たぶん、隊長の命令なんだろうな……制服は。
本当の趣味の悪い男だ。
『心から尊敬してやまない、聡さんへ。あの事件、いろいろと裏に隠された事情があることはきっと、既にご存知だと思います。いろいろと深いところを知っている関係者を一同に集める手配が整いました。この機会に、真実を見極めるのはいかがでしょう? 胸の内にモヤモヤしたものを抱えたままだと、今後の業務にも支障が出てしまいますからね。場所はもちろん宮島。御柳亭の一室をお借りしました。ご来館を心よりお待ちしております』
とのメールが、和泉から届いた。
今日からはもう出勤しなければならない。
昨夜はあまりよく眠れなかった。
娘夫婦達に挨拶をしてから、聡介は早く移動できる新幹線に乗ることにした。
尾道から広島市内までは意外と距離があり、普通電車では時間がかかる。
あのバカ息子が勝手に動き回っていたのは知っているが、いったいどこに行って何をしていたのだろう?
恐らく、だが。
重森夫妻のこと、2人の娘に関して調べ回ったに違いない。
どうしてそっとしておいてやらないんだ。
世の中には隠されたままにしておいた方がいい事実だってある……。
本当にそうだろうか?
広島駅に到着する。
正月の駅前は閑散としていた。
路面電車に乗ろうと聡介が歩きだした時、メールの着信音がした。
『聡さんへ。返信してくれてないのはあと、聡さんだけですよ。皆さん、ちゃんと来るとお返事くださいました』
うるさい。
県警本部から一番近い駅で降りて、まっすぐ本部ビルに向かう。
ゲートをくぐって3階にある捜査1課の部屋に入る。
いつもは刑事達が大声でしゃべる声、鳴りやまない電話の音、ほぼ騒音に近い状態なのに、今日はまるで嵐が過ぎ去った後のように静かだ。
自分の席の隣に、新しく机と椅子が設置されていることに気付いた。今は空席だが。
そう言えば、特殊捜査班のメンバーとしばらく同じ部屋を使うんだったな。
あの隊長はだいぶ変わった人だが、上手くやっていけるだろうか……?
聡介が椅子に座りかけたその時だ。
「おはようございます、高岡警部!!」
見事なマッスル体型をした制服姿の警官が声をかけてきた。
「お、おはようございます……」
それから続いてぞろぞろ、と5人の警官に取り込まれる。
「恐れながら、本日のご予定は?!」
「え? えっと、あの……」
聡介は彼らの襟についている勲章を見た。彼らは全員HRT隊員である。
「宮島へは?!」
聡介は口を閉じた。
すると。
「失礼いたします!!」
いきなり身体が浮き上がった。
気がついたら担架のようなものに乗せられ、手足を拘束されていた。
「……???!!!◎▼■×○~~~?!!」
「高岡警部が本部へ出勤なさったら、強制的に宮島へ連行するようにとの、我らが隊長、北条警視からのご命令であります!!」
わっしょい!!
「……?!」
何? 何が起こったの?! ねぇ!!




