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皇帝の従える妻は元男の子?!  作者: アリス・world
第一章
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性転換

デートを終えた次の日、直ぐに病院の病棟のような一回り大きくした1人部屋に杏月は横たわっていた。


専属の医療チームが、万全な体制を設けられていた。


医者の人と目が合うと、うっとりした表情で杏月を見て微笑む。


杏月は照れるものの、寒気とは違う何かを感じ、身体を思わず震わせる。


少しすると、その場には重要人物だけが鎮座する、ワクチンを調査した最高機関の女性と、照之のお抱え医師とメイド数名、ともきが代表として離れた辺りで行く末を見守っていた。



これから女の子になるんだね……。神様、お母さん……見守ってて下さい。



杏月は祈るように目を瞑り、麻酔マスクを掛けられると直ぐに、杏月の意識は暗闇に沈む。





「それでは、開始致します」


杏月が眠るのを確認した専属の医師は、通常の一回り大きいサイズの注射器を持ちワクチンが入ってる注射器を、コンコンと空気を抜き杏月の左腕に打ち込む。


事は静かに行われた。


何が起きるか分からない事からあらゆる医療の準備をし、最高のセキュリティで屋敷を取り囲むように保護する。


世界に1つしか出回っていないワクチンに、研究機関の最高幹部の女性も固唾を呑んで見守る。


専属の医師はワクチンを打ち切ると、針をゆっくり抜き医療絆創膏を貼る。





「照之様、これでワクチンの投与は完了でございます。後は身体に変化が起きるのを待つだけなので一段落でございます。急変する場合もある為、私達専属の医師はここで24時間体制で、杏月様をバックアップ致します」


「でわ、杏月様のメイドであるわたくしにも定期的に部屋に出入り致しますので、何か御用がありましたら仰って下さいませ」


「構わん。俺もこれから皇帝陛下として赴く所があるのでな、1週間程留守にするが杏月の事……任せたぞ」


照之は真剣な眼差しで従者達に言うと、静かに部屋を後にした。


ともきも眠っている杏月の手をそっと握り「頑張って」と言い残し、部屋を出る。


















――――――――――――




それからというもの、杏月は微睡(まどろ)みの中にいた。


深く暗いその場所は、とても寒くそして不安が募るそんな暗色の場。


進むも光は一向に見当たらなくその道は暗転とし続ける、その場に横たわり暗闇の天をただ仰いだ。



僕はこれからどうすれば……暗い、怖い…………。でも、皆が待ってる。僕は、可愛い僕を受け入れる。だから皆を悲しませないで下さい…………どうか……どうか……神様がいらっしゃるなら、私をお救いください……。



杏月は横たわり胸に手を当て祈りのポーズを取り、じゅんわりと意識が薄れ無に消えた。

















――――――――――――



それから6日間、杏月は昏睡状態に陥っていた。


酸素マスクを付け、点滴で栄養を補給してピクリとも動かない杏月の姿に、ともきは胸が痛んだ。


一向に起きない杏月に不安は募る一方、食事も以前より喉を通らない。


ゆうじやみずきも同様に、杏月の生還をただ祈る事しか出来なかった。


医師は交互に交代し、杏月の容態や心拍数などを見て、身体に変化はないか常に警戒していた。


医師は付きっ切りの事もあり食事を摂らないでいると、杏月の専属メイドが軽食を度々持ってきたり、杏月の身体を拭ける範囲で手拭(てぬぐ)いで拭いていた。


最高機関の人間ですら事例も何も未知の領域に、ただ経過途中の観察しか出来なかった。


こんな可愛い子を前にすると、多忙の日々を送る人間も最後まで見届けたいという好奇心と、杏月の美しさに見惚れるのも無理ない。


6日目の夜、杏月は無意識の中、もがき苦しみ始めた。


直ぐに医師は杏月に近付き様子を伺い肌に触れると、物凄い高熱で意識のない杏月の身体はただもがき苦しみ、脊髄反射の様に手足をバタつかせていた。


意識が無い杏月は直ぐに手足を拘束され、冷たい物で額や手足の部位を冷却するも本当に人間が持つ温度なのか??と疑問に思う程だった。


焼けるような熱さに意識が無い杏月の身体はその熱さに耐えられなくなり、反射的に藻搔(もが)き暴れた。





「杏月様の容態はいかがなのでしょうか??」


「ええ、こんな熱さ見たことないです。60度なんて、死んでしまう程の高熱です……。早急に冷やし続けなければ……最悪の場合…………」


メイドも医師も絶望の真っ只中にいた、今目の前にいるお慕えする杏月が亡くなると(よぎ)るも、メイドは首を横に振り邪念を振り払うと言う。





「ですが、最終的にどんな結果になったとしても、今すべき事があるはずです。必ず杏月様をお救いするのです!!」


メイドの不安にも高らかと言い放つと、医師も頷き最善を尽くす事に専念した。


メイドは氷枕を作り持って行き、医師の為に軽食も運ぶ。


医師は声をかけながら脈や心拍数に臓器の動きを確かめる。





「あがっ?!ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛…………。ぐ……る…じ……ぃ…………。ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛」


杏月の絶叫する甲高い声が、部屋中に響き渡る。


その悶え苦しむ姿に医師、メイド、最高機関の幹部ですら、目を背けてしまいたくなるほどの痛々しさに、見てられない医師は思わず杏月の手を握り、話し掛けた。





「アツ!?…………杏月様!!杏月様!!しっかりして下さい!!意識をしっかり持って下さい、杏月様!!!!」


医師は涙ながらも火傷してしまいそうな杏月の手を強く握り、語りかけた。


ただ返答の無いものだとしても、辞めることもなく一心不乱に呼び止める。


その切羽詰まった状況の中、ともきも杏月の事が気になり部屋の前をウロチョロしていると、杏月の苦しむ様な雄叫びに居ても立っても居られず部屋に入った。





「杏月姉ちゃん!!!!」


扉は勢いよく開き、直ぐに杏月の手を握り声を掛けた。





「姉ちゃん……!!ゆうじもみずきも心配してるんだぞ!!なあ、杏月姉ちゃん……。頼む……頼むから目を覚ましてくれよ、なぁぁぁぁぁぁぁ!!」


いつもとは違う爽やかなフェイスを崩し、亡骸の様な姿の杏月に抱き付く。



あっつ……!?な、なんだこの熱さ……!!姉ちゃん……頼む目を覚ましてくれ!!!!



医師も家族が部屋に入ってきたのを、止める訳にもいかずただ見守った。


ともきは目を瞑ってる杏月の頬を優しく撫で、愛おしそうに手を添えた後語りかける。





「姉ちゃん……俺さ、姉ちゃんが居なかったらさ、もう生きる意味がないんだよ……。姉ちゃんが居てくれるから、俺達や此処の人達も頑張れるんだよ?だから姉ちゃんも頑張ってくれ!!目を覚ましてくれよ…………」


ともきは必死に語りかけると、入ってきたメイドに宥めながらともきは自室に戻された。





「ともき様……そのお気持ち、お分かりになられます。ですが杏月様も頑張ってらっしゃいます。今は自室でゆっくりお休み下さいませ」


「ひっぐ……うぅ、姉ちゃん……。ねぇ……ちゃん……うぐっ……」


ともきは涙を流しながら杏月の手を泣く泣く離すと、メイドはともきを落ち着かせながら部屋に連れて行く。


















――――――――――――




その夜、引っ切り無しに動いていた者は、疲労も有り暫しの仮眠を取っていた。


杏月は落ち着きを取り戻し、暴れ藻搔くのが止まったからだ。


メイドも暫し休憩していると、照之が予定より一足先に帰宅した。





「お前達、杏月が凄かったと聞いた。みな苦労かけたな……すまない」


「いえ、これぐらい当たり前でございます。杏月様はもうここの家族の一員でございます!!みな一丸となり、杏月様をお救いするそのお心は変わりません」


「そうだな。そなたらも疲れただろう、休憩がてらに少し席を空けてくれぬか??」


「…………はい、承知致しました」


メイドはひと沈黙置くと、頭を下げ部屋を後にする。


医師も仮眠で別室にいる為、メイドだけでいたが照之の言葉に皆素直に頷き部屋を出る。


照之は杏月の傍に近付くと、杏月を見下ろした。





「…………杏月、俺の為に命を張ってくれてありがとう」


照之は杏月の頬に手を当て、優しい表情で杏月に語る。





「そなたは寝ていても美しいのだな……。それに辛かったろうに……ありがとな、杏月。そなたは俺の嫁だ……ッ!!異論は認めん。さあ、早くこちらに来るのだ」


照之は杏月顔にゆっくり近付き、軽い接吻をした。


余りの愛おしさに、照之はついその柔らかな唇を触れたくなる衝動は大きくなる。





「杏月…………愛してる」


杏月の耳元で囁くと、杏月の頭を優しく撫で部屋を後にした。





「お前達も少し休むが良い。俺が杏月を見ているから全員少し休め、とそう伝えてくれ」


メイド達にも休むように促すと、照之は杏月が寝ている部屋に戻った。


椅子を杏月の近くに持ってくると、腰を掛け杏月の幼く小さな手をギュッと握る。



杏月、そなたはいつもそうだ。誰かの為なら自分の事を平気で犠牲にする……。そなたの悪い所だ、そんな可愛い寝顔されると愛おしさが溢れて敵わん。



照之は杏月の顔を眺め、思いに(ふけ)っていた。





「なぁ、杏月よ。俺はな、そなたが居なくなると思っただけで何も手付かずなのだ。何故だろうな、そなたを見ているだけで、何でも頑張れそうな気がするのだ」


「…………」


「皆もそうだぞ?俺は勿論、この屋敷にいる全ての人間が悲しむ……。そしてそなたの弟達も泣いておるようだ」


「…………」


「俺はそなたの事が愛おしくて愛おしくて堪らないのだ……。そなたの死など我は絶対に認めんぞ??」


「…………」


「そうだ、早くおなごになれ!!そうすれば必ず嫁にする。他の縁談話も全て断る!!……だからそなたの美しい瞳で、またこの俺に見てはくれぬか??俺も早くそなたの綺麗な瞳が見たくてしょうがないのだ」


返事のない抜け殻に照之はそれでも話しをし続ける、杏月の尊さに照之も気付けば目尻が熱くなる。


意識がない杏月に、照之はボロボロと言葉も涙は共に溢れ出る。





「杏月、頑張ってくれ。みながお前を待ってる……。そしてこの俺がそなたを1番待ち望んでいるのだ!!またあの美しい笑顔を、俺に向けてくれ……。そなたの怒る姿も泣く姿も喜びに満ち溢れたその愛らしく愛おしい杏月の全てを見せてくれ…………!!また……その可愛らしい声を、我に聞かせておくれ……うぐっ……」


只々重い空気の中、照之は小さく嗚呼する。


無意識に杏月の手を握り、続けていた。


照之も泣き疲れたのか、何時の間にか杏月の手を握ったまま眠りに就いていた。


深夜が訪れた時、杏月の手がピクッと反応を示した。


今まで反応も無かった手がピクリと動いた途端、部屋中に目を開けられない程の光線を放つ杏月の身体は―――眩い輝きに満ちる。


暗い部屋にピカっと一瞬光り輝くと、直ぐに光は落ち着いた。


照之はその眩い光に、眠っていた意識は覚醒した。


光が収まり徐々に目を開くと、照之は杏月を見るや絶句する。





「………っ?!あ、杏月……??」


思わずその姿に驚愕し動揺する。


照之が目にしたのは今までと変わらない杏月の姿、だが一部が膨らみがあったのだ。


幼い姿に女性の容姿をする男が女性に戻ったのかと思うと、違和感のなさに絶句した。


驚きを隠せない照之を横目に、杏月は静かに固く閉ざされた瞼を開けるのでだった。

「杏月が可愛い!!」

「杏月の可愛い姿がもっとみたい!」


と思った方は是非、好評価をお願いします。


評価、ブックマーク、感想などして頂けると、物凄くモチベーションも上がりますので良かったら応援よろしくお願い致します!!

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