辺は学園の自慢する部分とか学園長が言っていたな」
照之は楽しそうに語っていると杏月も美味しい物にピクつきキラキラした目でその話を聞いていた。
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教室に着き、入るなり挨拶を交わし席に着く杏月、その後に沙霧がとてとてと寄ってきて杏月の前の席に現れた。
「やぁ、杏月ちゃん。おはよぉー」
「おはようございます!沙霧様、先日はお見舞いに来て頂き、ありがとうございます」
「いい、私も杏月ちゃんにその……会いたかった。元気そうで良かった」
「えへへ、嬉しいです」
「撫でて」
沙霧は表情は浮かべないものの杏月に撫でて貰いたくてしょうがない様子でいた、杏月が微笑みながら頭を撫で始めると猫のように目を細め、気持ち良さそうにしながら口を開く。
「杏月ちゃんがいなかった時ね、照之君が大暴れしたの……。物凄い凄かったよ」
「えっ……?!な、なにかあったんですか??」
杏月は不思議そうに尋ねると隣で聞いていた照之が割って入ってきた。
「わー、お、おい!!沙霧。言うでない」
「えー、でも凄かったじゃないですか……あの事件が起きた後クラスの全員の前で言ったの。今回の件は何とか鎮圧出来たがもし秘書である俺の付き人に手を出したら死よりも恐ろしい制裁が下ると知れ!!って高らかと宣言して言ってた」
沙霧は転々と話していくと杏月は唖然として照之を見ていた、照之は慌てて弁解する。
「あ、杏月……それはだな、今回は襲われず助けられたが今後そうゆうのが無いようにとだなぁ……えーと……そのー……」
照之は杏月の前だと威厳も何も無くなる姿に沙霧も驚きながらも口にする。
「わぁ、あの照之君をここまでするなんて杏月ちゃん流石!私の杏月ちゃん」
小さく杏月に微笑むと杏月も両手をバタバタして否定する。
「いやいや、そんなことないですよ?!私なんかそんな照之様をどうこうできる程の人間ではないですから……ねぇ、照之様??」
杏月はえへへと言いながら照之に笑顔で尋ねると照之は杏月の天然プリに絶句しながら可愛さに打ち震える。
ふふっ、魔性の力。可愛いくて天然……そして優しくて不思議な子。
沙霧は内心そうに思っていると照之の慌てるふためく姿に微笑み杏月に撫でられ続ける。
照之も杏月の魔性の魅了に吸い寄せられ普通の少年に引き戻させられる、無自覚にも程がある!!と講義したい気持ちを抑え机に項垂れていると今度は背後から杏月を呼ぶ声が聞こえた。
「杏月さん、この前は済まなかったな……そ、そのまさか私のグループにあんなヤバい奴がいたなんて思ってもみなかった。傷つけるつもりはなかった、許されるとは思ってない……でも直接謝りたくて……ごめん」
その声の主は愛里菜だった、ガサツな言葉遣いだがそこには敬意が篭ってるような喋り方に照之は暫し沈黙でいると杏月は背後を振り返って微笑みながら言う。
「ありがとうございます、愛里菜様。あの気を張ったような喋り方に少し引っかかっていたんです!あれが本当の愛里菜様とは思えなくて……そしたら自然と身体が動いてました……今度から気を張らずにそして喧嘩とかしないでくださいね?」
杏月は説教をするもその優しい姿に誰しもが母性溢れる母親を連想させる姿、愛里菜は終始素直に怒られていると最後には杏月は愛里菜の頭を優しく撫でて言う。
「いいんです、それに雰囲気変わりました??イメチェンしたみたいじゃないですか!!髪型、その方が美しいと私は思います」
「ば、ばか……。恥ずかしいだろうが……あ、杏月さんに言われて少し雰囲気変えてみたんだ!!髪も派手な髪型にアレンジしていたのもシンプルにしてみた。あの時杏月さんが下ろした方が可愛いってその……い、言ったからだな……んーと、その……どうだろうか??」
愛里菜は派手なギャルの古典的な髪型をしていたが髪色は派手なもの清楚の如くストレートヘアに可愛いピン止めが髪を彩っていた。
モジモジしている愛里菜に杏月は万遍の笑みで答える姿に同じクラスの男子生徒の視線を釘付けにさせる、照之はまたもみなを魅了させていると思うと胃が軋むような痛みが走るのであった。
「とても似合っております」
杏月は満足気に頷き微笑みを浮かべて言うと愛里菜は物凄い勢いで頬を染めていった。
「あ、ありがとう……。とても嬉しいよ」
そっぽを向きながら唇を尖らせ愛里菜は言うと杏月は微笑ましい眼差しを向けていると前の席に座っていた沙霧が不満げにプクっとしながら杏月をつんつんしているのであった。
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教室で語学の勉強と数学の勉強をし体育の時間になった頃、体育館に向かっていた。
あぁ、我の杏月が……おなご達に取られてしもうた……。
照之は落ち込んだ様子で杏月が真ん中で右に沙霧、左に愛里菜が仲睦まじく向かって行くのを見ると何故か同性なのにヤキモチを募らせていた。
「杏月ちゃんは運動得意??」
「私はそれ程ですかね、運動は得意でもなく勉学も出来ない方なのでどれもからっきしです……」
「そうなのか、まあ安心してくれ杏月さん。今日は男子がバスケで女子はバレーなんだ、出来なければ私が守ってみせる!!」
沙霧の言葉に杏月は項垂れながら言うと愛里菜は豊満な胸を張りドヤ顔で言い張った。
3人の異様な組み合わせに男女同じクラスの者達は唖然するも杏月達の笑顔に魅了もされる一同、照之は胃がマッハで削れて行くのを感じていると霧崎が話しかけてくる。
「照之、羨ましいな本当に……。絞め殺してしまいたいぐらいだ!!」
霧崎が満面の笑みを浮かべ物騒な事を言い始めると照之は苦笑いしながら返す。
「ばーか、そんな妬くな、面倒なヤツめ!」
「ホントの事だ、杏月ちゃんは早速、日が浅いって言うのに他のクラスもざわめいているぞ?」
「もうか?少し早くないか??」
「まあ、無理もねーよ……。あの誰にも靡かなかったアリシアちゃんと親しいしそれに沙霧ちゃんだってクールビューティだがあの笑顔見てみろ。男なら抱きたいに決まってる!!それにだ、あの厄介者だった愛里菜ちゃんも手懐けりゃ噂も広がるさ」
「そりゃあそうだな……中々の面々に俺も絶句が止まらん」
「同じく俺もさ、御曹司でも落とせない子はいるしな。だがそこがまた萌える!!杏月ちゃんは特にそうだ!!あの優しさと美しさを両方を見せ付けられたら惚れない奴はいないさ」
「お前がそれ程買っているとは余程だな、俺も思うよ。杏月の妖艶な姿にあの母性溢れる、慈愛に満ちた優しさはどのおなごにもない物かも知れないな」
「だなー、俺もまさか照之がここまでとは思わなかったぞ??普段からその気がなかったから急に色づき始めやがってこのこのー」
霧崎は照之に肘でつんつんすると霧崎は肩を組み、照之は言う。
「俺もさ、元々おなごに興味はないと思っていた。だがそれすらも魅了する奴が俺の前に現れた……それだけのことさ」
照之の呆れた言いっぷりに霧崎はやれやれという感じで言う。
「そう肩を張るなって……それより杏月ちゃん貰っていいか?」
「それは許さん」
「えーなんでだよ?!先っちょだけでも良いからさー」
「許さんぞ!!もし手を出したらお主の会社全て乗っ取るからな??」
照之のニタッと黒い笑いを浮かべると霧崎は額に汗をかきながら言う。
「本気にすんなよ……俺の魅力で杏月ちゃんを惚れさせるさ!!俺らの仲じゃないか!!そう怒んなよ」
霧崎はバジバシと照之の背中を叩き言うと照之も度付きながら体育館に向かった。
体育館に着くと3年生と2年生が広い体育館で男女別れ運動に励んでいた、杏月というと準備運動をしてウオーキングアップする為、走ったら直ぐにダウンしていた。
想像以上に体力が落ちていたことに杏月は落ち込んでいると何故か膝枕している沙霧が言う。
「大丈夫、杏月ちゃんは少しだけ体力がないだけ。男子生徒みたいに体力お化けじゃないんだし大丈夫」
「あ、ありがとうございます……。気になったのですが何故沙霧様はこちらにいるんですか??しなくて平気なんでしょうか??」
「ん、大丈夫。先生に杏月ちゃんの傍で面倒見ると言ったら直ぐに許可降りた」
「ええ、そんなんでいいんですか?!」
「ん、いいの!先生あれでも女の子同士の姿を見るの好きみたいだし」
余りの爆弾発言を投下する沙霧に杏月は先生がそれでいいのかな……??と疑問に思っていると沙霧がやたらと杏月の頬や頭を撫で回す。
「杏月ちゃん可愛い、髪もサラサラで艶々してる」
沙霧は杏月の髪型をパラパラと落とし触れていると杏月は擽ったそうにしながら言う。
「ちょっ……髪……敏感なので余り触らないでください!!」
「いや、この触り心地は一品!!それに肌もすべすべ」
「いやいや、沙霧様も肌がすべすべで髪も綺麗じゃないですか!!」
杏月はプクっと膨らませ言うと沙霧は嬉しそうに小さく微笑み杏月を愛でているのであった。
「杏月が可愛い!!」
「杏月の可愛い姿がもっとみたい!」
と思った方は是非評価をお願いします。
ブックマークが32件になってました!!
ありがとうございます。ありがとうございます。
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