表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

17/175

ウチだって捜査1課だから、みんな刑事なのよ?

 先日の定例会議でのことだ。


 県警内に、暴力団関係者と癒着している人間がいるという疑惑が持ち上がった。


 参加した管理者は全員、まさか自分の部下ではないだろうな……? という顔をしていたのが忘れられない。


 どの部署の人間でも可能性は考えられるが、一番怪しいと睨まれるのは組対……捜査4課だろう。彼らは常にヤクザ達と接している。


 坪井課長はとても真面目で正義感の強い男だ。

 彼を慕う部下も少なくない。


 だが。

 裏切り者が裏切る理由は様々ある。


 聡介が溜め息をついた時、和泉がようやく戻ってきた。


「……随分、長い『外出』だったな?」

 思わず皮肉を込めて声をかけてみる。


 すみません、と彼は素直に答えて自分の席に座った。そして思い出す。今夜は和泉が当番だ。


 ちらりと顔色を見ると、普段通りのように見えた。


 いつもならこちらの視線に気がついて目が合うと、にっこり笑って手を振ってくるくせに、気付かないフリをしているようにも思える。


 まぁいい。

 それよりも今は、他にも考えなくていけないことがたくさんある。



 ※※※※※※※※※


 眠くてかなわない。

 駿河は立ち上がり、自動販売機へ向かった。


 小銭を取り出して缶コーヒーを購入する。コーヒーで目を覚ますのも、そろそろ限界を感じつつあるのだが。


 刑事部屋に戻ろうと廊下を歩いている時だった。


 長髪で長身のHRT隊長を名乗る男性がこちらに向かって歩いてくる。


 確か、北条警視だ。


 話し方は相当おかしいが、隙のない身のこなしや、鍛え上げられた体つきを見れば、確かに特殊捜査班を率いるだけの猛者だとわかる。


「あら、あなたは確か……」

 駿河は黙って会釈し、通り過ぎようとした。が。

「ねぇ、そういえば名前を聞くの忘れていたわ。なんていうの?」

「自分ですか? 駿河です……」


 すると。ドン! と、なぜか壁際に追い詰められた。


 北条は人差し指を左右に振り、

「そーじゃなくて、ファーストネームに決まってるでしょ?」


「あ、葵……です」

「そう、葵ちゃんね。階級は巡査部長ぐらい?」

 黙って頷く。


「ねぇ、本気でウチに来ない? ウチだって分類としては捜査1課よ?」

「……自分は、高岡警部の下で働きたいです」

「ああ、聡ちゃん? 名前だけは聞いていたのよね、ずっと以前から。いったいどんな人かと思ってたけど……」


 けど?


「想像以上だったわ」


 いったい、何を想像したのだろう?


 すると北条はくすくす笑い出し、身体の向きを変えた。

「あなたって顔に出さないけど、考えてることがいろいろ表に出るわねぇ~」

 また言われた。


「望む望まないに関わらず、そのうちきっと【とりあえず人事】が発令するわよ」

「……何ですか? それは」

 初めて聞いた。


「あら、知らないの? 知らないなら知らない方がいいわ。でも」

 特殊捜査班の隊長はニヤリと笑みを浮かべた。


「公務員に異動はつきものってこと。ウチに来たいって言ってくれたら、アタシから人事にかけあっておくから」


 何の話だかわからないが、とにかくあまり喜ばしい内容ではなさそうだ。


 少し嫌な予感がした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ