プロローグ 1
遅筆なのでゆっくり目の更新です。
どうやら俺は死んだらしい、そんな自覚も記憶も無いからこんな言い方しかできないんだが。
正確にはお前今肉体無いし?、何度も魂砕け散ってたから生きてるなんて言えないんじゃないか?的な事を告げられた。
俺の魂を何度も砕いた存在にだ。
はじめこそ何それ酷いと思わないでもなかったが、でも不幸な事故であると納得もしているし、結果的には感謝もしている、この存在は偶然俺を見つけただけらしいし。
俺が魂を砕かれた原因はいくつかあって
・ 人の魂ではその存在の思念を直接受け止められる強度が無かったこと
・ 存在の方も俺のような極小サイズの魂に接するのが初めてだったから力の加減が判らなかったこと
・ その存在に死という概念が理解できていなかったこと
等々。
なんだかよく判らない赤の混ざった黒のような濃い靄の漂う空間、明るさでいえば非常に暗いと言えるだろう、地面など存在しているかも判らない。
原因は判らないのだが俺は魂だけになって雑多な思念をばら撒きつつこの地を漂っていた、らしい、この辺実に記憶が曖昧である。
この地に以前からいたその存在はそんな俺を見つけ、声をかけるかのように思念を飛ばした。
ちょっと想像してみてほしい、小さなガラスの器に水を注ごうとするのにダムの水を全解放して超高空からひとまとめにして叩きつける光景を。
物理的な圧力すら伴うような強大な思念の奔流、それを叩き付けられた俺の魂は呆気なく砕け散った。
砕け散った俺の魂が再生せず、飛び散った欠片の中に自分と異なる意思と記憶を見て更に興味をもったその存在は飛び散った俺の魂を回収し再生を行うことにした。
ついでに自分の思念に耐えられるように強度を付与、しようとして力加減を間違えてまた砕き、何度も繰り返した結果、62回目で俺の魂に再生能力を付与した。
再生しては試しに思念を送られ、耐えきれずに砕け散る俺、少しずつ俺の魂の強化を進める存在、気難しい陶芸家の作品作りのような、または子供の粘土遊びのような実にシュールな光景だと思うが突っ込む者も他にいない、結果試行14958回目にして普通に思念を受け止められる魂の強度になったそうだ、もう俺の魂なんだか俺の塊なんだか扱いがよく判らない。
ちなみにこの間の俺の意識は凍結状態にあったと言う事で記憶もない、逆にあったら今頃正気を失っていただろう。
うん、もうこの時点で俺と言う存在が原型を留めて居るかどうか凄く怪しいんだが、一応俺と言う意識は消えていないから問題は無い、と思っておこう。
思念を受け止められるようになったことでようやく会話らしいものが出来る様になった、相手は抑揚の無い中性的なマシンボイス、とでも言えばいいのだろうか?そんなイメージを伝えてくる思念さんである。
此処は何処なのだろう?
――― 我ノ在ル処、我ト我ヨリ剥離シタ飛沫ノ我ガ在ル以外ニ他ナキ処
はて?いきなり意味が判りません。
我と言っているのがこの思念の主で間違いはないだろう、では剥離した飛沫の我とは一体何方だろう?
飛沫の我、とは貴方とは違うのか?
――― 我ハ我デアル、我ヨリ飛沫ノ我ガ発チ、意思ヲ消失シテ我ヘト還ル、全テノ我ハ我デアル
――― 強キ意思ヲ持ツ飛沫ノ我ハ其ノ飛翔ヲ長キモノトスル為、内部ニ汝ノヨウナ存在ヲ造リ出ス事ガアル
つまり俺はその飛沫さんのどれかが産み出した?
――― 肯定スル、汝ハ飛沫ノ我内ヨリ零レタ存在デアルト推測スル
――― 我ガ汝ヲ操作デキタノガ証トナル
魂を再生したり作り替えることができる貴方は神なのだろうか?
――― 汝ノ記憶ニ在ル神トイウ概念、ソレガ神デアルナラ我ハソウデハナイト断定スル
――― 我全知ニ非ズ、全能ニ非ズ、我何モ知ラズ、何モナサズ、此処ニ在ル意思デアル
――― サレド飛沫ノ我ノ内部ニソノ飛沫ヲ限定トシテソノ概念ニ近シイものガ在ルト認識スル
飛沫の我の中に神が存在して俺みたいなのを生み出している?ならばその飛沫を生み出すと言っているこの我さんは世界を産んでいるという事になるのでは?
どう考えても普通に言う神以上の存在だよねこの我さん、いや我様か?
今更ながら物凄く無礼な態度でしたね俺。
――― 汝ノ記憶ハ飛沫内部ノ存在ノ記憶、我モ初メテフレルモノ、興味深イ
――― 飛沫ノ我ハ内部ヲ構築シタ記憶ヲ持ツガソノ存在ノ記憶ニフレルコトハナイ
――― 我ハ我以外ノ明確ナ意思ニ遭遇スル事ガ初メテデアル、故ニ汝ノ記憶ヲ借リテ対話ヲ行ッテイル、汝ノ記憶無シニコノ対話ハ成リ立タズ、我ハコノ遭遇ヲ好マシク思ウ
なんだか早口でまくし立てられた!?
でもはじめての遭遇なのに凄く気を使ってもらっているようだ、なんにせよ俺には有り難い限りである。
俺はこれからどうなるんだろう?
――― 汝ノ記憶ハ再生ノ際ニ我モトリコンダ、我ニ記憶ノ説明ヲ望ム
再生してもらった恩もあるし、その位喜んでやらせて頂きましょう。
ただ、恥ずかしい記憶は簡便な!
こうして俺は全体像すら判らない存在に俺がいた世界について説明することになったのだった。
我さんとの会話は次回で改善予定