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王の住まう城の地下。
魔女が寄贈する絵本をチェックしています。
「『長靴を履いた猫』『眠り姫』『ジャックと芋の木』。……芋の木?」
「結構な割合で芋童話が混ぜられていますね。ところでご主人様、どれも有名な作品ですが、一番有名なあの作品の絵本はありませんね」
「あら、何かしら。赤ずきんもあるし、シンデレラもある、人魚姫もあるわよ」
「それよりもっと有名な作品です。誰もが知っている、あの……」
「誰もが知っている?」
「『大富豪』です」
「とんだ初耳」
「昔々、あるところに……」
「そしてやっぱり始まるのね」