黒鉄獅子捕獲作戦
お題:薄汚いライオン 必須要素:SF 制限時間:4時間
「―――これより、『黒鉄獅子捕獲作戦』の実行に移る」
部隊全員に無線で通達が入る。この声は、今作戦の指揮官補佐のものだ。
「諸君の有能さは当作戦司令部も周知の事実となっている。が、今回はあくまで『捕獲』、くれぐれも殺さぬように」
だだっ広い平原に一陣の風が渡る。こんな任務さえなければ、ハイキングに出かけたいような天気だ、場所だ。だがしかし、此処には「黒鉄獅子」を纏った屈強な人間が潜伏している、虎児でも得たい命知らずの冒険者でもない限り、こんな所でハイキングを楽しみたい人間はいない筈である。……多分。
「補佐さんよぉ、っつったって相手は「獅子」だろぉ?"無傷で"『捕獲』しろってんじゃあねーだろーな?」
部隊一の厄介者にして、腕は随一、アクが強い野太い男の声が入ってくる。部隊長の俺としては、司令部に楯突くような、そして傲岸不遜極まりない男の発言を諌めなければならないのだが、毎度のことなので放棄している。というか、放棄させてくれ。
「…首から上が無傷ならば他は何をしても構わない」
無線の向こう側の、司令部の方が一瞬ざわついだが、これはかなりの譲歩である。少しはこの任務もやりやすくなったんじゃないだろうか。
「やりぃ!流石は司令部のお偉いさん♪ウチの堅物隊長とはワケが違うぜ!!」
…彼奴は無線がオープンになっているって知らないのだろうか。否、恐らくわざとだ。
「作戦開始時刻は13:00。各自装備を整えておくように」
「―――了解」
司令部からの通信が切れた。
* * *
21世紀中ごろから登場した、「人獣技術」。その恩恵を真っ先に受けたのは軍事部門であった。ヒトの能力と、動物の能力の掛け合わせを効率的に行う「人獣技術」は、勿論軍事部門以外にも役に立つことはあったが、専ら利用が進んだのは戦争においてであった。
犬の嗅覚を利用した効率的な麻薬・密輸捜査。
ウサギの聴覚を利用した、諜報活動。
蛇の熱源探知を利用した、夜間軍事活動。
フクロウの羽音を消す技術を利用した、暗殺作戦。
戦場は同時に実験場でもあった。
毎回毎回多くの兵が犠牲になると同時に、数々の戦功のみならず、芳しい実験結果も上がった。技術の発展と向上によって、兵の犠牲は減ってはいったものの。
そのうち、実験がしたいがために戦争を起こす様になってくる。世界各国の上層部の連中は何を考えているか分からないが、この「人獣技術」をフルに活用して、少しでも他国に先んじようと、また他国より技術力を上回ろうと、切磋琢磨した。
「人獣技術」を手に入れたのは国家だけではなかった。世界中のテロリストや、各種ゲリラなどなど、動物愛護団体を除く殆ど全ての組織がこの技術を使っているのではないのかという噂が出てくるまでになっていた。
今回の任務も、国家に敵対する勢力を鎮圧するためにお呼びがかかったようなものである。そして、新たなる「人獣技術」を試すために。
* * *
「隊長~」
平原付近の前線詰所。作戦開始時刻まであと1時間。作戦内容の最後の確認をしていると、斥候に出ていた部下が帰ってきた。
「何か分かったか?」
「「鳥目八目」によると、地形には少し起伏が混じるようで、ここから東に10kmの所に川がありました。敵の主力部隊はそこにいます」
彼女のゴーグルには、鳥のように全体を俯瞰する能力が付いており、文字通り鳥に「擬態」して、戦場を相手方にばれないように探ることが出来る。
「で、肝心の「黒鉄獅子」は?」
「バーンズベルク西第3研究所から盗み出された「黒鉄獅子」は、主力部隊とは別の部隊が所持しているようですね」
「別の部隊…」
確かこの敵対勢力は最近内紛を起こしていた、と諜報機関からレポートがあがっていた。
「主力部隊が俺達に攻撃を加えなければ良いんだがな」
「どうでしょう。案外向こうも「実験」気分なのかもしれないですよ?」
「新しく手に入れた装備がどれくらい使えるかを俺達で試してみようっていうことか?そいつは―――」
「そいつは、また運の悪いこって♪」
俺の後ろから、さっき通信時に割り込んできた男がひょっこり現れ、俺の肩を叩く。
「…ミルか」
「よっ、隊~長~♪」
性格に難のある中年オヤジ―――ミルヴァーナ・F・ヴァンデが、右手をひらひらさせる。
「俺達の手にかかりゃあどんな装備も一網打尽、木端微塵なのによぉ。敵サンも命かけて手に入れた装備をあっさり破壊されるとなったら、まぁ~哀れなもんだぜ♪」
ミルの言うことも一理ある。「掃除屋」「殲滅部隊」「破壊魔」etc.と言われる第九部隊を相手にしなければならないとは、俺が敵なら無言で逃げ出す。それこそ脱兎の如く。
「ミル!隊長から離れなさい!!」
「やだよ、チキン野郎♪」
「鳥目八目」を操る女性―――エレナ・キニーネスがミルを張り飛ばそうとする。この二人の争いを見るのも何度目となることやら…
「鶏は飛べません~。そんなことも知らないなんて貴方馬鹿ですか?」
「俺の愛銃で飛ぶお前の首でも落としてやんよ♪」
ついでに言うと、この二人の喧嘩のレベルが低すぎる。
「エレナ、ミル。いい加減喧嘩するな。エレナ。情報を他の隊員に共有してくれ、ミルは出撃の準備をしとけ」
「はい、隊長」
「俺の準備はもう済んでる♪」
取り敢えず二人をばらけさせる。ばらけさせた理由は―――
「隊長…出撃準備できましたぁ…」
通路の暗がりから青年が音も無く現れる。細身で長身、黒髪黒目の青年―――トウヤ・ウエノジョウは、俺の前に立つと、敬礼した。
「トウヤか。調子はどうだ?」
取り敢えず無難な質問を投げておく。ミルはアクが強いが、大分あっけらかんとした性格だ。だが、トウヤは……
「ええ、僕は元気ですよ。それにしても…」
俺の背を冷たい汗が流れる。
「隊長の肩に触れるなんて、あの中年許せないですねぇ、隊長が穢れてしまいます。さっき見てたんですよ、隊長があのオヤジに触られてる所。嫌だったでしょう?僕もう我慢できなくてあの場で二人とも叩き斬ってしまおうかと思ったくらいですから…」
トウヤは、俺の肩に唐突に何処からともなく取り出した除菌スプレーを使い始める。ナイフ戦闘の腕は確かで、「毒蛇」と「夜梟」でゲリラ戦でも非常に重宝する人材なのだが、何故か俺にやたらと執着するのである。
「あ、いや、ミルに悪気があった訳じゃないと思うんだ、だから…」
「隊長はあんな中年の肩を持つんですか…?」
トウヤの双眸が昏い光を湛えている。
「そういう訳じゃなくってだな…」
何で俺の許には普通じゃない部下ばっかり集まるんだ?
弁明に疲れていると、通信が運よく入った。
「通信入ったな。先に部隊員を集めておいてくれないか?任務終わったら何か奢るから」
「分かりましたぁ…」
ゆらりと再び通路を歩いていくトウヤの背中を見送り、通信に出る。
「第九部隊・隊長ゲオルグ・アウトバーンだが」
「ああアンタか。盗まれた「黒鉄獅子」の性能と、敵サンの部隊の内部事情の情報あるんだがよ」
「…エリュシオン・フォックス社のガイナーだな?」
「さっすがゲオルグ。声聞いただけで誰か当てるなんてやっぱすげえよ、アンタ」
通信の向こう側から拍手の音が聞こえる。
エリュシオン・フォックス社は所謂「情報屋」で、「人獣技術」を駆使してあらゆる「ヤバい」情報を瞬時に入手するのである。それこそ有名映画スターのケツ毛の本数から、とある大物議員の愛人への貢物総額、そして軍事機密情報まで。手法は企業秘密となっているが、凡そ見当は付く。この業界で、エリュシオン・フォックス社に情報をすっぱ抜かれたら今後1か月以内には戦場で散るという悪質な冗談まであるほどだ。
「で?いくら振り込めばいいんだ?」
「1000だ」
「1000か?流石にそれはぼったくりじゃないか?」
「こっちだって命削ってんだ、それくらい払って貰わねえと」
「900」
「いーや、いくら譲った所で975だ」
「毎回利用しているんだから、950はどうだ」
「960。でないと、カミさんと5人の子供を養っていけねえ」
「お前独身だっただろうが」
「ちっ。このネタ、アンタには使えなかったことを今思い出したぜ…」
「955でどうだ」
「~わかった。アンタの所はお得意様だからな」
「「お得意様」なら、もうちっとまけてくれてもいいんじゃないか?」
「こっちは情報出さなくたっていいんだぜ?」
「わかったわかった。いつもの口座に振り込んどくから早く出せ」
端末を操作し、指定の口座に振り込む。もうじき作戦開始時刻だから、早く情報が欲しい。
「振り込みを確認した。その端末に送っとくから。じゃ」
通信が切れる。詳細かつ分かり易く書かれたレポートを瞬時に読み込む。
「こいつぁ…好都合だ」
* * *
「おぉら!!吹っ飛びやがれ雑兵ども―――――!!!」
ミルの手に握られた速射銃が火を噴いて薙いでいく。彼の持つ「猟犬」はこういった陽動作戦を得意とする。
「黒いライオンさんよぉ、居るなら返事しやがれっての!俺と遊ぼうぜ♪」
ミルが叫びながら敵陣のど真ん中に「猟犬」片手に突っ込んでいくのを見ながら、俺とトウヤ、及びトウヤの部下たちで丘陵地帯を進む。全員「猫の前足」を装備しているので、足音は無い。
敵主力部隊を態々刺激させる必要は無いので彼らが居る場所の反対側から回り込む。どうやら、エリュシオン・フォックス社の情報通り、「黒鉄獅子」を所持した部隊は主力部隊には内密でこの「装備」を盗ってきたようである。その所為か、途中で出会う敵兵も数が少なく、殆どがミルの陽動に駆り出されているようだった。
「隊長、その「黒鉄獅子」って、どんな「装備」なんですか?」
トウヤが俺に訊いてくる。その間も、彼は黙々と部下たちと共に敵兵を音も無く斬殺していく。
「以前実戦に投入された「白銀獅子」の改良版だ。性能は「白銀獅子」の30%増し、特筆すべき点は「獅子舞」という新機能がついていること、かな」
殆どがエリュシオン・フォックス社の受け売りである。
「「獅子舞」…あの中年と上手く踊ってくれれば良いんですがね」
「…ああ、そうだな」
トウヤの昏い笑みに、俺は曖昧な相槌を返すだけに留めておいた。
* * *
敵部隊の中枢にある、簡素な造りの建物内部に潜入し、内部に居た敵兵を、情報を知ってそうな奴以外肉塊に変えている途中に、「それ」は起動した。
急に生かしておいた敵兵が高笑いと共に暴れ出し、敵味方の区別なく殺傷していったのである。
「っぶねえ!!」
無表情のままに敵兵をかっぱいでいたトウヤの上に慌てて俺は覆いかぶさる。下げた頭の上を、「何か」が掠っていく。
手近な遮蔽物の影に入り、気配を殺す。どうやら掠っていった「何か」は、人の頭だったようだ。見た感じ味方じゃなかったので少し安心した。
「隊長、ありがとうございます…」
俺の下に居たトウヤが、何故か蕩けた表情で俺に礼を言う。
「トウヤ、シャキッとしろ。んな表情すんな」
「はいぃ…」
分かったのか分かっていないのかいまいちよく分からないトウヤを放って暴走した敵兵の様子を窺う。どうやら、遮蔽の影に居る俺達の事は気が付いていないようだ。
「あれが、「獅子舞」、か…?」
先ほどの急な暴発には、驚かされた。そもそも「人獣技術」で暴発が出る、なんて話、只の都市伝説だと思っていた。あの敵兵には「人の意識」はもう残っていなさそうである。
『上層部も厄介な「装備」の「捕獲」を任務にしたもんだ』
内心そう思いつつも、トウヤに手で合図する。
以前「白銀獅子」を相手した時、何より怖かったのがその脚力であった。獲物を追い詰めるスピードは、まさに「百獣の王」顔負けである。それが三割増しとなると、流石に今回脚部装備をしていない俺達では鉛弾を使うしか方法は無い。
トウヤが全くの無音、ノーモーションで「黒鉄獅子」の頭部を狙う。相変わらず惚れ惚れするナイフ捌きで敵の頭部以外に負傷させていく。そこを俺の銃で狙う。
俺とトウヤの狙いは只一つ。建物からこの「黒鉄獅子」に乗っ取られて暴走した敵兵を追い出し、ミルの「猟犬」で無力化することである。
その意図に気付かない「黒鉄獅子」は、そのまま出口付近へと追いやられる。出口まであと一歩、まで追いやった所で、再び「獅子舞」が発動した。
「「!?」」
トウヤが距離を取って遮蔽物の影に入る。
外からは銃を連射する音と共に、敵兵のものと思われる叫び声が響いている。状況を鑑みるに、ミルに追い立てられた敵兵が退却してきたところで「黒鉄獅子」と鉢合わせし、「獅子舞」が発動したのだろう。どうやら、エリュシオン・フォックス社の読み通り、「黒鉄獅子」は一対多専用の「装備」のようである。
「黒鉄獅子」は俺達の願いどおり、外に出てくれたようである。外の連中にとっては迷惑極まりないだろうが。敵兵の叫び声がだんだんと聞こえなくなっていく中で、聞きなれた銃声が聞こえてきた。
「よお隊長!生きてっか?」
細心の注意と共に外に出ると、大音量で叫ぶミルが、愛銃を連射しながら「黒鉄獅子」と対峙していた。
「御陰様で。…というより、連絡は無線でしろっていつも言ってるんだが…」
まあミルに言ったところで、それは馬の耳に念仏、といったところだが。
「ああ忘れてた。それよりも隊長、「首から下」をハチの巣にしている最中なんだがよ、アイツ、全ッ然倒れねえぜ?」
ミルが「猟犬」で「黒鉄獅子」を指す。指しながらもフルオートで銃弾をぶっ放している所は流石ミル、といった感じだ。
確かに、「黒鉄獅子」を「装備」している本人はもう絶命していてもおかしくは無いくらいに鉛弾を受けている。にも拘らず、倒れないのだ。
「いっそのこと、"切り離して"みるか」
俺はぼそりと呟くと、「装備」していた近接用武器、「青龍」を抜き放った。
「隊長、カッコいい~♪」
ヒュウ、とミルが口笛を吹く。
さっきから見ていると、「黒鉄獅子」が気配を感じ取れない場合、また敵人数が3人以下の場合には「獅子舞」は発動しない。
「じゃあ俺も、エンゴシャゲキ、するぜっ!!」
ミルが「猟犬」を構えたところで、トウヤが銃を下げさせる。
「何すんだよっ」
「隊長に当たったら困ります!」
「んなことするわけねーだろうがよヤンデレ野郎が!」
ミルとトウヤがぎゃあぎゃあと掴み合い…もとい、超高度な近接格闘をやっていたが、取り敢えず放っておいて「黒鉄獅子」に対峙する。
「悪いな、悪気はないんだが…まあ、アンタらが「装備」盗んだのが運のツキだ―――」
構えようとする「黒鉄獅子」を速さで上回り、首を落とす。
バチバチというショートする音と共に、「黒鉄獅子」の装備者が盛大に血液を撒き散らし、倒れた。「黒鉄獅子」は首から上は無傷だが、色々と薄汚れていた。
* * *
「いや、ご苦労だったよアウトバーン君」
シルバニンゲン研究地区。『黒鉄獅子捕獲作戦』の数日後、俺は戦闘のデータと共に研究所統括長と会っていた。
「まさか「黒鉄獅子」が盗まれるとは思っていなくてね、盗まれたって知った時にはヒヤヒヤしたけど、君達なら大丈夫だと思ってたよ」
俺の目の前で笑むのは総白髪の若い女性である。彼女こそが、「国家の頭脳」「人獣技術の第一人者」アリス・C・ベールファイ、「黒鉄獅子」の開発者であった。
「バーンズベルク西第3研究所の連中にはお灸を据えてやったよ、全く、装備の管理とテストも行えないようじゃ、無能も極まれば寧ろ滑稽になってくるよ。…もしくは、内通者がいたからか、な?」
いずれにせよ、彼らの内部に捜査の手が入るけどね
国家の頭脳は相変わらず読めない笑みを浮かべながら、敬礼する俺を眼鏡の奥の双眸で眺めていた。
「さて。君の意見を聞こうじゃないか。そんな似合わない敬礼を私にしなくてもいいよ。私は軍のお偉いさんじゃなくて、一介の研究者なんだから」
その一介の研究者に、俺の首を繋げるも飛ばすも自由自在、な権力が備わっているから困るのだが、とは言わずに、データを手渡す。
「元々俺達が装備していたものについてはアンタも知ってるだろうからそのデータを見てくれ。今回実戦投入された「猫の前足」は便利だったな。足音消せるし。欲をいうなれば、高所から落下した時に衝撃を減殺する機能が付いていると嬉しい」
俺の意見に相槌を打ちながら、何かを手元の紙に書き留めていくアリス。何が書いてあるかは俺には読めないし、読めたところで、書いてあることを理解することは不可能だろう。彼女は「作る者」、俺は「使う者」なんだ、それでいいじゃないか。
「で、「黒鉄獅子」についてなんだが、あれはまだまだ改良が必要だと思われる。敵味方の区別がついていなかった。あと、3人以下になったり、こちらが気配を殺していたりすると、姿が見えていても攻撃してこない。「獅子舞」については、威力はすげえが、やはり敵味方の区別がついていないことが問題だな」
「ふうむ。そんなものか。ありがとう。やはりナマの意見は参考になるよ。ちなみに、君たちが「獅子舞」と呼んでいるものは、「銃を乱射し、殲滅を行う能力」だけではない。あれは、「任務遂行に不要な意識を消す」ためのもので、今回は上手くいかなかったが、本来ならば敵のみを瞬殺するものだよ。…仮令、自らが絶命しても、ね」
アリスの発言に内心でビビったが、俺は無表情を貫くことにした。
「ま、そんなところだ。君が何か言いたいのでなければ、解散にしたいのだけれど」
俺は再度敬礼を返し、研究室を出て行きしなに、
「あれ、わざと盗ませただろ」
と、口の動きだけで伝え、建物を後にした。
* * *
「あ~あ、くっそ疲れたぜ」
伸びをしながら街中を歩く。俺達が幕を引いた任務は、街頭の巨大スクリーンでデカデカとニュースとして取り上げられていた。
「「任務遂行に不要な意識を消す」か…」
ぼそりと呟く。脳裏には、血に塗れた、ライオンの頭部を模した「装備」と、「装備」内部の敵兵の頭部、彼の高笑い、そして無差別の攻撃が再生されていた。
「あー、そういう辛気くせえのは俺のガラじゃねえ、トウヤ誘って飯でも食うか」
脳裏に浮かんだ考えを振り払い、トウヤに電話をかけた。