父親の罠
「なぁー杏月ねぇーちゃん、お腹減ったよ~」
「こらー!!ゆうじ、お姉ちゃんじゃなくて、お兄ちゃんでしょ??」
杏月は可愛い花柄のエプロン姿でまだ寝ている弟達を起こす、逸早く起きた三男にデコピンをして修正するように叱っている杏月の名は、姫美 杏月。
だがその叱る姿は怒っているというより、面倒見の良いお姉さんという感じに捉えられる程の優しい微笑みだった。
次々に長男である杏月が次男ともき、三男ゆうじ、四男みずき、次男と四男を起こす杏月。
「ほらほら、早く朝ご飯食べちゃいなさーい!!」
優しい微笑みでまだ眠たい眼を擦る弟達に笑顔で言うと、ともきが言う。
「なぁー姉ちゃん……多分さその姿とその素振り、普通に女の子だから……。それに最近さ、女子に告白されても何かピンと来ないんだよね、なんでだろうなぁー」
ともきは頭を掻きながら杏月に言う、杏月は首を傾げ可愛く「そんなことないよ??」と申し出る姿にともきは天然は怖いなと、しみじみ心の底から思うのだった。
杏月は自分のご飯を少なくし、弟達には空腹にならないように多く盛ってあげていた。
そのせいなのか腕や体は、女の子のように弱々しく、押し倒したら壊れてしまうのでないかとヒヤヒヤするほど小柄で華奢な姿。
睦まじい兄弟の団欒の中、玄関のドアがバン!!!!と勢いよく、そして荒々しく開いた。
直ぐに杏月は反射的に身体がピクリと震わせる。
「杏月、ちょっと隣の部屋に来なさい。お前達はそのまま、ご飯を食べていなさい」
朝帰りしてきた父親は杏月以外の子供にはニコニコする反面、杏月には真顔で隣の部屋にと首でジェスチャーする。
隣の部屋に入ると、父親は直ぐに背中に蹴りを入れられる杏月。
これは一種のストレス発散方法らしく母親が早くに亡くなってから7年、杏月は弟達にはなにもしないのが条件で自分は殴られ役を7年も買っていたのだ。
「ぐっ?!かはっ……い…いたいよぉ……ぐっ……ぐる……じ……い゛…………」
杏月の身体中に、激痛が走った。
身体を抱え込み震える声で抗議するのも虚しく、5分間サンドバッグにされ首を絞められる。
「杏月の黒髪は相変わらず、一級品だなぁ……。俺がお前をそれほど痛め付けない理由はな!!お前みたいな女みたいなのは資産を持ってるマニアに高値で売れるんだ!!だから髪を切らずにお前を生かしてんるだぜぇ??感謝して俺の足にキスしなぁ!!あはははは!!!!」
父親の話を聞いて少し自分の行く末に納得して悟っていると、父親の足が杏月の顔面を踏み付けた。
怯える杏月は素直に父親の足の甲に跪いてキスをする。
父親は満足したのか「また連絡する」と言い残し部屋を後にした。
「ね、姉ちゃん……大丈夫か!?」
父親が出ても肝心な杏月が中々部屋から出ないのに気付き、隣の部屋にともきが行くと悶え苦しんでいる杏月の姿が目に入る。
華奢な美少女が隣の部屋で苦しんでいる姿は、誰でも不快感や憎悪が自然と身体の奥底から湧き出てくる、ともきもまたその1人。
「俺さ、もう耐えられないよ……姉ちゃん!!」
「だ、だい…じょ……ぶ……。皆には……指一本触れさせないから」
ともきは杏月の姿に我慢ができず直ぐに駆け寄って安否の確認をする。
杏月は震える身体を庇いながら「大丈夫だよ、ありがとぉ」とか細く微笑み、ともきに何も起きてないように振る舞いながら、杏月はそう伝えるとぎゅっと抱き寄せる。
皆が学校に行ったのを確認して父親に呼び出された場所に向かった。
杏月は分かっていた、これからなにが起こるか分からないと、あの父親は何をしでかすかと思い警戒していたが案の定、希望の欠片すら存在しない絶望。
大きいビルの中に入りエレベーターで指定の所まで行く、杏月はエレベーターで指定の場所まで上がりロビーに出ると既に知らない男の人が立っていた。
「やぁ、君が噂の……ホントに可愛いね!!君みたいに可愛い子なら、高い金を出した甲斐があったよ。良かった良かった」
杏月は覚悟しその人物に向かい合うと、直ぐに品定めするように全身を見定める。
「お父さんからは聞いているね??君は今から俺の奴隷になったんだ!!君みたいに可愛い子ならたくさん可愛がってやるよ、死ぬまで……ね??さぁ、こっちに来なさい」
案の定であった、杏月はついに自分は売られたんだと絶望の真っ只中にいると強引に非常階段の方に身体が引っ張られる。
扉が閉じられると早速杏月は抱き寄せられる。
「あぁ……いい匂いだぁ」
髪を触られ、髪を嗅がられる。
杏月の身体は恐怖で足が竦み震える。
い…息が……首に当たって気持ち悪い。あっ、ちょっ下は……!?
「な、なんですか?!は、離して下さい!!」
「君に否定権はないよ。何故かって??それは、君は俺に売られたからだよ。だから君は、今日から俺の物……ふひひ」
杏月は余りの気持ち悪さに悪寒が身体に走る、杏月はもうどうにでもなれとやけくそじみた様子で意識が朦朧としている中ぼーっと目を細めた。
ただ焦点が合わない壁の方に向いた…………その時だった。
とある人物が自分を買いたいと言い出したのだ、もう杏月自体は半分意識が朦朧としていて身体も悲鳴を上げていた。
その人物の隣にいた執事の人から物凄い背筋から冷や汗が止まらない殺気みたいなのが放たれ、その殺気で杏月の意識を刈り取った。
「杏月が可愛い!!」
「杏月の可愛い姿がもっとみたい!」
と思った方は是非、好評価をお願いします。
評価、ブックマーク、感想などして頂けると、物凄くモチベーションも上がりますので良かったら応援よろしくお願い致します!!