76 好きなジャズ名盤紹介12(エラ・フィッツジェラルドとセシル・テイラー)
今日はクリスマスイヴで、色々と楽しい1日でした。それはそうとして、今から2年前、ジャズ入門者向けの「ジャズ名盤紹介」というシリーズを本エッセイで連載していたのをご記憶の方はいらっしゃいますでしょうか(ご記憶にないなら一度、目次にお戻りください)。
あれは全十二回を想定していました。それが十一回で尻切れトンボのまま終わり、二年後の今になって「久しぶりにジャズを語る」という別のエッセイを連載し始めたことは、僕にとって非常に気にかかることです。
残されたテーマはふたつほど考えられます。ひとつは「ジャズボーカル」であり、もうひとつは「フリージャズ」です。
最後なのでふたつとも同時にやっちゃいます。
ジャズボーカルについて……。
初心者の皆さまはジャズボーカルを楽しみたいという気持ちをお持ちでしょうか。僕はジャズを聴き始めた頃、まったく興味がありませんでした。それはジャズ=インストというイメージが先行していたし、ボーカルでは大した即興ができないだろうと勝手に思っていたからでした。
そんな僕の勘違いを是正したのは、ジャズのスキャット(「ダバダバドュビドゥバ!」って歌うやつです。「ウェッピウェッピウェッピ!」とか「ドゥイディディ〜」とか「ボベディダ〜」とか、もう大変なバリエーションです。これは歌声を、楽器に見立てています。)を聴いた時です。
初体験は、サラ・ヴォーンのスキャットでした。
「これはすごい。ジャズのリズム感、フィーリング、即興性、ユーモア、全部入ってるぞ!」
と路上で叫んだ僕は、それからジャズボーカルの虜になりました。
今回、紹介するのは、存分にスキャットを楽しめるエラ・フィッツジェラルドとルイ・アームストロングの名盤「エラ・アンド・ルイ」の続編、「エラ・アンド・ルイ・アゲイン」というアルバムから一曲「サヴォイでストンプ」。
これはもう楽しすぎて、素晴らしいですね。エラ・フィッツジェラルドはスキャットの第一人者です。そしてルイ・アームストロングはスキャットを生み出した張本人。ふたりが共演している上にルイ・アームストロングのディキシーランドジャズ感漂うトランペットの音色も楽しめます。
続いて、フリージャズについて。
実は僕はずっとフリージャズが苦手でした。オーネット・コールマンの「ジャズ来るべきもの」をはじめて聴いた時、全然良いと思わなかった。それが変わったのは比較的、最近で下北沢のジャズ喫茶マサコに通い始めてからでした。
「これはフリージャズ聴かないとついていけないぞ……」
そこで、フリージャズの中でも比較的聴く機会があった。ピアニスト、セシル・テイラーのジャズを聴き始めました。
実はピアノならフリーに入門できるという勝算があったのです。僕は、フリージャズピアニスト山下洋輔氏のライブに何回か行っていて感動した経験があったからです。
さらにコロナ前、林栄一氏の率いるガトスミーティングというフリージャズバンドのライブを、新宿のジャズクラブピットインで満喫し、とりわけバリトンサックスの吉田隆一氏の演奏に感激していた僕は、自分にフリージャズ好きの素養があることを確信していました。
セシル・テイラー、アーチー・シェップ、アルバート・アイラーといったあたりから聴き出し、今まさにフリージャズへの造詣を深めている真っ最中であります。
なので紹介できる名盤も曲も、あまりないのですが、とにかく僕のフリージャズ入門に役立って、今でも愛聴している「セシル・テイラーの世界」から三曲目「ポート・オブ・コール」をおすすめします。
これで初心者へのジャズ名盤紹介はすべて終わりです。今後は、また自由なジャズ語りか、別のシリーズを企画致します。あるいはまたジャズ名盤紹介というシリーズを立ち上がるかもしれません。それでは、ご機嫌よう。




