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王の住まう城の地下。
扉にゴツンゴツンと何かがぶつかっています。
「ご主人様、扉の向こうにルンバがいます」
「あら、この音はルンバだったのね。お招きしましょう。さぁどうぞ」
「いったいどこのルンバでしょうか? 野良ルンバ?」
「何も書いてないわね……。先日ルンバの群れが横断したから、はぐれルンバかしら?」
「それなら群れに戻してやらなくちゃいけませんね」
「あら、でもちょっと待って……。そう、そうなのね。はぐれルンバじゃなくて荒野を目指す流離いのルンバなのね」
「アウトローな人生は誰しも一度は憧れるものです」
「ねぇ、今日一日だけ雇われルンバになってくれないかしら? さっき日干しイモリの粉を零して困っていたの。お給金は弾むわよ」
「おや、ルンバから何か紙が」
「ルンバ雇用契約書ね。不当な雇用条件は労働ルンバ組合に咎められちゃうのよ」
「ルンバ社会はしっかりしてますね」




