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王の住まう城の地下。
魔法の鏡が童話『大富豪』の三話目を語ります。
「魔法のランプを擦ると、ランプの魔人が現れてこう言います。『願いを三つ叶えてあげましょう』」
「ふむふむ、三つとなると悩みどころよね」
「そこでランプの持ち主はこう答えました。『一つ目の願いは、ランプの魔人を自由にすることだ!』」
「初手からクライマックスよ! この欲の無さ……もしや!」
「そうです、魔法のランプを擦ったのは大富豪です!」
「さすが大富豪。望むものは既に手に入れているからこそ、他者の真っ先に自由を願えるのね」
「さらに大富豪はこう言います。『お前の願いを三つ叶えてやろう』」
「なんてこと、他者から受けた恩を直ぐに返す……。この余裕、寛大さ、大富豪だわ!!」
「という『大富豪』の絵本は無いんですか?」
「無いわね。あら、こんなところに見かけない絵本が……」
『芋富豪』
「うーん、ニアミス」
「認めません! こんなものは『大富豪』とは認めません!」
「やだ、大富豪過激派」