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空でダンスを  作者: 和十至也
5/6

空でダンスを・5

「よーいどん!」

 かけっこがはじまりました。

 ジョージは、どん! というまえにとびだしました。


 そのあともグングンいきおいをつけて、ドンドンとすすんでいきます。

 ジョージはいちばんのままでおそらのむこうにうかんでいるふうせんをとって、こちらにかえってきました。

 いちばんはじめにすれちがったのは、にばんめにはやいルシアのソリでした。

 ジョージはルシアにいいました。

「おそいぞ、おばさん!」

 ジョージはつばをはいて、はしりさりました。


 つぎにジョージはサムといきちがいました。

 ジョージはとくいになっていいました。

「よゆうだね!」

 かちほこってジョージがたちあがり、りょうてをあげたそのときです。

 ソリがぐらりとゆれて、ジョージはいまにもソリからふりとおされそうになりました。

 トナカイもまっすぐはしりません。いうことをきかずにあばれまわります。


 サムのみみもとで、またあのときのあくまがささやきます。

「ひさしぶりだなサム、なまいきなこぞうはほうっておいて、またいちばんになろうぜ?」


「ぼくはいちばんになったけど、あのクリスマスのよるにはなにもできなかった」

「あのおいぼれサンタはのろまだったからくたばったんだ!」

「それじゃあ、サンタよりもはやい、あのひこうきにのっていたひとたちのほうがつよくてえらいってこと? ぼくはみんなのためにがんばったジャックのほうが、ずっとつよくてえらいとおもうな」

「ふん、このこしぬけやろうめ!」

 サムはあくまのこえをきかず、たすけにいきました。


 サムのトナカイは、あばれるジョージのトナカイをとめようとしてりっぱなつのをおられてしまいましたが、それでもうんとがんばって、ソリをちかくによせてくれました。おかげで、サムはいまにもおちそうになっているジョージをたすけることができました。


 サムはいちばんになれませんでした。

 けれど、サムはまんぞくでした。


 かけっこがおわったあと、ジョージはみんなからはなれたところにひとりすわっていました。

「ぼくはまけたんだからな、わらえよ」

 サムはだまってなにかをポケットからとりだし、ジョージのてにのせました。

 それは、むかしサムがソリのかけっこでいちばんになったときにもらった、あのおもちゃのくんしょうでした。

「がんばったごほうびだよ、ジョージ」

 ジョージはだまっておもちゃのくんしょうをみつめていました。


 かけっこがおわり、サンタたちはおうちにかえっていきました。

 しずかになったかけっこたいかいのかいじょうで、サムとトナカイはよぞらのつきをながめていました。

「わるかったね。じまんのつのをおってしまって。ぼくはいちばんになるよりも、ジョージをたすけることがだいじだとおもったんだ」

「ブルッ」

 サムのトナカイはひくくなき、サムをせめるようなことはしませんでした。


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