閑話休題にゃ:3
『ねぇねぇプリン』
『なぁに? メイ』
『知ってる人達がいっぱい集まってきたにゃ。これから、何が始まるにゃ?』
『犬神家の一族よ』
『なにそれ?』
『横溝正史の代表傑作よ。死体が頭から湖につっこんでたり、菊人形と首が挿げ替えられてたり、琴糸で縛られたり……』
『怖いにゃ……』
『ラストで名探偵金田一耕助が、関係者を全員広間に集めて真相を明かすの。和泉さんってミーハーっていうか、意外とパフォーマンス好きな人よね』
『……カイシャの会議室を使うと、上の人に睨まれるからって言ってたにゃ』
『なにそれ、どうしてメイがそんなこと知ってるの?』
『しーらにゃいっと』
気を取り直して。
『それよかプリン。ご主人様、朝からずっと機嫌が悪くない?』
『そうね』
『全然遊んでくれないし……何を怒ってるのかにゃ~?』
『怒ってるんじゃないわよ、ジェラシーよ』
『にゃんで?!』
『原因は和泉さんよ』
『和泉さん?』
『……いい? うちのご主人様は、和泉さんのことが大好きなの。だけどほら、今朝なんだか、元カレだとかいう背の高い男の人を一緒に連れてきたでしょ? オネエだけど』
『むぅ……そこが謎にゃ~……』
『深く考えなくていいわよ』
『まぁ思えば犬神家の相続争いも、元を正せばBL問題よね……』
『びーえる? なにそれ、おいしいにゃ?』
『一部の腐ったお嬢さん達にとってみればね』
『腐ってたら食べられないにゃ……』
『それはさておき、ご主人様は怒ってもいるわ』
『どして?』
『昨日、美咲さんが帰ってきた時、なんだか元気がなかったでしょ?』
『うん』
『何があったのかな~、と思ってビアンカさんとの会話を聞いてたの。どうやらね、美咲さんの好きだった人に、新しい彼女ができたみたいって落ち込んでたのよ』
『へぇ~、そうにゃの?』
『2人で仲良さそうに話してるところを見たんだって。だからご主人様、やり場のない怒りを覚えているのよ』
『……シスコンにゃ~』
『それはもう、タイトルについているとおりよ』
『でもねぇ……誤解だと思うわ。その、該当の彼女と彼が一緒にいるところ、さっき私も見たんだけど。あれは完全にただの職場の同僚同士。それ以外、何でもないのに……美咲さんたら、あんな調子じゃその内、彼が雌のゴリラと会話してるのを見てもブルーになっちゃうわ』
『プリンって……』
そもそもゴリラと会話はできない、という点はさておき。
『ところで……美咲さんって、旦那様いるにゃ?』
『だから、そのあたりはシリーズ初期作を読めばわかるわよ』
『それにしてもほんと、人間って何かと面倒くさいわよね』




