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王の住まう城の地下。
大きな鏡が置かれているその部屋の存在を、城に仕える者はおろか王も姫すらも知りません。
ただ一人、王の後妻である女を除いては……。
今日も今日とて、彼女は鏡に問いかける。
世界で一つの魔法の鏡、後妻の女は魔女だったのです。
「鏡よ鏡、答えておくれ。世界で一番美しいのは誰?」
「俺です」
「まさかの」
「ご覧なさい、この美しく磨かれた鏡面を」
「磨いてるのは私よ。そもそもどうやって貴方は自分の鏡面を見てるのよ」
「正面にある机の上に置かれた鏡で毎日眺めています」
「やだ、合わせ鏡!悪魔が来ちゃう!」
「魔女のくせに悪魔を怖がりますか」
「別に怖くはないけど用が無いのに来てもらうなんて申し訳ないじゃない。お帰りの際にお渡しする手土産もないし」
「案外に律儀」
こんな感じの話が続きます。