表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/175

一歩間違えればセクハラですからね

 そう言う訳で昼の時間、聡介は和泉と連れだって外に出た。


「聡さん。皆の前で、うさこちゃんにああいうことを訊くのはダメですよ。デリカシーがありません」

「そ、そうか……それは悪いことをしたな」

 全然気付かなかった。


「じゃ、お詫びに奢ってくれますよね?」

「その理屈はおかしい。どうでもいいが、彰彦。お前は俺の知らないところで悪さしてないだろうな? ギャンブルとか女遊びとか」

 和泉はとんでもない、という表情でこちらを見つめてきた。


「何を言ってるんですか、聡さん。僕には決まった相手がいるんですよ? 周君っていう、スウィートハニーが」

「……向こうはなんて?」


 すると和泉は両手で顔を覆った。

「普通に気持ち悪いからやめろ、って」

「……当然だな」

「ひどいや、聡さんまで! 忘れたい悲しい記憶を思い出させて、残酷だ!!」

 ああ、面倒くさい。


 そしていつもの店に落ち着く。


「……もしかして、誰か、ヤクザとつながっていることが発覚しましたか?」

 和泉はおしぼりで手を拭きながら、さりげなくそう訊ねてきた。

「……まぁ、そんなところだ」

「そんなのは監察の仕事ですよ。聡さんは自分の部下を信じてください」

 わかっている。


 ふと、聡介は思い出したことがあった。


「あ、そういえば……来週からHRTのメンバーが同じ部屋を使うことになるから、机の上とまわりを綺麗に掃除しておけよ?」


 つい先日の事件の折り、いち早く協力を申し出てくれた特殊捜査班の隊長は、長い間アメリカに研修へ行っていたらしい。


 HRT。Hostage Rescue Teamの略称である。


 人質立てこもり事件、誘拐事件、テロ事件。そういった特殊な事案を扱う刑事達は捜査1課の所属ではあるが、聡介達強行犯係とは扱う事件の性質が異なる。

 何と言ってもその部隊の刑事達は全員、屈強だ。


 今は特殊捜査班専用の詰め所を建設中で、そこが完成するまでは聡介達捜査1課が使用している刑事部屋に同居するのである。今朝、課長から言われた。


 その隊長の名前は確か……。


「へぇ、HR……え?!」

「名前、なんて言ったかな。研修でアメリカに行ってた隊長が帰国したらしい。ほら、こないだの……お前も、古くからの知り合いだって言ってたじゃないか」

「ま、まさか、北条警視……?」

「ああ、確かそんな名前だ」


 なぜか和泉の顔が真っ青になった。


「なんで……? こないだのは一時帰国だって……聞いたような……って、あれ。もしかして僕の希望的観測だった……みたいな……?」

「おい、どうした。大丈夫か?」

「なんでそんなこと承諾したんですか?! ぼ、僕、あの人と同じ部屋になるぐらいなら、いっそ離島の駐在所勤務の方がマシ……!!」


「どうしたんだ? 嬉しくないのか」 

「嬉しい訳がないでしょう!?」

 和泉はガタン、と立ち上がる。


「落ち着け。座り直せ、みっともないだろうが……」

 まわりの客達が何ごとか、とこちらを見る。


「ど、ど、どうしよう? ねぇ?! 聡さん!!」

 それからなぜか、息子は聡介に縋りついてきた。


挿絵(By みてみん)


「落ち着け、何があったんだ!?」

「あの人、無理矢理地獄の筋トレメニューに僕を付き合わせるんですよ?! そんなの毎日続いたら、絶対に死んじゃいます!!」


「筋トレか……俺も少しはやらないとな」

 しばらく運動らしい運動をしていない。

「そんな生易しい話じゃありませんて!! ねぇ、聡さん、お願いだからその話、すぐに断ってください!!」

「無理を言うな、上が決めたことなんだぞ。だいたい……」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ