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18 対談について

 ここしばらく、花粉症と風邪のせいで喘息になったりして苦しんでいましたが、見事、復活しました。根来警部の話を書いているだけあって、僕も不死身なのです。

 さて、そんなこんなでどんなお話をしようかと思っていますが……そういえば、僕の住む街では、八重桜も散ってしまいました。この前、夢学無岳画伯が、八重桜の詩を投稿されていましたが、やはり、八重桜というものはなかなか乙なものですね。


 実のところ、イデッチさんがラジオ対談をされているのを見て、僕も対談みたいなものを投稿したいなぁと日頃から思っているのですが、なにしろ、人前に出たりするのはあまり好きでないので、こうしてひとり秘密のベールに包まれて、静かにエッセイばかり書いているわけであります。

 僕がどうして対談をしたいのかと言いますと、ただ誰かにインタビューされたいだけなのです。というのは、自分の創作秘話なんて、こんなところでもペラペラ喋れますが、質問ということをされたことがないので、ちょっと楽しそうだな、と思っています。

 それというのは、非常に作者の身勝手な気持ちでして、読者の方が拙作のどんなことに興味を持たれているかを知りたいだけで、僕自身はそれを真摯に答える気はあまりないというなんとも酷い話です。我ながら、無責任で申し訳ありません。

 だいたい、僕の場合、自己分析が甘いのか、やりすぎなのか、不意に質問されたことについて、色々とああでもない、こうでもないと考えてしまって、すぱっと回答を出すということが難しいのです。それでも、会話というのは意表をついた質問をされるから面白いもので、本人も思ってもないことをうっかり喋ってしまったりして、よく考えると、そのうっかり喋ってしまったことが、よっぽど本当らしく思えたりするものです。なまじ、物事を考えすぎると事実から遠ざかるもので、会話の面白さは、不意に飛び出す真実、そんなところにあると思います。

 それにつけても、作家が対談などで質問に的確に答えているのは、驚くべきことです。僕なんて、自分で自分のことがよく分かりませんし、いつも手に負えないやつだと、持て余しているほどですから、ああ、すぱっと自分はこうだと語れるのは尊敬してしまいます。

 このエッセイの第一回で、僕は好きな魚に鰈をあげていますが、あれを書くまで、僕にとって、鰈は煮付けにしても、甘くて骨が多くて、身がもろもろと崩れて、食べ応えのない、非常に嫌いな魚でした。それが、この間、食べていて、ちょっと美味しいな、これも捨てがたいな、と思って、ちょうど鰈を見直していたタイミングで、あのような自己紹介を書いたので、好きな魚に上手い具合に鰈が入ったわけです。


 そういう風に、僕という人間は、自分の何が好きで何が嫌いかなんて、全然わかっていないのです。

 ただ、むしろ、固定的な自己というものは捨てるべきでしょう。好き嫌いなんて、明日には変わるものと思って、基本的には、こだわらない方が良いのです。好きと嫌いをはっきりと分けて、自己の個性を明確にするよう努めなければならないのは、せいぜい、芸術家や文学者ぐらいなものです。あるいは、ジャズ喫茶に通っている人みたいなものです。人と異なることが、プラスになる人びとです。


 それ以外の人は、人との違いやら好き嫌いをあまり明確にすると、社会の歯車の中で動くのは、危うくなります。芸術ではない方向では、いかなる思想においても一方に突き進むと危なくります。世の中、バランスが大切なので、極端なことはしない方が良いわけです。


 相変わらず、話が逸れましたが、自己分析の甘い僕は、誰かに質問をされると、自分の口から飛び出す答えが、我ながら嘘に思えて仕方ありません。本当の自分は知らないので、ただ自分はこうでありたいという理想を喋ったり、恣意的な解釈を施したことを語ったり、ということをほとんど無意識にしているというのが、まあ、会話というものの真実ではないでしょうか。

 自分を語るというのは難しいものですね、としみじみと思いながら、また、僕はしばしの眠りにつきます。

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