表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

41/175

結局、あのバカ息子はどこへ行ったんだ?!

 昔もそう、同じことを言われたのを思い出す。


 つい泣いてしまいそうになって、聡介は思わず手で口元を覆った。


 娘のおかげですっかり気持ちが楽になった。


「……ありがとう、さくら。おかげで元気が出たよ……」


『それなら良かった。ところで、ねぇ……お父さん。和泉さんは今一緒にいるの?』 

 バカ息子の名前が出てきて、聡介は一気に現実へ引き戻された。


「あのバカはどこで何をしているのか知らないが、朝からずっと姿が見えないんだ」

『実は今日、和泉さんとお会いしたのよ』 


「え……?」

 和泉は尾道に行ってきたのか?


『あの、ほら……優作さんが見ていた旅館の、仲居頭の方の件で』


 思い出した。確か名前は米島朋子。

 先日、監房の中で自殺を図ったと聞いた。


 そして今日、ついに息絶えたとも。


「ああ、覚えているよ」


『なんていうか、少し様子がおかしかったの』

「どういう意味だ……?」


『上手く説明できないんだけど、とにかく……元気がないって言うか。いつもならニコニコして、冗談言ったりするのに……。それはもちろん、お仕事のことだから真剣にお話しされるとは思うけど、どこか虚ろっていうか……車で来られてたから、無事にそっちへ帰れたかな? って』


「朝に会って以来、顔を見ていないぞ?」

 急に聡介は心配になってきた。


 いったん娘との通話を終え、急いで交通課に問い合わせてみる。


 とりあえず、事故の記録はなかった。


 いそいで和泉の携帯電話にかけてみる。


 しばらくして、

『は~い、和泉彰彦の携帯電話でーす』

 などと、呑気な男性の声が聞こえてきた。


「……誰だ?!」


『彰ちゃんなら、心配しなくても生きてるわよ。ただちょっと、今は【生ける屍】状態だけどね』


「あなたはいったい、どなたですか? 彰ちゃんというのは、和泉のことですか?!」


『アタシ? アタシは彰ちゃんの元カレ。あなた確か、高岡聡介警部よね?』


 誰だ?

 自分のことを知っているということは、警察関係者だろう。


『やぁね。一度会って挨拶したのに……忘れたの?』


 思い出した。

 あの妙なしゃべり方をする、特殊捜査班の隊長だ。


「今、彰彦はどこにいるんですか?」


 すると突然、電話の向こうは黙り込んだ。


「もしもし……?」


『今夜一晩ぐらいは、そっとしておいてあげた方がいいわ。もし彼があなたを必要とするなら、迷わずにこっちから連絡するから。たとえ夜中だろうが、明け方だろうが』


 一方的に通話は切れた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ