77 久しぶりにジャズについて語る7(フリージャズ入門と好きなジャズについて)
久しぶりにジャズを語る、というこのシリーズ。行く当てもない旅路と同じで、どこへと行き着くものかまるで分からない。変なところにたどり着いたらどうしよう。昨日はジャズボーカルばかり聴いていましたが、今日は朝からフリージャズを聴きまくっています。
フリージャズは、即興芸術の極地ですが、案外、ムードを伴っているものが多いので、たとえばコルトレーンにハマって「アセンション」あたりの騒音っぷりで音を上げた人でも(つまり僕のような人間も……)、色々聴いてゆくと次第に好きになってくるものだな、と思っています。
今ハマっているのはアルバート・アイラーです。どんなに吹きまくっても、吹き乱れてもそこには哀愁がある。
僕はとかく「哀愁」というものが好きらしい。ケニー・バレルのギターが好きな一方、セロニアス・モンクのピアノにまで、僕は「哀愁」を感じてしまう。
スタンリー・タレンタインのサックスにも、やはり「哀愁」を感じる。それが良い。
フリージャズ入門として、セシル・テイラー、アルバート・アイラー、アーチー・シェップ、ドン・チェリーあたりを聴いています。
ちなみにエリック・ドルフィーやローランド・カークは、以前から好きでよく聴いていますが、彼らがフリージャズのアーティストに当たるのか、よく分からないので数に入れていません。
ガトー・バルビエリもフリージャズアーティストなのか……とか、あらためて調べてゆくと、意外に聴いたことがある人がそれに当たるようですね。
いやいや、そんなことを語っていても仕方ない。珈琲を語る時に、珈琲豆の名前を羅列するだけで味わいを語らない人と同じで、これでは夏休みの感想文よりもひどい。
ドン・チェリーとガトー・バルビエリの熱心なフリージャズを聴いた後で、今度は同じドン・チェリーの「ヒア&ナウ」という、かなりプログレッシブロック風のジャズを聴いてみたのですが、これが許されるならフリージャズも楽しめるな、と思いながら今、自販機の紙コップの珈琲を飲んでいます。
しかしこれがフリージャズなのかどうかはよく分からない。
フリージャズってどこからどこまでを言うのかしらん。
クロスオーバーなことも、フリージャズなら可能ということだろうか……でも、マイルスが「ビッチェズ・ブリュー」で、かなりクロスオーバーなことをしている。マイルスはフリージャズじゃないだろう。オーネット・コールマンについて否定的だったと言うし……。何にしてもクロスオーバーもあり、もうジャズはなんでもありなのではないだろうか、それでいいのかもね、まあ、カッコよければそれでよし!という気持ちになって、ノリノリで聴いています。
これはつまり、どう聴いてもプログレッシブロック……。
話は変わりますが、アルバート・アイラーの名盤「ラブクライ」の「ラブクライⅡ」という曲が、非常に味わい深い。フリージャズ入門にふさわしいのじゃないだろうか。
こんな風にまとまりのない話になってしまっているので、もしかしたらこのジャズエッセイのシリーズ、今回で終わりになるかもしれない。この回のせいで……。しかしこれくらいの気軽なジャズエッセイがあってもいいだろう。
話題は変わるけれど、好きなジャズミュージシャンを選び出し、トランプの要領で、自分の手札を作るとしたらどうなるか。
これが僕の手札である。多すぎるけど……。
【リーダー枠】
神……セロニアス・モンク
父……チャーリー・パーカー
【楽器別枠】
ピアノ……ボビー・ティモンズ、ソニー・クラーク、ミシェル・ペトルチアーニ、シダー・ウォルトン
ギター……ケニー・バレル、ジム・ホール
アルトサックス……ソニー・スティット、ソニー・クリス
ボーカル……エラ・フィッツジェラルド、サラ・ヴォーン、ニーナ・シモン、アニタ・オデイ
テナーサックス……ティナ・ブルックス 、ジュニアクック、JRモンテローズ、ソニー・ロリンズ、ジョニー・グリフィン、デクスター・ゴードン、ジョー・ヘンダーソン
トランペット……リー・モーガン、ルイ・スミス、ディジー・ガレスピー
【変化球枠】
クラシック風なジャズ……MJQ
白人ジャズ……アート・ペッパー、アル&ズート
日本人ジャズ……ガトスミーティング(林栄一)、山下洋輔
【勝負どころのジャズ枠】
フリージャズ……セシル・テイラー、アルバート・アイラー、アーチー・シェップ、ドン・チェリー
現代ボーカル……ノラ・ジョーンズ、ダイアナ・パントン、ジェーン・モンハイト、シゼル・ストーム
魂のジャズ……ローランド・カーク、チャールズ・ミンガス、エリック・ドルフィー、バド・パウエル
【アルバム枠】
バイブルとなっているジャズ1……セロニアスモンクのソロピアノ盤4枚
バイブルとなっているジャズ2……ソニー・ロリンズ「ヴィレッジヴァンガードの夜(完全版)」
めっちゃ好きなジャズ1……ケニー・ドーハム「カフェボヘミアのケニー・ドーハム」
めっちゃ好きなジャズ2……セシル・テイラー「セシル・テイラーの世界」
めっちゃ好きなジャズ3……セロニアス・モンク「マリガン・ミーツ・モンク」
めっちゃ好きなジャズ4……エラ・フィッツジェラルド&ルイ・アームストロング「エラ・アンド・ルイ・アゲイン」
めっちゃ好きなジャズ5……MJQ「ピラミッド」
めっちゃ好きなジャズ6……ビル・エヴァンス&ジム・ホール「アンダーカレント」
めっちゃ好きなジャズ7……シダー・ウォルトン「イースタンリベリオン」シリーズ
めっちゃ好きなジャズ8……ミシェル・ペトルチアーニ「ピアニズム」
めっちゃ好きなジャズ9……ローランド・カーク「溢れ出る涙」
めっちゃ好きなジャズ10……エリック・ドルフィー「イン・ヨーロッパVol.1」
めっちゃ好きなジャズ11……ソニー・クラーク「ソニー・クラーク・トリオ」(ブルーノート盤)
めっちゃ好きなジャズ12……ケニー・バレル「ミッドナイト・ブルー」
めっちゃ好きなジャズ13……セロニアス・モンク「モンクス・ミュージック」
めっちゃ好きなジャズ14……MJQ「ファンテッサ」
めっちゃ好きなジャズ15……ノラ・ジョーンズ「ノラ・ジョーンズ」
めっちゃ好きなジャズ16……エラ・フィッツジェラルド「トゥー・ベルリン」(「イン・ベルリン」ではない)
めっちゃ好きなジャズ17……アニタ・オデイ「アット・ミスター・ケリーズ」
めっちゃ好きなジャズ18……ジョン・コルトレーン「ダカール」
めっちゃ好きなジャズ19……チャールズ・ミンガス「道化師」
めっちゃ好きなジャズ20……アート・ブレイキー「バードランドの夜」
本気の勝負ジャズ1……ローランド・カーク「プリペア・ザイセルフ・トゥ・ディール・ウィズ・ア・ミラクル」
本気の勝負ジャズ2……サラ・ヴォーン「サラ・ヴォーン・アット・ティヴォリ・ガーデン」
本気の勝負ジャズ3……バド・パウエル「ジャズ・ジャイアント」
本気の勝負ジャズ4……セロニアス・モンク・カルテット・ウィズ・ジョン・コルトレーン「アット・カーネギー・ホール」
本気の勝負ジャズ5……チャールズ・ミンガス「ミンガス・プレゼンツ・ミンガス」
切り札のジャズ……ジョン・コルトレーン「セルフレスネス・フィーチャリング・マイ・フェイバリットシングス」
この手札で、今年の残りの日々は戦う……。一体誰と……?




