表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

37/175

なんで僕にも連絡してくれなかったんだ

『広島港男性死体遺棄殺人事件捜査本部』と戒名の書かれた捜査本部が、宇品東署の会議室に設けられた。


 聞き込みを終えた刑事達が続々と集まってくる。あと30分ほど後に捜査会議だ。


 駿河はコンビを組んだ所轄の刑事に挨拶をした後、班長の元に報告へ向かった。


「ただ今、戻りました」

「ああ、お疲れさん。何かわかったか?」

 なぜか上司は機嫌が悪そうだった。


 意外とこの人は、内心が顔に出る。


「これと言った目撃情報は出ていません。ただ、午後7時30分宮島口着のフェリー乗り場付近の防犯カメラに姿が映っていました」

「宮島口? 宮島に渡ろうとしていたのか」


「それがどうも……方向から言って、宮島から本土に渡ってきた様子でした」

「宮島から本土に?」

 班長は不思議そうな顔をした。が、


「まぁ、詳しいことは会議の後だ。それよりも……」

 ぐるりとあたりを見回す。


「お前、何か知ってるか? あのバカ2人がどこで何をしてるのか」


 バカ2人とは恐らく、和泉と友永のことだろう。


 和泉が上司の指示を待たずにうさこを巻き込んで出かけたこと、友永が突然、聞き込みの途中で姿をくらましたらしいことは駿河も聞いている。


 和泉はともかく、友永はいったいどうしたのだろう?


 そう思った時に駿河の携帯電話が鳴った。


「駿河です。ああ、友永さん……」

 言っている傍から、だ。


 すると、無言の内に駿河の携帯電話は班長の手によって取り上げた。


「……友永君? 君、ずいぶんと好き勝手な真似をしてくれてるそうじゃないか……え……?」


 はじめは額に青筋を立てていたのに、段々と声の調子が変わっていく。

「……そうか、わかった。無理はするな」


 何があったのだろうか。


「今夜ぐらいは傍にいてやれ。ただし、お前の代わりはどこにもいないからな」


 班長は溜め息をつきながら、携帯電話を返してきた。


「どうかしましたか?」


 恐らく、あの兄妹に何かあったに違いない。

 しばらく返事はなかった。


 それからややあって、

「なぁ、葵。俺達は男だからわからんのだろうか? 母親の気持ちっていうのは」

 突然、妙なことを訊く。


 何と答えたものか駿河が迷っていると、

「自分が産んだ子供を愛せない女性は、果たしているんだろうか……」


「よく、わかりません」

 それしか言えない。


 班長は暗い顔をして、それから物想いにふけってしまったようだ。無言になる。


 そこへうさこが、ものすごく疲れた顔でやってきた。

 どういう訳か彼女1人だ。


「班長、駿河さん……お疲れ様です」


「和泉さんはどうしたんだ? 君1人か」

 上司が黙ったままなので、駿河が代わりに声をかけた。


「それが和泉さん、黙ってどこかに行っちゃったんですよ。携帯はつながらないし、女将さんも突然、飛び出して行っちゃったし……」


「女将さん? どこへ行っていたんだ」


「宮島の旅館です。そう、班長。ガイシャなんですけど……」


「どこの旅館なんだ?」

 思わず駿河は、彼女が上司に報告しようとしたのを遮ってしまった。


 すみません、と謝って口を閉じる。


「実は……」


 うさこから話を聞いた駿河は、ものすごく複雑な気分になった。


 被害者が宮島の『御柳亭』に宿泊していて、客室係を担当したのが、手伝いでやってきていた周だった。それはいい。


 夕食時に突然、被害者が出かけて行ったまま戻らなかった。


 連れの女性がいたが、警察への届け出を拒否していた。


 そのことを周が和泉に連絡した。


 つまらない嫉妬心だ。

 周にとってはやはり、自分よりも和泉の方がより大切な存在なのだろうか。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 37マデリア…… あ、いや、部分ごとに感想書けるようになったから、いちいち上のような新しい通貨を考え出さなくてもよくなってたんだ……(もともとない [気になる点] 友永……もう父親感がハ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ