空でダンスを・2
サムはまいにちきずだらけになって、サンタのおうちにかえってきます。
「よくがんばったね。つかれたろう、ココアはどうかね」
ジャックは、いつもくたくたになったサムにおいしいココアをつくってくれます。
ぽかぽかあたたかいココアをのむと、ふしぎとげんきがわいてくるのでした。
「よし、あしたもがんばるぞ!」
「ホッホ、くれぐれもむりはせんようにの」
あるひのこと、サムはジャックから、サンタになるためにはテストをうけなければいけないことをおしえられました。
サムはこれまでよりもたくさんれんしゅうするようになり、まいにちはあっというまにすぎていきました。ついにテストのひがきました。サムはテストをうけに、ジャックのソリのうしろについて、かいじょうまでとんでいきました。
テストというのは、ソリにのってのかけっこ。
みならいサンタがあつまって、きょうそうするのです。
のはらにはたくさんのサンタがいて、にぎやかにおはなしています。
そのなかから、きんいろのかみのおんなのこがはなしかけてきました。
「わたし、ルシア。おたがいにがんばりましょうね」
「うん。ぼくはサム。がんばろう」
ソリのかけっこは、おそらのむこうにうかんでいるふうせんをもってかえってくることでした。
「よーい、どん!」
ちょうろうサンタのかけごえで、みならいサンタたちはいっせいにとびだしました。れんしゅうをがんばったサムはソリをじょうずにうごかすことができました。
このまま、ほかのみならいサンタにぬかれないでかえることができれば、いちばん。
サムはとてもいいきもちでした。
いままで、なにをやってもいちばんにはなれなかったからです。
「あっ」と、おもわずサムはこえをあげました。
めのまえで、ほかのサンタがソリからおちそうになっていたからです。たすけないと、いまにもなげだされてしまいそう。
そのときです。
「やい、サム。あいつをたすけていたら、いちばんになれないぞ! さあ、のろまなやつらをけおとして、おれたちもいいおもいをしようぜ。え? できないって? あ~あ、ここでいちばんになれなきゃ、おしまいだな。それに、あのじいさんもいってたっけなあ~、のろまなサンタなんていらないってな!」
すがたのみえないあくまがサムのみみもとでささやいてきました。
サムは、おちかけたサンタをたすけずにゴールしました。
かわりに、そのおちかけたサンタをたすけたのはルシアでした。
「あなたって、じぶんのことだけしかかんがえていないのね。それでもサンタかしら?」
「おちるのがいけないんだ! ぼくはわるくない」
そういって、サムとルシアはにらみあいました。
いちばんになってもらえたのはおもちゃのくんしょうひとつだけ。
かけっこがおわってから、ジャックはいいました。
「サムや、サンタにはいちばんになるよりもたいせつなことがあるんじゃよ」
がんばっていちばんになったのに、サムはおこられているようなきがしました。
「いちばんのなにがわるいの!」
ジャックはかなしそうなかおをするばかりで、それきりなにもいいませんでした。