53 名刺代わりの小説七選(自作)
なろうデビューしたのが2016年の12月のことでしたので、間もなく5年間が経とうとしている僕ですが、一体、今まで何をしていたのか、というとよく分からない。
ただ、がむしゃらに何も考えずに書いてきたということなのかもしれません。
作品数も50を越えているので、もしこのエッセイを読んでいる方で、僕の作品をまだ読んでいないけど一度読んでみたいという方がいらっしゃることを想定して、選ぶのに迷わないようにいくつか作品紹介をしておこうと思います。
そういう方がいるか実際には分かりませんが、僕自身の5年間の創作活動のまとめという意味もあるので、やってみようと思います。
その際、自己採点ということで、★でその作品に点数をつけていきたいと思います。
★おすすめ作品★
★短編(連載形式でも文字数が少ないもの)★
魚になった姉 ★★★★★
ピジョラの襲来 ★★★★
東方仏龍虎伝 ★★★★★
しだれ桜の下の狐少女 ★★
しだれ桜が泣いている ★★★
猫のいる喫茶店 ★★★★★
戦乱の世のサンタクロース ★★★
カーネル・ダグラス物語 ★★★★
★長編★
赤沼家の殺人 ★★★★
紫雲学園の殺人 ★★★★★
名探偵羽黒祐介の恋愛 ★★★★★
茜と雫・くノ一忍法伝 ★★★
★合作★
グレゴール・キング殺人事件(別枠)
13作品に厳選しました。
理由を述べてゆきます。まず「魚になった姉」これはホラー小説で、とある企画の参加作品で、今では思い出深い作品です。ホラーをろくに書いたことがなかった僕が三ヶ月ものの間、徹底的にホラー作品を研究して書いた作品。今回、自分の代表作に選んだ理由は、やはり短編としてはこれが一番上手く描けただろうな、という手応えがあったからですね。
だから、他の参加作品で、脅威的なものがあるのを発見した時は本当に焦った……。それも今では懐かしい思い出です。
山梨にある祖父の家をモデルです。夜中、柱の時計の音ばかり響いていて、他はしんと静まりかえって(カエルの声はうるさかったけど)怖くて眠れなかった時の夢現の体験が元になっている、のかよく分からないけれど、そういうタイプの話です。
その家の近くに川が流れていて、若い女性を呑み込んでしまうのですが……ところで、この川のイメージは『茜と雫・くノ一忍法伝』の第一話「死人の滝」にも若干、反映されています。
続いて『ピジョラの襲来』これは夢学無岳さんの企画の参加作品で、巫女さんのイラストをもとに作品を描くというもの、僕は悩んだ末にゴジラやガメラを彷彿とする怪獣ものに仕上げました。ただ、僕はヒューマンドラマこそが自分のテーマであるとの考えから、鳩の怪獣と巫女の内面的なドラマに仕上げました。
ポップな作風ですが、最後には僕のやりたかったことが理解していただけるのではないかなと思います。
続いて『東方仏龍虎伝』これはまた他の方の企画の参加作品で、仏教と戦乱をからめた中華風ファンタジーなのですが、これは自分のいつもの作風と異なるからこそ代表作に選びました。実は、この企画というのが他の人の得意ジャンルに挑戦するというもので、僕はいつもならユーモアのあるヒューマンドラマを書いているのですが、この作品では珍しく、胸をえぐるような凄惨な物語に挑戦しました。自分としてもかなり力を入れて、一ヶ月間精神を集中させて、トーハクの東洋館や横浜中華街にも通い、神保町で中国図書を買い漁って、ひねり揚げのようにアイデアをひねって仕上げたのですが、年末に上げたために非常に再生回数が少なくてかなりしょげた気持ちになった作品でもあります。あの後、読んでくださる方が徐々に増えてきて、ほっとしたのですが……。これは僕としてもかなり好きな作品。
続いて『しだれ桜の狐少女』これはそんな大作でもなければ、力作でもないのですが、僕らしさが出ている気がして、ちょっと知ってもらうにはちょうどいいかなって思う作品です。
続いて『しだれ桜が泣いている』これは自分が主催している『春麗のミステリーツアー企画』というアンソロジー企画の参加作品で、僕の純粋に文学的な部分を出してる作品ということでは、次の『猫のいる喫茶店』(『真夏のミステリーツアー企画』に収録)が一番だと思うのですが、これもその系統。まあ、心境小説をベースにしながら、もっと感覚的な部分に迫ってゆくというのが二作とも共通していて、若干、幻想が入るのは『魚になった姉』にもあるようにも、僕の好む展開です。そして『玄冬のミステリーツアー企画』の参加作品である『戦乱の世のサンタクロース』は、文学というよりエンタメの表現を目指した作品。
続いて『カーネル・ダグラス物語』こちらは夢学無岳さんの企画の参加作品です。異世界転生ファンタジーを書こうというお題でした。僕は、異世界転生ものを書く予定はまったくなかったのですが、企画のおかげで挑戦することができました。ああ、よかった。こちらの作品は、夢学無岳さんのページに収録されています。斬新なアイデアがあるかというとまったくなく、ただ定番のストーリーの表現をどこまで最適化できるかということにこだわりを持って、作った感じの作品でしたね。
長編は……というとこれは僕の代表作である名探偵羽黒祐介シリーズの第1作『赤沼家の殺人』。
でも、やりたいことをようやくできるようになったのは『紫雲学園の殺人』と『名探偵 羽黒祐介の恋愛』です。なので、正直『赤沼家の殺人』なんか読まなくていいから『紫雲学園の殺人』と『名探偵 羽黒祐介の恋愛』を読んでほしい、と思ってしまう。まあ、作者としてどうなのか、と思いますが、これを順番に読んでゆくと『紫雲学園の殺人』と『名探偵 羽黒祐介の恋愛』にたどり着かない恐れがある。それを思うと落ち着かない。というのは第二作の『青月島の惨劇』と第三作の『五色村の悲劇』は、好きだとおっしゃってくださる方もいて幸せなのですが、僕としては失敗作だと思っていて第四作の『名探偵 羽黒祐介の推理』も前二作品ほどではないけれど、不完全燃焼な部分がある作品なのです。なので、ぶっちゃけ『赤沼家の殺人』を読んだら第五作『紫雲学園の殺人』にいっちゃっていただけると助かります。そうだ。その方がいいと思います。大体、Twitterでも、『赤沼家の殺人』と『紫雲学園の殺人』『名探偵 羽黒祐介の恋愛』ぐらいしか宣伝していません。しかし『青月島の惨劇』や『五色村の悲劇』がなければ、今の作品もないと思うし、その時は一生懸命に書いたのだから、満足はしています。満足してはいけないのは過去ではなく、現在と未来なので……。
現在、連載中の『茜と雫・くノ一忍法伝』は、名探偵羽黒祐介シリーズと並行しての連載だったので、エタらないように1話毎完結の読み切りものになっています。この作品は、半年から一年に1話公開の超スローペースだったのですが、『名探偵 羽黒祐介の恋愛』が無事完結を果たしたことで、今後、連載のペースを加速化できると思います。今後、かなり力を入れて書いてゆく予定です。
僕は、大学時代に歴史を専攻していて、江戸文化と仏教思想・仏教文化に興味があるのですが、羽黒祐介シリーズではそれを活かすことができず、泣く泣く胡麻博士というキャラクターに代弁してもらっていたのです。『茜と雫・くノ一忍法伝』はそれをもっと発揮したいという気持ちがあります。とにかく10話まではエンタメとして、表現を最適化しようと努めておりますが、10話を過ぎたら、徐々に自分の趣味を出していこうと考えている作品です。
まあ、現段階では★3つぐらいの自己評価なのですが、いずれは★5つぐらいにしたいと思っています。
合作としてはナツさんの『グレゴール・キング殺人事件』が最高に思い出深い作品です。これについてはまたいずれ語るとして、トータルでみると……
魚になった姉
東方仏龍虎伝
猫のいる喫茶店(『真夏のミステリーツアー』収録)
赤沼家の殺人
紫雲学園の殺人
名探偵 羽黒祐介の恋愛
茜と雫・くノ一忍法伝
この七作が「名刺代わりの小説七選」ということになるかと思います。




