お誘いとお茶会
杏月が女性に成って、数日が経った頃。
照之に学園に入らないかと、杏月に相談を持ち掛けた。
「そなたはあんまり学校など、行ってなかったんだろ??」
「はい……お父さんが許しませんでした。幼い頃は行ってましたけど、中学生になった時は直ぐに中退してしまって……それからは奴隷の様な日々でしたから」
苦笑しながら過去を話すと、照之はいつにも増してピリピリとしていた。
「それに学校を行かせない変わりに、家の事やお金持ちの人達と何度か会ったことがあったぐらいです」
「……そうか」
照之は沈黙し始め、パチンッ!!と指を弾く。
「爺よ、いるか?」
「はい、ないんでしょうか坊ちゃま」
スッと爺やが不意に現れたのに杏月はビックリしている中、照之は爺やに話しを続けた。
「爺よ、過去に杏月と接触した奴を洗いだせ。小さい企業は販売ルートを潰し、大企業や資産家の奴らは持ち株だけ一時的に暴落させとけ。これは報復だ」
ドスの効いた声で爺やに言い放つ照之、無慈悲もない罰を爺や伝えると杏月は慌てて弁解する。
「照之様……私の為に怒ってくれたんですよね……??でも安心して下さい!その時はお父さんに叩かれただけで、人身売買や身体には一切触れられてません。大きい企業の社長さんに1度足を触られただけです」
宥めるように理由を言うと、照之は居ても立っても居られなかった。
杏月がこれまで受けて来た不快な優遇を受けていたと思うと、やるせない気持ちになる照之。
「そんな、顔をするな。俺は大事な家族に対してそれが許せないだけだ。そなたの辛そうな顔を見ていると、やるせない気持ちになって苛立ってしまったのだ……。許せ」
「坊ちゃま、お気持ちは重々理解しかねますが、杏月様がこれだけ仰っておられるのですから寛大な処置をお願いしたい所存でございます」
懐から出したハンカチで額の汗を拭き取りそう言うと、冷静になる為に一呼吸置いて杏月を見つめる。
おどおどしながら縋り付く杏月の姿に、照之はらしくない反応をしてしまう。
その失態を直ぐに陳謝すると、爺やのフォローが入った。
「照之様??私はこうしてお傍に仕えることが出来て、本当に幸せなんです。ねぇ、爺やさん……そう思いませんか……?」
そう言うと爺やに柔和な笑みを浮かべながら同意を求めると、爺やは素直に頷いた。
「左様でございます。もしこれから何かあった時はその時、神乃家が総力を上げ討伐致す事でしょう!!」
「確かにそうだな。今回はそれ程酷くないとみなし、今日だけその足を触った会社の株価だけ少し落としておいてくれ」
「ハッ!!承知致しました」
それから少し経った日、杏月の足を触った変態オヤジの社長の会社の株価は一時マイナス30%まで一時暴落したという。
照之の気分で市場は大混乱し、杏月も思わず苦笑を零すのであった。
――――――――――――
「そうだったな、話は逸れてしまったが俺が通ってる学園に来ないか?杏月は俺と1歳しか変わらぬのだ、学園に頼めばそのぐらいの寛大な処置はしてくれるはず」
「えっ……!?い、良いんですか??絶対照之様が行ってる学校って、高そうじゃ……」
「まあそりゃそうだけど……。俺が出すんだし心配しないで行ってくれればよいのに……」
「でも……勉強も追いつかないですし、それにずーっと学校行ってなかったので、何か怖いんですよね……」
「でしたら爺やからご提案がございます。照之様と共に勉学を勤しむのは如何でしょうか?学園長には私からお伝え致しますので、それでしたら坊ちゃまのサポートでどうにかなるやもしれませんな」
「うむ、そうだな。杏月は幸い一個下なだけで、飛び級にはなるが一緒のクラスになれば俺も安心出来るというものだな!!」
「左様でございます。せめて学園を謳歌して楽しそうな御姿を、この一級品の一眼レフで撮影したいと思っております」
「そうであるな、杏月の成長日記を作成しなければならぬな!!だが爺よ、杏月の可愛さに近付く男が居たらどうするのだ……??」
「はい、もしその時は白製品にするのは如何でしょうか??坊ちゃまの公約相手に粗相する輩は現れないと思いますが……」
「うむ、やり過ぎも良くないしな。話す程度はしょうがない認めよう、だが……杏月を泣かすような輩は死を持って償わせる!」
「ほぉっほぉっほぉっ、流石でございます坊ちゃま。杏月様は我らの家宝でございます。しっかりと御守りしなければなりませぬな!!はっはっはっ!!!!」
「はっはっはっ!!そうだな、学園生活に戻る日は楽しみだ!」
うむうむと頭を捻り悍ましい会話をしている照之と爺やの話を聞いていると、杏月はデジャブに陥った。
デジャブ、以前にもこんな様に勝手に会話が進められるのを思い出した。
杏月は為す術もないまま学園に入学する事が、いつの間にか決定していた。
――――――――――――
その日の夜、照之は学園のお茶会に参加していた。
煌めく芸術的とも思える刺繍が入ったスーツを身に纏い、髪型をビシッと決めていた。
「なぁ杏月よ。折角だし、そなたも来るか??」
「えっ?!で、でも……学園のお茶会って、生徒だけじゃないんですか??」
「普通はな、だが社交的場にはたまにお偉いさんや企業の社長とか普通に来るし、杏月がいてもそれ程心配する程ではないと思うがどうだろう??爺やはどう思う?」
「はい、大丈夫だと思われます。杏月様の事は既に学園長様の方に通達致しましたので、もちろん了承も得ております」
「はっはっは、流石爺やだ。仕事が早くて良いな!!」
「ハッ!!この爺や杏月様の為なら何なりとこなして見せましょうぞ」
2人は楽しそうに笑いながら言っているが、それが出来る事は数少ない権力者である証拠を物語っていた。
杏月は開いた口が塞がらないまま、呆然とするしかなかった。
気が付けばメイドに手を引かれ、着替え部屋に連れて行かれた。
「あの……私が行っても照之様のお邪魔じゃ……」
「そんな事はございません、杏月様はもう学園の一生徒でございます。昼頃、爺やが届けに参りましたので、心配事はご無用でございます」
不安を他所目に、メイドは自信を持って発言した。
部屋に着くとメイドは早速、杏月の身支度に務める。
本日のお茶会のコーデは、ロリータワンピースドレスだ。
上部は前の方にボタンが付き、ドレス全体が細かな刺繍で仕上がっていた。
肩は出ているものの、肩から数センチ下は肌が透けて見える構造になっていた。
全体的な幼い杏月にピッタリとも取れるロリータワンピースドレスは、純白のドレスに仕上がっている。
胸元は顕になり、素肌を見せる。
後ろ姿はコルセットとの様になっており、背中の露出が少し目立つものの杏月の魅力を最大限に引き立てる最高の脇役。
メイドは杏月にナチュラルなメイクを施し、淡いピンクのリップを薄く塗る。
髪型は波の様にウェーブが掛かった、ゆるふわハーフアップ 。
後ろの留め具には花柄の髪型専用ブローチが、杏月の髪をより美しく仕上げる。
少し前衛的共取れる白のロリータワンピースドレスは、杏月の髪艶もより一層引き立て、人々を魅了させるには申し分ない。
幼い身体にピッタリだが出る所はしっかり強調され、胸元の谷間が少し覗かせていた。
メイドは満足気にしていると、恒例の姿鏡を目の前に設置された。
………… 可愛い。
杏月は徐にそう思うと、ヒラリと一回転して見せる。
自身の相変わらずの可愛いさに絶句していると、肩が出ている分、色ぽさは一層増すがそれで終わりではなかった。
支度が整うと、照之が待つ玄関ホールに向かう。
男性たちの楽しそうに話してる会話が近付いてくる。
「いや~それにしても今日は一段とビシッと決めてますね」
「まあな、これも学園として、皇帝としてすべき事をするからな」
「大変そうですね。お姉ちゃんの事ちゃんと見てあげて下さいね」
「ああ、もちろんさ。1人にする訳ないであろう!それに爺やもいる」
ともきと照之はそう話し合っていると、階段から杏月が降りてきた。
なんでも似合ってしまう杏月を見る度、2人は頬を染め俯いてしまう。
「お待たせ致しました照之様。あっ、ともきじゃない、お姉ちゃんも何か行くみたいなの。行ってくるね」
そう言うと、ともきの頭を撫でながら笑顔で言う。
ともきは照れながら杏月の言葉に「気を付けてね」と一言添えると、照之はその場に傅き高らかに自信に満ちた言葉で杏月に言う。
「杏月、そなたに贈り物がある。是非、受け取って欲しい」
杏月が無言で頷くな否や照之は指を素早く鳴らすと、爺やが宝石を載せる黒い高級トレーを持ち照之に近付いた。
その異様な芸術的と取れるネックレス。
王妃が使うであろう細かな細工が施されており、中心に掛けて宝石の粒が大きくなっているネックレスを取り杏月に取り付ける。
そのネックレスは煌めき輝きを放った。
レースの様な複雑に細工された物に付く雫型のダイヤモンドが端から小さく、中心に掛け大きくなっている。
どれも最高級の宝石であしらわれており、真ん中にはカラーピンクでも最上級の上質な宝石を使用し、ネックレスの端から中央に掛けて粒は大きくハイジュエリー仕様。
ひし形のカラーピンクが金の枠に嵌り、最後ひし形の下に雫型のカラーピンクが杏月の首元に収まり彩る。
杏月は静かにその場に鎮座し、瞼を瞑る。
メイドは髪を持ち上げ、照之のしようとする行為の邪魔にならない様に髪を退ける。
照之は王族が付けるような煌めく芸術的とも取れるレース型、革命的な模様に見惚れるほど美しい。
照之は杏月の首にネックレスを付け確認すると、それはそれはとても美しい姿を晒し出していた。
先程の首元から胸元にかけ少し寂しく感じていたが、照之の手で収まった一風変わったレース柄とも取れるネックレスは、杏月の美しさを最大限に引き出す。
色っぽい表情に釣られ、心成しか宝石たちは笑うように輝き煌めく。
「美しい……。宝石がここまで身に付ける者を美しくさせるものなのだろうか。そうは思わんか、爺よ?」
「ほっほっほっ、左様でございますな坊ちゃま。これほど宝石が自ら脇役になる健気さ、ひしひしと感じさせられますな……。杏月様の美しい笑顔を更に眩しくさせるとは、この宝石はやりますな」
「そうであるな。この宝石も杏月に付けられ本望だと思う」
「で、ございますね。わたくしもそうに思います」
「ふむ、そろそろ向かうとするか」
「はい、仰せのままに」
照之の合図で、お茶会に向かう。
さあ往こうと、照之は杏月に手を差し伸べる。
「はい、照之様。でわともき、行ってきますね」
ニッコリと微笑みを零しともきに告げると、照之の手を取り会場に向かった。
はぁ……姉ちゃんには適わねぇな。今日の所は杏月姉ちゃんを頼みますよ、皇帝陛下様ー。
そう思いながらともきは、自室に戻った。
車に乗り少し経つと、杏月は緊張した面持ちで隣に座っていた。
「杏月、緊張しているな?」
「は、はひぃ?!あ……すいません。少し緊張してしまって……」
「いや、慣れてないのだから当然さ」
照之は杏月の髪型が崩れない様にポンポンすると、杏月もえへへと照れながら照之の腕に抱き付く。
相変わらずの美しい姿に虜にされる照之は、ついその柔らかい唇を見るや軽くキスをしてしまうと杏月は微かに震えた。
「あ……その、余りに綺麗だったからつい……」
「は……はい。ちょっとビックリしただけです……」
照之はハハハッと誤魔化しながら事実を申すと、杏月もそっぽ向きながら口篭るもその頬は紅色に染まっていた。
2人は照れてしまいそっぽを向いてるも杏月は抱き付いた腕から離れることなく、ぴっとりとひっついていた。
そのまま静かな時間が過ぎ、会場に着くのを待つ2人であった。
――――――――――――
学園のお茶会と言われたものの杏月はどのぐらいの広さで行われるのか疑問に思っていると、学園に到着する。
凡人や底辺は到底足を一生踏み入れる事のない、完全なるお金持ち学校。
校舎は広々としており、各地に車が置けるように敷地内の噴水を取り囲む様に、ロータリー仕様になっており様々な高級車が止まっていた。
高級車が並び、時には外車やスーパーカーなど三者三葉と個性豊かな人達が集う。
一層目立つ照之が乗るリムジンが静かに停車する。
そのリムジンを目にするや滞在しているで在ろう学生や招待された者も目を見開き、固唾を呑んで見守っていた。
お抱えの運転手が降り、後方のドアを開けると頭を下る。
「照之様、御到着でございます」
「うむ、ご苦労」
照之は先に外に出ると、凛とした表情を浮かべていた。
その表情は皇帝陛下その者の顔付きになっていた。
照之はビシッと決め外に出ると、車内の方に手を差し向けた。
王子様が姫君をエスコートするその行為に、一同その場にいる者達は思わず疑問視する。
何故あの照之が車から降り会場に赴かないでドアの方に手を差し伸べている事に不思議が増すばかり。
だが、それは直ぐに一同を納得する回答が現われた。
照之が何故車内に手を差し伸べるのか、それは優雅で可憐、凛とした幼い美少女がリムジンから降りてきたのだ。
「杏月、さぁこちらに」
「……はい」
そう言うと杏月は静かに手を出し外に出ると、瞬く間にその場の視線を物にした。
杏月の凛とした真剣な顔をするが、似ても似つかないその姿、その容姿に一同は一瞬で引きずり込まれる。
杏月が照之に微笑みを返す度、周りの人間を見惚れさせる。
色っぽいのに真面目な凛とした表情が、それぞれの心を擽る。
「ここが俺の学園の白帝学園だ。皆どこも資産家の家系から天才や社長の女子や坊ちゃん達が集まる学院なのだ」
「照之様、大分スケール大きいですね……。それに、この視線……私には耐えれません」
「ふっ、そうだな。なら手を貸してはくれまいか?俺がそなたをリードしよう」
「はい、お願い致します。照之様」
多くの視線に慣れていない杏月は、心の中でたじろいでいた。
そんな表情を察し見兼ねた照之は、杏月の方に左手を差し出した。
杏月は差し出された手を取り睦まじく向かう姿に、杏月の微笑みを目撃した近くの者は杏月を見るや恋に堕ちてしまうのであった。
「それで照之様ー、ここは何を為さる所なんですか??」
「ああ、お茶会と言うのはな、着飾ってその場の者と交流を主に目的とした場所なのだ。言わばパーティーみたいなモノだ。それに美味しい物もたくさんあるんだぞ?」
「わぁ、本当ですか!?もし照之様がお忙しかったら、私は美味しいものでも食べて待っていますね!」
「ああ、構わんよ。爺も共に居てくれるから大丈夫さ、一先ずお偉いさんと社長達に簡単に挨拶してくるな?爺よ、杏月を任せた」
「畏まりました」
「はーい、いってらっしゃいませ~!」
小さく手を振って杏月は照之を送り出すと、爺やは直ぐに後ろに付き食事の方に杏月を誘導した。
皇帝陛下である照之は、学園からも一目置かれていた存在。
その存在が天使と思えてしまう程の絶世の美少女をリードし、一緒に現れればその場はもちろん殆どの者はざわめきを立てた。
そんな事態の中、杏月は「美味しい物~何かなぁ~」とルンルン気分で寄って行くのだった。
「杏月様、どれをお取りになられますか??」
「んーとね、このケーキ?みたいなやつと、このやつを食べてみたいです!」
杏月は、んーーーと唸りながら見た事のないケーキを見つけそれを指を指し何個か言うと、爺やは直ぐに取り合わせ杏月に渡すと「いただきます」と小さな呟きを一声の後、食す。
なんだろう…美味しいぃ!!これも、うみゃァあい。あー最高です……。
杏月はとろけんばかりに美味しそうに頬張ると、爺も満足気にその姿を終始見守る。
周囲の人達は友人や会社の偉い人と話し合っているものの、杏月の美しさとは裏腹にふわっとした美味しそうな顔にみなの視線を釘図けにしていた。
「はむ、もぐもぐ……。ん~~、これも美味しいです。なんでこんなに美味しいのでしょうか、爺やさん」
うっとりした顔で爺やに問うと、物凄い脂汗を垂らしハンカチで額の汗を拭きながら口を開く。
「うぐっ……あ、杏月様。こちらの料理の品々は四つ星シェフが全て担当しております。それに公道の場で余り端ない顔を成されながら食されると……わたくしが坊ちゃまに叱られてしまいます」
「でも、美味しかったんです……。不思議な形をしてるのに食べたら頬っぺたが落ちてしまうほどに美味しい!!照之様も当分は多忙でしょうし、私は知り合いも居ませんので……。私達は美味しい物を食べて待ってましょ??ねぇ、爺やさん……?」
杏月は爺やにだめ??と可愛く首をかしげると、爺やは即ノックアウトした。
女性になってから更に増した、色気を含むオーラ。
美味しそうに料理をちびちび食べていると、背後から聞き覚えのある人物が話し掛けて来た。
「やぁ、杏月ちゃん。久しぶりだね!!美味しそうに食べているね、爺やさんも久しぶり!!」
「おや、霧崎様ではございませんか。お元気そうで何よりでごさいます」
「あっ、どうも!霧崎……様でしたよね。お久しぶりでございます」
霧崎が杏月の姿を目に止まるな否や、直ぐに駆け寄り声を掛けチャラそうにしながらも言うと、爺やも杏月も頭を下げた。
「あれ、前会った時は胸そんなに有ったっけ……??前よりまた可愛くなったね!良かったらこのままどこか行かない?」
杏月の肩に触れ提案すると、霧崎だけに向けられた殺気を感じ取る。
爺やから放たれた冷たい殺気に、冗談の様に笑いながら言い始める。
「爺やさんそりゃあないぜ……。俺だって照之の奴にこれほど美しい姫君を、独り占めにはさせん」
「はっはっは、ですがわたくしもお仕えするのは、照之坊ちゃまでございます。そちらの杏月様は坊ちゃまが唯一認めた女性でございます。それにその不敬なお遊びに、杏月様を巻き込む事は許しませぬ」
「あ、あのぅ…………」
「大丈夫でございます、杏月様。こちらの霧崎様はほんのご冗談で、杏月様の緊張をほぐそうとなさっていたのです」
「そ、そうだぞ杏月ちゃん。緊張してるだろうと思ってな……ハハハッ」
杏月は不安な眼差しで言うと、爺やと霧崎は慌てて弁解するように言うと上手く誤魔化す2人。
それにしても、可憐だ……。色白でサラサラの黒髪、少しお化粧された顔がまた一層と煌めく美しさ。食べる姿もまたさっきの雰囲気とは異なる可愛らしい眼差しが、たまらない……。
霧崎は思わずはにかみながらそう思い、杏月と話していたくても上位の人物を周囲の人間がそれを許さない。
御曹司という称号を持っている霧崎と仲良くなろうと、周りは何時もの様に取り合いをしていた。
それを察したかのように爺やは、杏月をその場から退避させ落ち着いた隅に移動させた。
「爺やさん、この学園ってどんな方がいらっしゃるんですか??」
「はい、杏月様。この学園には資産家、社長令嬢、社長坊ちゃま、御曹司、貴族、皇族、天才とゆえる方々が多く在学しております。もちろん資産がお持ちではない方も、才でのし上がる方も多くいらっしゃいます」
「なるほど……じゃあ色んなお金持ちの人もいるけど、天才や何かの才能があれば入れないって訳ではないんですね?」
「左様でございます。坊ちゃまは皇帝陛下を務めながらこちらの学園を務めている為、どの方々も仲良くなり皇帝陛下様のコネクションを持っていたい方も多いと見受けられます」
「ほぇー、何か凄いですね」
杏月は余りの凄さに感服していると、金髪の豪華なドレスを身に纏う美しい姫君が、杏月に話しかけてきた。
「あら、あなたは……。照之さんと仲良くしているみたいですけれ、どうゆう間柄なのですの??」
「え、えっと……」
本物のお嬢様に杏月は言葉を詰まらせていると、爺やが仲裁に入る。
「これはこれは、貴族令嬢のアリシア様ではありませぬか!!お久しゅうございます。杏月様、こちらはアリシア様でございます。照之様の御友人で1番近い許嫁でございます」
ツンとするもその可愛らしい姿に、杏月は思わずはにかみにながら言う。
「とてもお美しいです、照之様のお傍に仕える杏月と申します。以後お見知りおきを……。髪がとても綺麗ですね!!許嫁とも納得致します」
杏月は思った事をアリシアに万遍の笑み浮かべそう言うと、アリシアは耳を真っ赤にして頬紅を染めていた。
「ふん、あなた中々言いますわね。わたくしを貴族と知ってその発言、素直に褒めて差し上げますわ……!」
アリシアは挑発するも、杏月の愛らしさに自然と手が伸びて行き、杏月の頭を撫でた。
杏月の笑みに当てられたアリシアも、満更でもない雰囲気を醸し出していた。
アリシアは杏月を見つめていると、ぽんと手を叩き、唐突に口を開いた。
「爺……わたくし、この方が欲しいですわ。杏月をわたくしに譲って頂けませんこと?」
「えっ……と、アリシア様……?そ、それは出来かねます。坊ちゃまも大層、杏月様をお気に召しております。それを仲が良いご友人のアリシア様だとしても、こちらの杏月様を渡す事はわたくしにはできかねます」
「ふーん……。爺がそこまで言うなんて、もっと気に入ったわー。照之さんに聞いてみようかしら」
そんな会話をしていると、照之が一段落して抜けて来たらしく、こちらに向かって来た。
「ようアリシア、早速絡んでおるな」
照之は苦笑いしながら言うと、アリシアは杏月に抱き着き頬を撫でながら言った。
「わたくし、こちらの杏月を気に入りましたの。別に照之さんと結婚とか別にしたくないので、こちらの杏月を下さい」
アリシアの爆弾発言に、照之と爺は絶句した。
絶世の美少女が絶世の美少女を愛撫でる姿に、良からぬ道が開かれそうになるも慌てて照之が言う。
「おい、アリシアよ。一応俺皇帝陛下してるんだけど、なんでそう言うこと言うのかな……。何故、俺より杏月の方に求愛するのだぁ!!!!確かに杏月は可愛い……。だがちぃと扱い酷くね??」
「あら、そんな事ですの?わたくし、この子と結婚致します。正直照之さんと結婚ってないと思ってたんですの。でもこの子と巡り合わせて下さった事だけは、感謝致します」
悪戯をする様に笑みを零し、スカートの裾を持ち膝をおる。
アリシアの行動に照之はコメカミを引き攣らせた。
杏月はおどおどしていると、アリシアに抱き寄せられ頬を撫でられる。
頬を赤くして発言しようとすると、アリシアは唇に手を当てウィンクする。
その美しい美少女に杏月は照れてしまい、仲裁には爺やが割って入った。
「まあまあ、お2人とも……。杏月様が固まってしまってます……そろそろお戯れを……」
「あら、申し訳ございませんですわね杏月」
アリシアは杏月に不意打ちしてほっぺにキスをすると、照之はやられた!?とばかりに2人を引き離した。
「済まないがコヤツは俺の物でな、誰にも渡す気などないのだ」
「あら、わたくし貴方よりはこの子の魅力を感じ取れるわよ。照之さんはそんな事も分からないんですか??」
「ぐっ……だが俺を1番に考えてくれてる……!」
「ぐっ……しょうがないですわね。今度はプライベートで杏月に会いに行きますわ!!」
アリシアはそう言うと、挨拶してその場を去った。
杏月はただただ見守る事しかできなかった。
「凄くお美しいお方でしたね……。私なんかちぃぽけ過ぎて、泣けてきそうです……」
頬を染めているも、瞳は少しうるうると潤んでいた。
照之は慌てて話し始める。
「杏月、多分アリシアは俺の事などどうでもいいと思っているはず。それより杏月、そなたはおなごにすら求愛されるとは、ますます気が気ではないぞ?」
ほっぺをつんつんしながら言うと、杏月は「うにゃっ」と可愛い声を出す。
そんな可愛い姿を晒してしまったのもあり、その場で聞いていた野次馬が杏月の新たな一面に、みな胸をときめかせていた。
お茶会により皇帝陛下と共にする謎の美少女は照之と親しくし、鋼の薔薇と恐れられたアリシアにお気に召されたと、その日を境に杏月の話題に持ち切りになっていた。
美しい容姿をした美少女は、それはもう目を見張るほどの麗しさ。
美しさを引き立てる、芸術的模様のレース型のネックレスを付けていた姿を目撃者は、もやもやとドキドキが募り募る一方的、みな生殺し状態であった。
そんな事は露知らず、杏月は無事お茶会から帰宅するや自室に戻ると、直ぐに眠りに落ちた。
杏月は知らない、可愛い寝顔に屋敷の使用人や弟達たちがその寝顔に癒されている事に。
「杏月が可愛い!!」
「杏月の可愛い姿がもっとみたい!」
と思った方は是非、好評価をお願いします。
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