11 季節について
春はあけぼの、という言葉があるでしょう。清少納言の枕草子の……。難しいことは知りませんが、春は明け方が良いですよね、って意味ですよね。実際、そんなに春は明け方が良いのか、僕は分からないのですが、そんな風にして、春はこれこれが良い、夏はあれあれが良いと言ってゆくのもなかなか面白いかもしれません。
春は、花が咲いていてとても綺麗です。春の京都に行ってみたいものです。『細雪』という小説があるでしょう、谷崎潤一郎先生の代表作。あれに、四姉妹のうち三人で、京都の桜をまわるシーンがあるんですけど、あれこそ季節の描写というものですよね。
それで、うちの母親も昔の旅行話で、平安神宮のしだれ桜がすごかったとかよく語っているのですが、僕はその時期に京都に行ったことがない。それで『細雪』を読むと、やはりそこにも、平安神宮のしだれ桜が登場してくるんですね。僕は、そんなこんなでたまらない心地になるわけです。今年も行けないで、桜が散ってしまうと……。
実は、奈良吉野の千本桜も見ていたいと思っているのですが、こちらはもっと拝めない。奈良ですからね。
そんなことをくよくよ言っていないで、まあ、東京の桜で我慢なさいという声が天から聞こえてきそうです。東京で桜というと、上野も有名ですね。あとは王子の飛鳥山。僕の母方の実家は、わりと王子に所縁があるので、このあたりは好んで行ってるわけです。
あとは、春というと花粉症。これは今、苦しんでいます。春というと、僕にとってはこんなところですかね。
夏は、やっぱり夏祭り。あの異様な雰囲気が好きです。暗がりに人が肩を寄せ合って歩き、屋台が並び、お囃子が妖しげに鳴り響く中で、提灯の灯りが爛々と灯っているという。
暑くて苦しいのは、本当に苦手です。そして、眩しすぎる太陽光もあまり好みではない。入道雲も勘弁してほしい。そういうわけで、夏という季節は苦手なのですが、ナツさんの美人すぎる名探偵シリーズは好きです。
秋は、最高ですね。紅葉です。紅葉ならば、ちゃんと京都に行ったことがあります。北野天満宮に、三千院、永観堂、南禅寺あたり、とても紅葉が綺麗でした。あんなに赤くなるのだな、とショッキングでした。この旅行の相方は祖母でしたが、その祖母も赤い色を見過ぎてちょっと気持ちが悪くなってしまい、南禅寺まで移動して休んだ後、ホテルに戻ったんです。滋賀の方に、血染めの紅葉というものがありますが、京都もやはり、血染めの紅葉だったという印象です。紅葉のインパクトが強すぎて、他のことはあまり覚えていないという……。
冬といえば、はっきり言って、雪とお正月しかありません。しかし、東京あたりはほとんど降りません。平日に降っても、迷惑ですし、あまり喜べないのですが、間違いなく風物詩だと思います。僕はお正月までは大好きですが、その後は、梅が咲くまでの間、殺伐とした季節になってしまったなぁと身に沁みて思うのです。つまり、一月後半からだいたい二月ぐらいまでの間です。それでも、お正月が好きだから、冬も楽しみではあります。
ということで、僕の好きな季節は、秋からお正月にかけて、ということになりますね。




