やはり人ではないようです。
増えたよ!
光を我が手に!
いきなり妙なテンションでお送りします、現場の俺です、ヌシ様いかがお過ごしでしょうか?
とまあ一人で盛り上がっていても始まらない、今日も練習をはじめるとしよう。
今日もとは言った物の実際の時間が転生後どれだけ経過したか判らない、新しい身体が昼夜の区別は判るらしく、今がどちらか位は分かるのが幸いと言ったところか、自分の周囲や行動には昼夜何も変化無いのだけれどね。
あれからいろいろ試した結果、実は簡単に解決への糸口は見つかった、手に魔力を通す、これ自分の新しい腕に魔力を通そうとしてもなかなか上手く行かなかった、そこで自分の認識の腕、光を吸収できた方の腕に魔力を通した結果、実にすんなりと魔力を通すことに成功したのだ、たぶん身体と言う抵抗が無いせいだとは思うが、それ以上に俺の魂に施された強化のせいではないかと思っている。
魔力に関しては枯渇する位限界まで使うと気絶する、だがその後回復すると総魔力量が上がっているのが確認できた、筋肉の超回復みたいなものなんだろうか? 前世で読んだ話やゲームの知識の魔力を増やす方法を試したら本当に使えたってだけの話だ、俺の記憶がやっと役にたった気がする。
自分の身体の方は魔力に対してまだ抵抗がある、というより身体全体に流そうとすると体内でぐちゃぐちゃに乱れてそのまま魔力が霧散、消費されてしまう、腕や脚も相変わらず先端まで流れてくれない状態だ。
実はこの消費を利用して魔力増加の訓練を行っていたりするのだが、魔力の増加訓練と称して何度も意識を失ったり回復したりをしていた結果、どうやら俺自身の魂と身体の結び付きが強くなったようだ。
意識を失っている間、俺の自我と言う【余計な情報】が無い分、魂と身体が早く結びついているんじゃないか?なんて考えて見た、この身体が人型ではないとすると転生者である俺の無意識に刻まれているであろう【自分は人型である】という過去の認識は【余計な情報】でしかないだろう。
こんな考えに到った原因が勿論存在する。
魂と身体の結び付きが強くなった結果、今まで認識していた仮想の身体と脚は現実の身体と意識統合されたのか動かなくなった、では腕はどうなったか、というとこれがビックリ、なんと増えたのだ!
魔力を腕に流して動かす訓練をしていた所、今までの認識と重なる様に新たな腕を感じるようになったのだ、試しに認識の腕から新たな腕をずらすように意識して動かした結果、ズルリと脱皮をするかのように新しい腕を手に入れる事に成功した。
この腕、同じ肩から生えているような感覚だが随分と 変 である。
まず第一によく動く、それはもう自由自在にウネウネである、骨や関節と言う物が感じられない。
第二によく伸びる、実体がなく自分の元の腕とも認識が違うため稼動に魔力を消費するが消費したぶん自在に長さが調節できる。
うん、魔力で出来た触手だこれ!と思ったが先端にちゃんと指が存在しているので魔手と呼ぶことにした、触腕でもいい気がしたがそう呼んでしまうと人を辞めてしまった気になりそうだった事もある。
認識上の現在の俺、三角座りで普通の腕が一組、そして同じ肩から自在の魔手が一組、人から一歩遠ざかったな!想像すると暗い所で遭遇したくないタイプだ。
今後認識が統合されれば身体や脚と同じように普通の腕の方は動かせなくなる可能性が高い、だとすればこの魔手こそが光を摂りこむ主な手段になるだろう、ただし現状干渉できるのはまだあの光だけである。
この魔手、新しい身体のどこかと認識が合致するのかと思いきや、意識しないと出てこないせいか全くフリーの存在だった、しかも魔力を通して構成されるせいか厚みや太さなども自在である。
という事で周囲の光に魔手を伸ばし届く範囲でどんどん摂り込んでいたらまた視界に変化があった。
これもたぶん魂と身体の結び付きが強固になった所為だと思うが、視界が自分を中心とした全方位同時処理になった、星空のような光の中に俺から伸びる魔手が光って視える、内包してる魔力を見てるんだろうか?
同時に身体に伝わってくる振動を捉える事が出来ようにもなった、ただし相変わらず音らしいものは感じられないが。
手が増え、身体が動かなくなり、視界が変化した、順調に人から遠ざかってる気がするがこんな状況でもごく普通に考え行動出来る、恐らくこれがどんな状況でも適応できると言われた正体だろう、自分の変化に恐怖や忌避感等を感じない、時折変なテンションになったりするがそれは元からだ、ほっといてください。
よし、訓練だ、魔手を伸ばし振り回す、右手側の光へ手を伸ばし、左手下方向の光へ手を伸ばす、どちらも視ながら、制御し周囲も意識する。
以前なら頭が混乱してくるところだが今の俺には普通に出来る、といいつつ実質気にしてるのは両手の魔手の制御だけで、他は意識せずとも出来ているんだが。
右手の魔手から少しはなれた位置に何かあるのが視える、うっすらとした光点が移動している、振動感知では捉えきれないくらいの動き、魔手に接近している?
右の魔手に違和感が走る、魔力が漏れているのか消費量が上がった、何かされた?慌てて魔手を戻そうとして、戻せない!?しっかりと視る、何が起こっている?
右の魔手で違和感のある部分、そこに原因があった、何かが魔手を捉えて魔力を吸っている!魔手から漏れた俺の魔力が相手に流れ込んでいるのが判る、今まで自分では干渉できなかったから油断して考えていなかった、魔力に干渉してくる外敵がいるという可能性。
こちらの魔力量はまだ半分残っている、ならばまずは落ち着くことだ、相手は魔手に食いついたまま魔力を吸っている、ならばこちらからも相手に干渉できるということだ。
左の魔手を伸ばし、食いついている頭付近を殴る、硬い感覚がして魔手が止められる、たいして効いてないなこれは、相手は殴られてムキなったのか獲物を逃したくないのか右手を放す様子はない。
こちらの魔力を取り込んだ事で相手の姿がうっすらと判別出来るようになってくる、細長く一本に繋がる俺の魔力、蛇みたいな奴だろうか?
相手が何であれ倒さなければ魔力を吸われ放題だ、魔手を消して逃げたとしても俺の身体は動けない、そうなった時相手が狙ってくるのは今度は俺の身体ではないか? 不安が膨れ上がる。
相手の身体を見る、口から繋がる俺の魔力、そして体内に薄く見える奴の魔力溜り、俺は左の魔手をそこに重ねる、僅かに相手の身体の抵抗を感じる、構わず指を突きたてて奥まで伸ばす!
左魔手全力稼動!、光を吸収するのとちょっと感覚が違うが奪おうと思うだけで魔力を吸い取れる、相手の魔力溜りを吸い尽くし、吸われた分の俺の魔力も奪い返す。
程なくして相手の抵抗がなくなり、右手が開放される、魔力が尽きると気絶するのは自分で実証済みだ、でもこれで回復して相手の魔力量が上がったらどうしよう?
結果その日俺は相手の回復と報復に怯えて過ごす事になったのだった。
尚、一昼夜を経て、相手の光点が回復する様子がないのを視てようやく安心できた事を告げておきたい。
ろくに相手が見えない、何かもわからない初戦闘?でした。
でもまだ何になったか明かされない。