電話はあんまり好きじゃないんだよな
たまには智哉に連絡してやってくれ。
あのだらしない身なりの刑事に言われて、周は携帯電話を手に取った。
そうしようと思っていたが、バタバタしていたので、なかなか携帯電話を触る余裕すらなかった。
やっとのことで少し時間が取れて、久しぶりに友人の番号をダイヤルする。
『……はい』
「あ、智哉? 俺だけど」
『周? どうしたの、久しぶり……』
「元気か? 絵里香ちゃんは?」
『うん、大丈夫……』
なんとなく元気がないように思える。何をやってるんだ、あの刑事は!!
『ねぇ、周こそ元気? お姉さんや賢司さんは、猫ちゃん達は?』
「……姉さんと、猫達は元気だよ。ただちょっと、賢兄は……」
人から改めて聞かれると、少し不安になってしまう。
兄はいったいどういう病気なのだろうかと。
『賢司さん、具合悪いの?』
「……ちょっとな。あ、でも年が明けたら検査入院するって」
『そう……』
友人の声が少し湿っぽくなってきたので、周は慌てた。
「な、なぁ智哉!! いつかみたいにまた、信行の弟や妹たちと一緒に皆で出かけよう? 今は寒いけど、春になったらさ……」
そうだね、と答える声には少し調子が戻ったようだ。
『ところで周、今どこにいるの?』
「今? 宮島。姉さんの旅館の手伝いしてる」
『そっか~、お手伝いしてるんだ。偉いね』
偉いかどうかはわからないが。
「智哉こそ、妹さんの面倒をよく見て……偉いじゃないか」
少しの間があって返ってきたのは、
『他に、面倒見る人がいないからさ』
なんでそんな、返事に困るようなことを言うんだ。
周は焦った。
『……ごめんね、変なこと言って』
「い、いや、別に……」
『電話くれて、ありがとう。それじゃまたね』
智哉は少し疲れている様子だ。
冬休みが明けたら、いろいろ話をしよう。
こちらにも聞いて欲しい話がたくさんあった。




