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プロローグ 死んでひねらず異世界へ

 気がつくと、真っ白い空間でお腹を抱えるように横になっていた。

 そして、腹から血を流していた。なぜか痛くないが。

 傷の具合をよく見ようと、体を起こそうとするのだが、金縛りにあったようにぴくりとも動かない。

 まるで夢の中で力を入れようとしても、思うように手足が動かないときのようだ。


「あぁ、ごめん、間違えた」少女のような声。


 何が?と答えようとした。これまた口がうまく動かない。


「何がって、君はまだ死ぬ予定じゃなかったのに、あまりにも痛そうだったから、こっちに呼んじゃった」


 よくわからないが、こちらの意志は伝わるらしい。

 というか、死ぬ予定じゃ無かった?過去形ってことは俺は死んだのか? 


「肉体から魂が抜けたという意味では、死んでるわね」


 姿は見えないが、背中の方で声の主が歩いているらしい、衣擦れの音がする。

 視界の隅に一瞬声の主の姿が見えた。10代半ばぐらい、輝くようなウェーブのかかった金髪に、白磁のような肌。そして神々しいまでに美しいのだが、まだ幼さが残るかわいらしい顔。


「こら、見るんじゃありません」


 俺の視界をふさぐように手で目隠しをされる。

 とても暖かくて柔らかくていい匂いがする。あれ、ご褒美?

 その手が少し光ったと思うと、頭が少しはっきりし始める。


 俺は、そうだ神木春人26歳独身。ごく普通のブラック企業に勤めるサラリーマンだ。

 俺はゲームをしていた。俗に言うFPSと言う奴だ。

 仕事が終わった後家に帰り、コンビニで買った弁当を食べた後は、ただひたすらゲームをしていた。

 自分で言うのもなんだがかなり強く、対戦でもほぼ負け無しだった。

 その日も一人で敵を殲滅しまくっていたら、熱烈なファンからの声援(ばとう)ファンレター(ばりぞうごん)が届く。

 今日も人気者だ。


 ファンレターにお礼のメッセージを送り返していると、なんか玄関の方が少し騒がしい。

 6畳一間にユニットバスとキッチン。それだけなので、部屋の奥にいても玄関の扉がよく見えるのだ。


 すると、部屋の鍵がゆっくり回るのが見て取れた。チェーンは付けていない。

 俺はぞっとするような恐怖に捕らわれつつ、FPSに感化されて買ったエアガンを玄関に構えた瞬間、黒ずくめのいかにも特殊部隊ですと言った装備に身を包んだ男が突入してきた。


 そのときに俺が思ったことは(日本にも特殊部隊っているんだ)だった。

 そしてその男たちがとった行動は、俺の手の中にあるアサルトライフルを見て……


 そして冒頭に飛ぶ。

 撃たれた瞬間にこちらに来たらしい。


「それでね、悪いんだけど、転生先を用意したから、すぐに移動してね」


 あぁ、手をどけないで。もう少し温もりがほしい。くんくん。


「……気持ち悪いですよ?」手のひらを服にこすり付けている。


 でも、そちらのミスですよね?少しくらい言うこと聞いてくれてもいいじゃないですか。あわよくば少しなめるぐらい、いいじゃないですか。


「まぁそうなんですけど、やめてください。早くしないと私がお父さんに怒られるから」


 そんなお皿割っちゃっててへっ、みたいに処理しようとしないでくれ。


「わ、わかりました、手を舐めさせればいいんですね!」


 あ、いや、舐めたいけど、もうちょっと何か……ん?転生?


「はい、次の転生先がありますので早くしてください」


 俺、生まれ変わるんだ。何になるの?人?まさか虫とかやめてよ?


「え〜、そんなに大きくはないですが、歴史ある国の第三王子ですね」


 え、王子ってマジで?産まれた瞬間勝ち組じゃん!


「ええ、ですから早く行きましょう行きましょう」


 ……なんか、おかしい。


「な、何がですか」


 目がキョドっている。いつの間にか正面に来てるし。見ないでとは何だったのか。


 わかりました。しかし、もう少し色を付けてください。


「もう、舐めていいですから早くお願いします、なんですか、もう」


 なんか可愛いけど、とりあえず、強くてニューゲームでお願いします。


「え、可愛いですか、そうですか。そうでしょうね、えへへ」


 ええ、できればお嫁さんにしたいぐらいです。だから強くてニューゲームを。


「わかりましたよ〜。しかたないですねぇ」


 ニヤニヤしながら少女が手をかざすと、男の体の輪郭がぼやけ始め、暖かい光に集約されていく。


「では、送りますよ〜」


 いまいち緊張感がないのは不安だが、されるがままにする。


「あ、結婚は15歳になってからですからね。それまでは自重してくださいね」


 え、そっち!?いや、強くてニューゲームは


「当然夫となるにはかっこ良くないと困るので、その辺も大丈夫ですよ〜」


 あぁ、そう、それはよか……


 意識が光に吸い込まれていく。

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