寝ようと思ったら、午前中いっぱいは眠れるぜ?!
「思い出したぞ、お前。あの高岡警部の部下だな?!」
父の名前が出てきたところで、和泉の神経は過敏になった。
「……聡さんがなんだって言うんですか? 人事課で伝説にでもなっているとすれば、それはあの人なら、問題警官をやる気にさせる天才ってことでしょうね」
すぐ感情的になるくせに、こちらが同じように強気で出ると途端にビビる。
器の小さい人間だ。
相手を格下と判断した和泉は、真っ直ぐに目を見つめて言った。
「言っておきますが……聡さんと、僕の仲間に何かしたら、ただじゃおかない」
未だに名前の思い出せない警官は、気圧されたかのように手を放し、舌打ちを残して去って行く。
つまらない男……。
和泉は襟元を正して、部屋に戻った。
※※※※※※※※※
欠伸が止まらない。目が半分閉じている。
夜遅く、朝が早いのはキツい。
周はぼんやりする頭で、宴会場に朝食を運んでいた。
それが一段落したら、今度は担当の部屋に朝食を運ばなければならない。
また、あの変な女に会わなきゃいけないのか……。
ウンザリしながら周が廊下を歩いていると、問題の若い女性が血相を変えてこちらに走ってきた。
起き抜けのスッピンと思われる。昨夜と顔がやや違う。
「ねぇ、竜ちゃんが戻ってこないの!!」
女性は周を見つけるなり、袖をつかんできてそう訴えた。
「え……?」
「夕べ、晩御飯の最中に出て行ったきり、帰ってこなかったんだよ!! どうしよう……」
女性はかなり狼狽しているようだ。
「落ち着いてください……携帯電話は?」
「かけたけど、電源が入ってないって」
「出かける前に、何か言い残したりは?」
「……わかんない!!」
「一緒に探しますから、少し待ってください。それから警察に……」
警察、の一言に女性は顔色を変えた。
「嫌よ! 警察は絶対に嫌!! あたしが疑われちゃう」
「お連れ様と、何かトラブルでもあったんですか?」
なんだか刑事みたいだ……と思いながらも、周は訊ねた。
「……とにかく、竜ちゃんを探してよ!!」
女性はそれだけ言って、宿泊している部屋の方に戻った。
周は一先ず、女将に事の次第を報告しに行くことにした。
「お客様が……?」
「連れの女性がすっかり狼狽えちゃって、一緒に探すって約束はしたんですけど」
すると、女将と共に事務所にいた姉が言う。
「もしかしたら、だけど……本土に行って、最終のフェリーに乗り遅れちゃったのかもしれないわ。時々あるのよ。島には遅くまでお酒を飲める店がないから、流川まで出かけて行って……そのままフェリーを逃しちゃうお客様」
「じゃあ、本土にいるかもしれないよな。わかった、そう伝えてみる」
事務所を出かけた周は振り返り、
「女将さん。一応、警察に言っておいた方がいいですよ」
それから周は客室に向かい、姉から聞いたことをそのまま客の女性に伝えた。
女性客はそうか、と納得したようだった。
ただ……周には気になることがあった。
「失礼ですが、警察の介入を拒否される理由は?」
すると、女性客は目尻を吊り上げて怒りだした。
「なんなのよ、あんた! ただの仲居でしょ!?」
失礼しました、と周は早々に客室を退去した。
あとで和泉に連絡しておこう。




