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50 雑談20 (カウントダウン)

 誕生日が訪れようとしている。誕生日についてはあまり語らないことにしているが、ここでのみ、語ることとする。


 今年の自分への誕生日プレゼントは、ビートルズの赤盤だった。去年、青盤を買ったから、今年は赤盤を買おうと思った。当然の流れなのである。コーヒーを飲んで、カフェインでギンギンになっているから、文章が変になっている。それでもエッセイを書こうと思い立ったのは、この年のうちになにかを成し遂げたいと思ったからだ。そして何もできずに日が暮れてゆき、12時になる。12時になったら、僕が今の年齢でできるはずだったことが結局できなかったということになる。

 作品を残そうと思ったのだった。ところが、小説を書くにしても、今からじゃ何の案もないし、詩は長いこと書いていない(僕のシュールな詩を一つ増やして何になるのか)それと絵を描こうと思った。これが一番、現実的だった。

 ところが絵を描いても、この年齢で残したと自信になるほどの作品が、この短時間にできるはずもない。

 そういう堂々めぐり。

 大学時代から仏教思想・仏教史のことを学び続けてきたから、それをまとめてもいいが、これも時間がない。

 すべては時間なのだ。あとは努力の問題。

 しっかりと時間を計算して、無駄のない合理的な手法で、正しい方向に、努力を継続すれば、ある程度の結果は間違いなく生み出せる。

 ところが、これがなかなかできない。


 なので、エッセイを書いている。エッセイはなんの実績にもならないことは分かっているが、書くものがない時は仕方ない。

 そもそも、エッセイというのは、一般とは異なる視点でものをとらえて語ることによって、そのものの本質を炙り出させる行為なのだとか。本質なんてものがあるのかいな、と思ってしまうが、何はともあれ、そういうちゃんとしたエッセイは書いたことがない。

 僕の作品はあまり理解を得ていないが、シュールレアリズムの影響を受けている。シュルレアリスムでもいい。言い方はどうでもいい。それは人間の潜在意識をテーマとした芸術で、ブルトンが作ったものだけど……。

 この点では、メタファーとは無縁ともいえる。しかし、シュールはある意味では、メタファーともつながっているとも言える。まあ、メタファーというよりもこの場合、アレゴリーだけど。理性からかけ離れたところで寓話的な影響をもつものは好きだ。ところで、僕の考えるシュールというものは、これまでのように個人の内面にのみ、閉じこもっているものではなく、他人の意識とも関係してこなければならないと思う。いくつかの思想にたどり着く、前提として仏教や禅の思想がある。

 こんなことをべらべら喋るべきではない気がする。小説に密かに込めている思想的なものをエッセイでべらべら語ることほど、恥ずかしいことはない。

 やめよう。


 誕生日には、モンブランケーキを食べよう。羽黒祐介の大好物でもある。ちなみに夕紀百合菜の大好物は、羊羹と鰻である。

 夕紀百合菜のイラストは、紆余曲折あって、結局、2枚に落ち着いた。


 挿絵(By みてみん)


 挿絵(By みてみん)


 何が違うかというと、上の絵は、前を見ている。下の絵はあなたを見ている。


 この年齢でやったことといえば、自分のイラストを公開できたことだ。よかった。人生はじめてのことだ。下手くそな絵には違いないが、物書きが書いたものだから、イメージだけはしっかりしていると思う。

 こういう絵を描くに至った理由は、やはりキャラの下絵イメージイラストがあった方が、他の方にイラストを描いていただきやすくなるということを人伝に聞いたからで、自分の下手くそな絵で、自作を盛り上げようなどという調子こいた気持ちはまったくない。

 とりあえず、女性キャラ、男性キャラ、風景画は下手くそながらも描いたので、ミステリーの挿絵を描く準備はできた。それだけで満足している。


 川越の絵も描いた。


 挿絵(By みてみん)


 この年齢で、できたことは絵を描いたことだ。羽黒祐介の長編連載は、安定して継続しているし、短編も何作も出している。長編は純粋に芸術性・文学性を追求している結果、このスピードになっている。短編は、ここだけの話だが、新しい読者や、再生回数を増やすために書いているのである。長編だけだと、シリーズキャラも大勢出てくるし、マニアックになりすぎていて、途中からだと読みづらい。新しい読者はなかなか入ってこれない雰囲気がある。なので、シリーズキャラが3人以下に抑えて、さくっと読める短編を定期的に上げることにしている。するとシリーズ全体では、再生回数がそれなりに伸びることになる。

 再生回数というのは、芸術や文学にとってはぶっちゃけ、あまり意味がないが、読者と作品の出会いの機会だと考えれば、その機会は少ないよりは多い方がいい。

 多くの人に読んでもらった上で、本当に心に響いてくれるのはたった一人でもいい。ただ、作品と読者がそもそも出会えなかったというのは悲しい。そういうわけで、エンタメ色の強い短編と、芸術性・文学性を徹底的に掘り下げた長編を同時進行させるという方針を取っている。

 

 こんなことを語っているうちに、年齢がバージョンアップしてしまう。年齢がバージョンアップされると途方に暮れてしまうかもしれないから、今の年齢のうちに、なにかを成果を出したい。

 そんなものは無理な話だ。

 だってあと2時間ちょっとしかない。


 ……2時間あれば、人間なんだって出来るじゃないか?

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― 新着の感想 ―
[良い点] ∀・)「年齢がバージョンアップしてしまう」って表現がすごい好きです(笑)Kan君、面白いなぁ(笑)人間、歳を重ねるごとに感情表現が豊かになっていくものだけど、30代になった君がどうなるのか…
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