眼が覚めたらぼっちでした。
いよいよ本編
本編?
よく寝た、どころか寝すぎた気がする、身体が全く動かない、寝すぎが原因なんだろうかこれ。
感覚的には相変わらず膝を抱えて丸まってる、視界は真っ暗、音すら聞こえない、どこからかぼっちなの? という声が聞こえた気がする、ほっといてくださいお互い様です。
現状を把握しなおそう、今の俺、真っ暗な中で膝を抱えてぼっち状態、うん間違いない認識だ、前を見る、右を見る、左を見る、上を見る、下を見る、真っ暗ではあるがちゃんと視線を向けてる気はする、身体を無視して下のほうまで。
手足を伸ばそうとしてみるが全く感覚が無い、手足の存在は感じるが動かそうとすると認識が曖昧になる、というかずれる?
ヌシ様は俺は意思ある存在として転生すると言っていた、ならば俺は飛沫内部で意思在る存在になってるのだろうが、イシモチさんではないだろう、アレは元の世界のお魚さんだ、俺の今の姿への手がかりが全く無い。
身動きは出来ないが息苦しくもないし窮屈でもない、柔らかな布団に包まれている感じに似ている、まだ何かに触れてる感覚も無いけれど。
何も見えない聴こえないでは自分の身が危ない、こういうときはまず落ち着き、迂闊に素数を数えたりせず感覚を研ぎ澄ませるのだと何かで読んだ、何かは忘れた、相変わらず頼りないな俺の記憶。
周囲の音、僅かな光、振動、どんな些細な情報も逃さないよう意識を集中する、集中して、更に集中する、身体の奥から何かが動き出す感覚、集中する、身体中へと広がった何かが俺の身体の枠を超えようとして、俺は気を失った。
だるさは無いな、なんとなく頭もスッキリとしている、身体が動かないのはそのままだが、気を失ってる間に何かあったんだろうか。
――― このメッセージを聞く頃、レージは既に転生を果たしている事だろう
突如頭の中に届くヌシ様の声、なんとなくお約束っぽい語りですね。
――― 汝の事だからまた何かツッコミを入れてる事だと思うが、残念ながらこれは前もってお前の魂に刻んでおいたメッセージだ
相変わらず無駄にお茶目ですねヌシ様、もしかして俺の記憶を統合したからなのか?
――― レージが新しい世界でどんな存在になったか、それは我にも判らぬ、ただ確実に言えるのは元の人の姿ではないだろうと言う事、あの姿は今の汝の魂を受け入れるにはあまりにも脆過ぎるのでな
――― 人としての記憶が在る汝が人ではない存在として転生した場合、記憶があるだけに余計混乱するだろう、だがそれがその世界での汝の身であり、汝が汝として在る姿だと理解せよ
――― 飛沫からの情報ではその世界にも汝の概念にある神に近しい存在が在るらしい、外からの転生者である汝に興味を示すかも知れぬ、心に留め置くといい
――― 肉体のほうはその世界の物故特に心配は要らぬ、転生した汝の魂はその環境でも間違いなく適応できる、そのように我が調整しておるからな
――― とはいえその魂が肉体と馴染むのに時間はかかるだろう、自分の身体として上手く馴染むよう努力を惜しまぬことだ、施した付与もそうでなければ万全の働きはせぬ
――― 我から伝えることは以上だ、しっかりと生きよ
ヌシ様の優しさが心に沁みる、転生後混乱するかもしれないと思って仕込んでくれていたのだろう。
――― なお、このメッセージは自動的に消去されて汝の記憶領域として統合される、あーでぃゆー
うん、余韻ぶち壊しだよ!
気を取り直して再度の状況把握だ、ヌシ様から努力せよと言われた以上、努力無しにはまともな結果は出せないだろう。
意識を失う前、自分の身体の中で何かが動いたのがわかった、物理的なものでなく身体の奥の熱とでも言うべき何か、さっきまで俺は外に意識を向けていた、だがまずは自分を知るべきかも知れない。
身体はまだ動かないからとりあえず感覚で、自分の中で動いた何かに意識を向ける、身体の中心、もどこかよく判らないので、とりあえず気持ち的に臍の下、丹田付近を元に据えて集中してみる、なんかあった、なんだかいとも簡単に見つかりましたよ? 見つけたことでだんだんとはっきりとしてくる、俺の中に感じる不慣れな感覚、僅かに熱を帯びて渦巻いているように感じるそれに更に意識を向けると今までの俺が知らなかった新しい俺の認識がそれが俺の魔力だと教えてくれた。
そしてそれを魔力と理解した途端俺の視界に変化が現れる、強弱はあるが星空のように周囲に広がる無数の光点、俺はその星空に浮いているかのように相変わらず膝を抱えたぼっちの状態だった。
魔力がある世界、まず判明した事である、これで他の存在に魔力はありませんでしたって事はないだろう、俺も体内に魔力を抱えている位だ、これが普通なんだと思いたい。
魔力、なんだかゲームや小説みたいでわくわくするね、魔法とかも存在するんだろうか?いやそんな事の前にまずは自分が何なのかを知らないと、迂闊なことをしでかして自爆したり、墓穴掘ったり、俺のことだし気が付いたら死んでましたって事も十分にありうる、無自覚はいけない。
しかし、俺は一体何に転生したんだろう?
ヌシ様からのメッセージ訳
――― まあ、がんばれ(はーと)