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1章9話 好奇心を実行へ

 夜、ほとんどの者が寝静まってから、ハインラットと共に城の外に出る。

 共に出るというと並んで外に出たように聞こえるが、実際はハインラットの外套に隠れるように張り付いて外に出た。


「おや、ハインラット様、こんな夜更けにどちらへ」


 歩哨として門の番をしている二人の兵士に話しかけられる。


「あー、なんだ……寂しいときもある」


 ハインラットは俺と話し合っていたとおりの台詞を言う。この提案をしたときにものすごく渋い顔をしていたのだが、他に理由が思いつかなかったのだ。

 兵士が気を使ったのか、子猫通りの白鳥って店をハインラットにお勧めしている。


「そ、そうか、すまんな」


 足早に門を通りすぎる。


「ラフエル様、次はもう少しましな理由を考えて下さい」

「ごめんごめん」本当は腹が痛いほどおかしいのを隠すのが大変だ。


 門から十分に離れたのを見計らって、ハインラットから離れて自分の足で歩き始める。街の明かりはほとんどなく、月明かりが無ければ何も見えなくなりそうだった。

 明かりが欲しいところだったが、誰に見られるか分からない以上、闇に紛れて移動したかった。


「私一人で十分だと思いますが」

「駄目だよ、ハインラットだけでやろうとすれば、騒ぎが大きくなってしまうから」


 城を出る前までしていた問答を、ハインラットが蒸し返す。危険だから一人で行くと、押し問答が続いたのだ。

 敵のアジトに入る方法や、静かに極秘にやらなければいけない理由などを事細かに説明し、何とか説得したのだ。


「あそこです」


 ハインラットが暗い路地を進んだ先、手つかずの荒れ地になっている広場の一角、第二城壁にへばりつくように建つ小屋を指さす。

 窓が二つありカーテンが閉められているが、窓の一つから明かりが漏れている。


 少し嫌な感じがしたので、荒れ地に入る前に探知の魔法と走査の魔法を使う。

 走査の魔法は指定範囲を精密に知覚できるようになる。範囲や密度にもよるが、精密に調べれば蟻の穴の形まで分かるし、広範囲に荒く調べれば、半径数キロは見知った土地のような感覚になる。


「あった」


 あれた草むらの生えた土地に、隠れるよう罠が仕掛けてある。

 落とし穴や、引っかかると音が鳴るヒモらしきもの。小屋に繋がる道には砂利が敷いてあり、そこも歩くと音が出る。


 草の中をハインラットに罠の場所を示しながら、避けるように小屋の外壁にたどり着く。

 ハインラットに周囲の警戒をお願いし、扉の前にへばりついて探知の魔法を使う。


「反応は3人……と、2匹です。1人はロムロスの手下ですね。2匹は……この大きさは、魔物?」


 小声でハインラットに伝えると、少し驚いた顔をする。


「まさか城壁の内側へ持ち込んでいるとは」

「一番近い一人が起きています」


 扉を小さくノックする。

 小屋の中で驚いたような反応が感じられ、扉の方に気配が近づいてくるのが分かる。


「……誰だ」


 声がしたのを確認し、扉の隙間に気絶の魔法を流し込む。普通は対象の指定が必要なのだが、場所さえ分かれば空間に掛けることも出来る。


 扉の向こうでどさりと人が倒れる音がしたので、鍵を魔法で解錠すると、ショートソードを手にしたハインラットが扉を開けて素早く中に入る。


 扉の前で倒れている男を、ハインラットが縛り上げる。

 部屋の中は壁にランタンがつるされており、暗さに慣れた目に少しまぶしく映る。部屋の中央に机が一つあり、酒の入っていた器や、食事をした皿などがそのまま残されている。


「あの扉の奥に1人寝ていますね。あと、地下に1人と2匹」


 ハインラットが無言でうなずき、扉を開けて中に入ると、ベッドで寝ている男に襲いかかる。

 男は驚いて目が覚めたようだが、ハインラットが素早く組み伏せ、猿ぐつわをかませて先の男と離して寝かせておく。


 なんか、ハインラットが手慣れててすごく怖い〜。


 ハインラットに続いて部屋に入るが、想像していた地下へ続く階段がない。

 あわてて走査を掛けると、最初の部屋、床の一部が持ち上がる構造なのが分かった。

 さて、残る1人はロムロスの手下、残りの2匹はおそらく魔物だろう。

 気を引き締めて、床の隠し扉を持ち上げると、狼がうなるような声が聞こえる。


 まずった。気配を殺していても、魔物まではだませなかったか。

 しかし出入り口はここしかない、ここで迎撃すれば、と思っていると、太い鎖が石畳に落ちるような音と、扉を勢いよく開けたような音が響き、足音が遠ざかっていく。

 驚いて走査を掛けると、地下室から細い通路がどこかへ延びている。

 この方向は……嘘だろ?城壁の下を通っているぞ!?


「まずい!ハイン!手下が逃げる!すぐに追わないと!」


 ハインラットが言い終える前に、まっすぐ下に延びた梯子を滑るように降りていく。

 よし俺も、と思ったが、怖かったので光の魔法を出しゆっくり一段一段降りる。


「ラフエル様!お下がり下さい!」


 ガギンと金属音がして、そちらの方に光を向けると、二匹の大きい狼がいる。いや、これは図鑑で見たことがあるが、ナイトウルフか?

 それは図鑑で想像していた物より、凶悪な生き物だった。

 後になって考えればたいしたことは無い敵だったのだが、すぐ目の前に自分を即座に殺すことが出来る魔物が牙を剥いている。頭は冷静なつもりだったが、思わず足から力が抜け、少し腰砕けになる。

 そんな俺を見て与しやすしと思ったのかは分からないが、1匹が俺に向かって飛びかかってくる。


 ハインラットが横腹を見せたナイトウルフの胴を、分断する。


「ラフエル様!気をしっかりお持ちください!」


 ショートソードであの太い胴を一刀両断とかすごいなと、呆然と考えていたら、ハインラットに叱咤された。

 もう一匹がハインラットに爪でひっかこうとするが、剣で阻まれる。


 なんだろう、そんなハインラットを見たら恐怖が薄れ、震える手で空気を圧縮しナイトウルフを弾き飛ばす。

 恐怖で手加減せずに撃ち込んだせいか、ナイトウルフは壁に激突してそのまま動かなくなる。


「……ありがとう、ハインラット」

「問題ありません、が、お願いですので気をつけて下さい」


 立ち上がりまだ少し力の入りにくい足を拳で叩いて気合いを入れ、探知で逃げている手下をトレースする。

 城外にでて、地上に逃げているようだ。


 急いで追いかけながら走査を実行し、なだらかな坂の先にある扉を抜ける。

 そこは城外の馬小屋だった。一見扉に見えないように巧妙に隠してある。

 少し騒ぐ繋がれた馬を無視して探知と走査を同時に実行すると、300メートルほど先を走っている手下を見つける。

 標識を付けようかと思ったが、思い直して光の魔法を頭上に張り付けてやる。

 手下は自分の頭上に突如現れた光に驚いたのだろう、しばらく立ち止まり、頭の上の光に手を伸ばすが、何も出来ないと分かるとまた走り始める。


「ハイン、あれです」


 俺が指し示すと、ハインラットがすごいスピードで走り出す。

 いつも思うが、ハインラットは人間離れしている。全力で走ると短時間なら馬に並ぶような速度が出るし、今も整地されていない地面を、舐めるように走っている。

 俺はそんなハインラットには追いつけないので、普通に走ってついて行く。当然探知を掛けながら、他の危険がないか確認しながら。


 俺が息を切らせて追いつく頃には、手下はハインラットに縛られて芋虫のように転がされていた。

 こんな状況なのに、体を動かして悪態を吐きながら逃げだそうとしている根性は賞賛する。

 だが、こちらも聞きたいことがいろいろあるので、逃がすわけにはいかない。


「なんだてめぇら!どこのもんだ!」


 ハインラットが転がっている手下の首筋に膝をおろし、体重をかける。


「こっちの質問だけに答えろ」

「なんだとてめぇぐぁ!」


 ハインラットが何も言わずに肩に短剣を突き立てる。


「ちょ、ハイン殺さないでよ!?」

「心配いりません。どうすれば死ぬのかはわかっています。それにどちらにしろ、城壁に勝手に通路を作るなど、死罪は確定しています」

「ち、違う!俺じゃねぇ!」

「誰だ」

「あ、あの建物は、ヘルテージ大臣の物だ!俺は借りてただけだ!」


 お、あっさりと吐いた。これは簡単か?


「ロムロスとはどういう繋がりだ」

「し、しらねぇ」


 あれ、ヘルテージは切り捨てるくせに、ロムロスは守るんだ?


「お前が奴に雇われていることは分かっている」


 ハインラットが膝に体重を乗せると、男が苦しそうにうめく。


「か、金で雇われただけだ」

「では、それを証言お願いします」


 ハインラットが男に猿ぐつわをかませ、肩に担ぎ上げる。

 

 さて、言質は取った。あとはどう料理するか、だな。

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