私はデブだ
私は何やってるんだろうな、という気持ちがした。結婚した同級生たちは次々と出産し子育てに邁進しているし、独身の子はそろそろ勤続10年になるだろう。一方の私。私、何もしてない。
気持ちがどん底まで落ちる日は、布団に横になったままトイレ行くのがやっとだった。1日寝て、家に引きこもって、家事も何もせず、仕事して帰って来た夫が買ってきたコンビニ飯を食べる。そんな自分にまた落ち込む。
役立たず、という言葉は私のためにあるような気がした。眠るために薬も飲んでいるが、それでも眠れない日は私はとにかく冷蔵庫にあるものを食べた。むさぼるように食べた、チルドのシュウマイを冷えたままとか、冷凍してあるパンをそのままかじるとか、食べて食べて食べて、眠った。眠っていれば、自分が役立たずだとうことを忘れていられた。
家に引きこもったまま食べるだけ食べて、眠りつづける。夫は痩せの大食いで、休みの日にはラーメン屋や100円寿司に連れて行ってくれて、そこで2人でおなかいっぱい食べた。それが私の気分転換になった。
そして、夫と暮らし始めて7年ほど経った今、私は完全なるデブになった。あと2、3キロ落としたいとか、5キロ痩せれば40キロ台とか、そう言う甘いものではない、本物のデブである。標準体重を、今、およそ30キロオーバーしている。まるで妊娠しているようなおなかに、ふくらはぎのような二の腕、肉に埋もれて陥没した顔のパーツ、重い体。
そんな三十路過ぎのデブ女は、オタクだった。二次元のイケメンに恋をしていた。近眼なのでいつも眼鏡をしている。デブゆえに美容に関心がないので、美容院に行く回数は最小限、ぼさった頭にすっぴんで、ノーブラで近所のスーパーに買い物に行く。はっきり言って、気持ち悪い。
婦人科で、生理が来ないのは太りすぎだからだと言われた。小学生のころからの尿漏れも相談したら、それも肉が膀胱を圧迫するからだと言われた。ショックだった。妊娠すれば間違いなく子供は糖尿病になると言われた。子供は欲しくないからその心配はないが、自分が糖尿になるのはどうにかして避けたい。
夫は付き合い立てのころ、「私のどこが好きなの?」という質問に「顔」と即答していた。綾瀬はるかに似てるね、そんなふうに言われた私の可愛らしい(はず)の顔は、肉に埋もれて消えた。