61 好きなジャズ名盤紹介8(キャノンボール・アダレイ)
さすがにジャズピアノだけでここまで連続紹介しているのはまずいだろ、ということでトランペットとアルトサックスの名盤を紹介したいと思います。
ずばり、キャノンボール・アダレイの「サムシン・エルス」です。
これを皆様に紹介するのは、若干抵抗があります。なぜなら僕は最初にジャズ喫茶でキャノンボールをリクエストして、あとでマスターに「本来ならばここはお前のようなレベルの人間が来るところじゃないんだよ」と怒られたことがありまして、その頃からキャノンボールが好きという発言は人前ではつつしむようになったのですが、最近、盛り返しまして、やっぱりキャノンボールいいな、と思いました、そういう苦い思い出もジャズの味なのかな、とかなんとか。
キャノンボールが駄目と言われた理由はいまだに謎ですが、一つには彼がファンキージャズのジャズマンで、大衆作家的であることが理由だと思うんです。ただ、ジャズ喫茶道とか関係なく、よいものはやっぱりよいし、聞く価値は十分にあるので、色々聴いていってみたいと思うんですよね。
しかし、今回、皆さんにまず聴いていただきたいのはキャノンボールのアルトサックスの音色では決してありません。マイルス・デイヴィスの吹いているトランペットの音色であります。
ジャズピアノに疲れている皆様は「ホーン楽器」の野性的なエネルギーを心から欲しているはず。なので今回は二つのホーンを味わえるこちらの名盤にしました。
そもそもジャズはピアノよりもホーン楽器が常に先行していたという歴史があるそうです。そもそもの起源を考えると昔の音楽隊が重たいピアノをかかえて町を歩くわけないとかいう話もあるそうな。さらに、アメリカではジャズピアノが日本ほど人気でないらしい。でも、ジャズピアノの御三家といえば、ハービー・ハンコック、チック・コリア、キース・ジャレットというように、今では向こうでも人気なのかもしれませんが。ジャズの奏法の発展も、ホーンの奏法が先行していて、それをピアノで試してみたというのが基本の流れのようですね。
とにかく「ホーンを聴いてこそジャズ」というのは一つの真実かもしれませんね。
今でもジャズ嫌いの知人には「あんなのラッパ吹いているだけだろ」と言われるぐらい、世間ではジャズといえばホーン楽器、つまりトランペットやサックスのイメージと一致しているのです。
ホーン、ホーン、ホーン……。
なので今回は「はじめてでもホーン楽器に入り込めるジャズ」ということで紹介します。
キャノンボール・アダレイのアルバム「サムシン・エルス」。
本当にこれでいいのか若干、自信がない。おそらく普通のジャズファンが「初めて聴くホーン楽器入りのジャズ」ということで紹介しようとしたら、きっとアート・ペッパーあたりを紹介することだろう。
でも、僕はマイルス・デイヴィスの吹く「枯葉」をまず聴いてほしかった……。
ちなみによく考えてみるとコールマン・ホーキンスの回でばりばりのホーン入りのジャズを紹介していた気もするのですが……。
まあ、いいや。これがこのエッセイのクオリティー。
マイルス・デイヴィスとは誰なのか、あまり詳しく説明してしまうとやたら長くなってしまうので今日は一言だけ。
彼は「ジャズの帝王」です。
キャノンボール・アダレイとは誰なのか、これもあまり説明してしまうとしんどいと思うので一言だけ。
彼は「ファンキージャズのノリのいいやつ」です。
一曲はまず「枯葉」。これは絶対的な名演。もう一曲はどれにしようか。悩んだ末に「ラブ・フォー・セール」にします。この曲、アフリカンなドラミング(アート・ブレイキー)としっとりとしたピアノ(ハンク・ジョーンズ)が織りなすどこか幻想的な雰囲気の中で、そっと響く繊細なマイルスのトランペットが一際、印象的です。リーダーのキャノンボールのアルトサックスが、ファンキージャズすぎて完全に浮いているような気はしますが、これはこれでキャノンボールらしさがあって楽しく、全体的には素晴らしい演奏だと思います。
ホーン入りのジャズを聴いていただいて「こういうのもいいよね」というだけでもいいので、少しでも興味を持っていただけたら嬉しいです。
それでは素晴らしきジャズライフを!




