時は来た!学園に挑む杏月
暑い夏が終わり秋に衣替えを始めた頃、9月の上旬の事。
杏月は白帝学園に通う為、支度を整えていた、久しぶりの学校に戸惑いとワクワクが交差する。
ぽけーっと惚けているとメイドは白帝学園の制服を着付けていた、淡いピンクの可愛い下着を身に付け杏月の上にワイシャツ、ネクタイは白と淡い紺のミックス色、セーターを着せ明るいチック柄のスカートは絶対領域までメイドは怠ることなく調整していた。
一通り着替えさせるとメイドは杏月を見ながらズレてないか調整していく、確認が終わるとメイドは明るいブレザーを杏月に羽織る、胸ポケットの方には白帝学園と金色に装飾され細かい芸術的な細工がされていた。
メイドは姿鏡を目の前に置くと最終確認をする、杏月は気高い制服に身を包むストレートロングヘアの自身の姿を目に止める。
自身の身体付きやウエストが締まっており制服を着こなすには充分な魅力的な自身の身体に沈黙しながら上下を見ては耳が熱くなるのを感じる杏月。
メイドはいつも通りの反応に満足気にいると杏月の学生鞄を持ち共に玄関に待つ照之の方に向かった。
手を引かれいつもの如く2階から降りてくると弟達も照之と一緒にいた、杏月は照之の方を見ると色合いは同じで男性用の物を身に纏い髪をしっかりセットして鞄を持って待っていた。
皆の方に近付く杏月。
「ど、どうかな……似合ってますか??」
「あ、ああ。とても似合っておる……」
「杏月姉ちゃん……とっても似合ってる」
「おねーちゃん可愛い!!」
「おねぇたん!!かわゆい!!!!ぎゅーーーー」
口々に自身の姿に良い解釈に胸を撫で下ろしているとみずきはわーーと言いながら制服姿に身を包む杏月を抱き付いた。
「みずきたら……よしよし。また帰ったらね?」
杏月の方を見上げるみずきに杏月は、はにかみながら笑顔でそう言うとみずきは真っ赤に顔を染め沈黙して頷くも抱き締める力は一切抜かなかった。
「そろそろ行こうか。杏月」
「はい、照之様。3人とも迷惑かけないでやる事はやってなさいね??」
杏月はみずきを撫で回し照之の合図で頷く、弟達にそう言って微笑みを浮かべ手を振って外に向かった。
リムジンの傍でドアを開けて爺やが待っていた。
「これはこれは、麗しゅう限りでございますな。杏月様」
「爺やもそう思うか??」
「はい、わたくしもそう思っておりました」
2人の会話に杏月は少し照れるも直ぐに言葉を返す。
「2人共、茶化さないでください!!」
「杏月様、わたくしは本気でございます。朝から美しい杏月様を拝見できる喜びはこの上ない極上でございます」
「そうだな、爺やの言う通りだ!さて杏月よ先に乗るが良い!!」
「むー……はい、お先に失礼致します」
頬を少し膨らませ先に杏月は車内に乗り込む、続くように照之も乗り込むと静かに爺やはドアを締め運転席に向かい車を出す。
「照之様、普段から爺やさんが運転なんですか??」
「ああ、そうだぞ。用事がなければ大体は爺やが俺の専属で傍に仕えておるな」
「なるほど……でも爺やさんってたまに気付かない時にはその場に居る事多くないですか??」
「まあ、それはあるな!!俺もその辺は良く分からん、謎が多いが信頼できる最上の執事だ」
「照之様がそこまでお墨付きとは流石は爺やさんって感じですね!!」
「はははっ!!所でこれから学園に行く事が多くなるが無理はするなよ?疲れたら休めばいいし、変な奴がちょっかい出してくれば直ちに申してくれ」
「はい、自分の身体と相談しながら行きますね!でも久しぶりの学校なので緊張致します」
「まあそれはしょうがない事だ、今日は始業式で後は交流会ぐらいだから杏月は俺の傍に居れば間違いないさ」
「はい、離れません。迷子になったら困りますから……えへへ」
杏月は頭に手を当てて恥ずかしい照れ笑いを浮かべる、照之は杏月の空いている手をそっと握り締め笑顔を杏月に向けると杏月も嬉しそうに笑顔になる。
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少し時間が経ち2人は白帝学園に着く、ドアから風景を覗くと広々とした校舎や校庭が目に入る。
登校する殆どが富豪の為、送り向かいが付き学園の入口の噴水のロータリーでは沢山の車が並ぶ、和気あいあいと友人と会い手を振っていたり話し込んでいる人を見ると「おお!!」と感動していた杏月。
こうして学校に通えるのも照之のお陰なのだとしみじみ噛み締めていた杏月、噴水の近くに照之のリムジンが着くと爺やがドアを開ける。
「さぁ、坊ちゃま、御到着でございます。」
「ああ、ご苦労だな爺や。多分午前中で終わると思うが午後は交流会があるが、今日は2時くらいに帰るからその辺りで迎えに来てくれ」
「はい、承知致しました」
爺やは微笑みながら頭を下げる、照之はうむうむと頷き外に出ると車内に向け手を差し伸べる。
「さぁ、杏月。こちらに」
照之は微笑みを浮かべ杏月にそう語りかける、よし頑張ろう!!と杏月も凛とした表情になり照之の手を掴み外に出る。
「でわ、御2人共、行ってらっしゃいませ」
爺やは頭を深く下げる、照之と杏月は軽く解釈して学園の中に入っていく。
車に降りて大通りの道を少し歩く、先に大きい靴箱が常備されている玄関に向かう、向かう途中照之の隣に付き添う様に黙々と歩いていると多くの視線を感じ取った。
その大通りは商店街の様な大きい通りに左右にはほど良い等間隔でお高そうなベンチが置かれていた、座って話している者、学園の中に入る為近くで歩いていた者、そのどれもが一目置く照之に視線の集中砲火を受けていた。
凛とした出で立ち、普段の雰囲気が嘘のようにピリ付く神々しいオーラを出すものの杏月を見る時は優しさに溢れた微笑みを浮かべる。
杏月も微笑むと照之は少し紅色に頬を染めるも凛とする姿に女性生徒達を魅了させ男衆は憧れの眼差しを向けていた。
杏月はなるべく浮かないようにそして転ばないように意識してゆっくり歩いていると近くにいた男子生徒が呟いた。
「う、美しい……。天使の様な姫君だ……」
そんな事を言い出す男子生徒を筆頭にその視線は杏月に向けられたのだ、内心慌てる杏月も傍から見たら凛とした表情を浮かべ美しく艶やかな黒髪を靡かせ幼い美少女が優雅に歩いている姿でしか、なかった。
うぅ……。皆が見てるぅ……。
杏月はそんな事を思いながら平常心でいようと頑張っていると照之が杏月の方を見ると「大丈夫か??」と微笑み、優しい声で心配してきた。
「は、はい……。緊張でハラハラしてます」
照之の微笑みにホッとして凛とした表情が崩れ微笑みに変わった瞬間だった……妖艶な微笑みに打たれたその場の人間が男女問わず杏月の傍に近付き、こうべを垂れる。
「美しい!!!!姫君よ是非私の姫になってはくれまいか?!」
「ちょっと邪魔よ!!」
「な、なんだお前は!!今は俺が話しているんだぞ!!」
「姫よ、是非わたくしと!!」
「いやいや、わたくしと!!」
「いや私とよ!!私とディナーに行きましょ!!」
「いやいや私と行きましょ!!」
「ちょっと!!邪魔しないで頂戴!!」
「いや、それはあなたです、わたくしはこの姫と共に!!」
「お前ら女だろうが!!邪魔だ!!」
「何?!うるさい不細工!!」
「ふぁっ?!な、なん…だと……」
「不細工が調子に乗らないで!!女でもこの子と一緒にいたいの!!」
「そんな奴らは放っておいていいから、僕と行きませんか??」
「邪魔よ!オラッ!!」
「グッハッ……!?」
「ちょっと押すな!!」
「お前が押すな!!」
「やんのかコラ!」
杏月の周りに30人者束が杏月と照之を取り囲む、照之は大きい溜息をつき杏月を抱き寄せ言う。
「騒々しい!!鎮まれ!!!!」
照之の鋭い眼光をし力強く堂々たる神々しい発言をしながら右腕でアクションすると騒いでいたのが嘘のようにその場の者達は静寂に包まれる。
「お前達、朝からうるさいぞ!!戯けが、杏月が困っておるだろ!!」
その場の者は照之に圧倒され沈黙に襲われるも素直に頷く、照之は説教し始めようとした時、胸に抱き寄せた杏月がうるうると瞳を潤わせ上目遣いで言う。
「あ、あの照之様。私は大丈夫です、それより行きましょ??」
杏月の澄んだ鈴の音の様な美声にその場の者は杏月を終始見惚れてしまっていた、凛としていた表情がうるうるの瞳を揺らし上目遣いで言っている姿に照之もそっぽを向き無言で頷きその場を去ろうとすると杏月は周りの人に言う。
「皆さんも早く行かないと遅刻しちゃいますよ?」
照之の胸元から振り返り座り込んでいる者達に潤わせる瞳で微笑みを浮かべそう諭すとみな頬紅を浮かばせその場で倒れる様に天を仰いでいた。
はぁ、杏月は無自覚なのか知らんが恐ろしいな……。アヤツら完全に杏月に惚れたぞ……!?絶対に死守せねば……。
照之は胸の奥に堅い決意を施し、波乱の予感に寒気立つも杏月をエスコートするの照之であった。
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広い渡り廊下を通り職員室に向かい用を済ますと照之の学ぶ教室に2人は向かって階段を登る、どの学校よりも階段や渡り廊下が広く綺麗に装飾された空間に絶句していた。
教室は一般の教室とは異なり2人1組で幅広い机が複数並べられ椅子も心無しかゆったりタイプのチェアが2人分ずつ配置されていた。
早速教室に照之が先に入ると登校してきた生徒は半数以上がもう着席して私物を漁っていたり化粧したりゲームをしたりしていた。
「おお、照之来たか。おはよう!!」
「ああ、霧崎久しぶりだな。みなもおはよう」
「おはよー照之さん」
「おはようございます」
「おはおはー」
「おはよう皇帝陛下ー」
「おはようー」
様々な人に声を掛けられる照之に杏月は関心しつつ粗相のない様に静かに照之の後ろに付き中に入ると霧崎は逸早く杏月に気付く。
「ああ、麗しの姫君。杏月ちゃんもこの学園に……俺は嬉しいよ」
霧崎は満面の笑みを浮かべ話しかけると周りの反応が物凄い伝達力を発揮した。
先程まで自由にしていた者は霧崎の声でふと入口付近に視線を向けるとそこには凛とした幼い美少女だが、異様とまでに感じる妖艶の姿を目にした途端その場が静止した様に静まり帰った。
「は、はい。照之様のお陰で再びこうして学校にこれて嬉しいです……。そ、そのよろしくお願い致します。霧崎様」
小さき微笑みを浮かべ、ぺこりと頭を下げると霧崎は万遍の笑みを浮かべ満足気にその場に鎮座し失神していた。
杏月は霧崎がその場に置き物の様にしているのを首を傾げて見ていると照之は手を引いて自分の座る席に誘導する。
入口付近の右側、3列目に行き杏月を誘導すると奥に座らせ照之は手前に座る。
わぁー、ふかふか……。学校って木のパイプ椅子だと思ってたのになんでソファーみたいなんだろう。不思議な学校だなぁ~。
杏月は初めて見る異様な教室に目を配り身の回りから観察していると照之は肘を着きながら杏月を眺めて微笑んでいた。
「杏月、楽しそうだな」
「はい!!だって学校にこんなソファ普通置いてないんですもん、それに見てください!このテーブル長くて広いです。こんな教室他にないですよ」
杏月は食いつくように言って色々あーだこーだ言って微笑みを浮かべ楽しそうに言う姿に周りの生徒も杏月を見つめていた。
「そうだ、多分自己紹介を頼まれると思うが普通に言ってくれて構わないからな??もちろんもし言いたい時はとりあえず秘書として言っておいてくれ」
「はい!!」
時間が少し経ちチャイムの鐘が白帝学園に響き渡ると教室に担当教師が教室にやってきた。
「おはよう諸君」
「「「「「おはようございます」」」」」
「皆さんはもう見ていると思いますが、今日からこのクラスにやってきた方がいらっしゃいます。照之君の隣にいる女子生徒の杏月さんです、杏月さん簡単に自己紹介をお願い致します」
挨拶を終え早速本題に入るように担任教師が言う、背広に身を包む30代ぐらいの年齢の男性が優しい口調で杏月の方に視線を落として杏月に言う。
杏月は緊張していると照之は安心させるように杏月を向いて微笑む、杏月は一息深呼吸してから席を立つ。
「ご紹介にお預かり致しました、姫美杏月と申します。この度照之様の秘書を仕えさせて頂き、尚且つご好意でこの学園に入れる事になりました……。えーと、色々迷惑掛けてしまうかも知れませんがこれからよろしくお願い致します」
杏月は緊張した面持ちで軽く自己紹介して頭を下げ着席する、ふぅと解放された時に出る溜息を漏らすとちゃんと拍手して歓迎された事に胸を撫で下ろす。
「皆さんも仲良くしてあげて下さいね、でわこれから20分後にホールに向かい始業式を行いますので速やかに移動をお願い致します。ホールでは自由に座って良いのでしっかりと学院長のお話をお聞き下さいね」
教師が穏やかな表情でそう告げると、教室を後にした。
その瞬間男衆は杏月をギラギラとした眼光で見つめる生徒や照之と一緒に居る事に驚き奇異の目で見る者もいた、女衆は何か愛おしそうに見る人やチヤホヤされて気に食わないのか見下すような視線を送る生徒もいた。
杏月が緊張して俯いていると照之の優しい口調で杏月に話しかける。
「杏月、そろそろ移動しようか??余り1人で行動は良くない。何かあったら直ぐに言ってくれ」
「は、はい。気をつけます」
「でわ、ゆこう!!」
照之は席を立つと杏月も立ち一緒にホール会場に向かった、杏月が立つ時感じた嫌な視線の方に目を向けるとそこには小麦色の肌のギャルの様な出で立ちに派手な髪はクルクルとカールしていた、周りには何人かの男衆が存在して杏月の存在に不快な念を抱いていた。
杏月は何も無いように気をしっかり持ち、照之の隣に寄り添って共に向かう。
「杏月、本当に何かあれば言え……。その時は俺が全身全霊で守ってみせる」
杏月の全身がチキンの肌の様な鳥肌を立てていた、照之の何かを悟り釘をさす様に何度も言ってくる、いつの間にか本気の鋭い眼光に幼い杏月には少し息苦しいとも取れるが杏月は静かに頷き空いている手を繋いだ。
照之は子鹿のようなクリクリな瞳をうるうると潤わせ、手を繋いで来た杏月に否定することなく握り返す。
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ホールに着く2人、杏月はその広さに唖然としていた。
エンドステージの様な形をした2500人を収容出来る規模のホール、ここが本当に学校のホールなのかと疑問視される程の圧巻する空間、中央にフラットに配置される椅子、1段から3段までひな壇がステージを囲む様に円を描く。
呆然としている杏月に照之は手を引き誘導する、普段座っているのだろうかと思う程迷いのない進み方に杏月も終始沈黙のまま引かれて行く。
丁度ステージを見下ろせるひな壇の中2階に座った、所々位の高い人と思える生徒が照之の近くに座る、少しするとアリシアが杏月を見つけると杏月の隣に座る。
「あら杏月じゃない、遂に来たのね??」
「は、はい。お陰様でこうして学校に通える事が出来ました。それにしてここ大きくないですか……アリシア様??」
「そうね、ここが集会やプレゼン、披露する時に使われる場所なのよ。つい最近にありましたお茶会の会場は社交の場として偉い人と交流して嗜む場所なのよ?この学園は広いし迷うから暇な時でも案内して差し上げてもよいのですわ」
アリシアはツンツンしながら説明してくれていると杏月も笑顔で返す。
「ありがとうございます。アリシア様!!心強いです」
「っ……!?と、当然ですわ」
アリシアは頬を染めそっぽを向いて言うのだが心なしかうっとりして普段の冷徹な仮面が軽々と塗り替えられ杏月にくっつく様に杏月側に寄っていた、周囲で杏月とアリシアを見ていた男子生徒は絶句していた。
時間が経つ事に人が波の様に押し寄せホールを埋め尽くす、杏月は緊張した面持ちで静かに座って待っていると司会者がステージに現れる。
「えー、皆様、おはようございます。これより白帝学園、始業式を開催致します。先ずは行事として学園長からのお言葉があります」
司会者が言い切ると優雅な音楽が流れ、学園長と言われる人物がステージの真ん中にあるマイクに立つ、老体をゆらゆら揺らせ年相応の姿や雰囲気、素振りだが学園長が真っ直ぐホールを見渡し、マイクに発する。
「諸君、夏休みはしっかりと取れましたかな??この夏は様々な出会いがあったと思う、この白帝学園は様々な企業のトップの方々や貴族が頻繁に出入りする。粗相の無い様に白帝学園に恥じない様、互いに切磋琢磨し合いましょう。皆の活躍を一層期待しておる」
学園長が簡単に挨拶するとステージにプロの音楽団が入って来た。
「今日はこれからプロの音楽団が入らした、是非楽しんでくれたまえ!!」
学園長はほっほっほっと笑いながらステージ端に消えていった、周りの生徒はビジネスの話や携帯で誰かと連絡していたり紅茶を飲んで寛ぐ人、様々な人達がちらほら見え杏月はハチャメチャ過ぎる規格外な学園に毎分事に開いた口が塞がらない杏月であった。
杏月は悟り遠い目になっていると隣ではアリシアが「クッキー食べますの?」と差し出してくる中2時間プロの音楽団が奏でる、音色はとても美しく綺麗に響き渡りホールを包み込む、杏月の切磋琢磨する学園生活はこうして驚きで一杯の中、始まったのだった。
「杏月が可愛い!!」
「杏月の可愛い姿がもっとみたい!」
と思った方は是非評価をお願いします。
ブックマークが26件になってました!!累計pv8000突破していました!!
ありがとうございます。ありがとうございます。
こうして評価して頂けると三日坊主だった私は感激の余りですぅ……
是非評価、ブックマーク、色々改善点があればお願いします。