9 料理
「いいかー、昨日のシチューに使った元のソースはこれだ。クルカの実をメインにキラの実と調合してある。クルカの実は大抵のソースの元だ。クルカの実だけでも美味いソースができるがほかの実でコクなど微妙な差を出すって感じだな」
俺は今調理場で食事当番に料理を教わっている。食事当番はラカというらしい。
「じゃあクルカの実さえ手に入れれば料理が作れるといううことか」
「ほかにもメインに使える実があるが調合が難しくてな。作れる人は少ないな」
もしかしたら地球の料理に近い味のソースも作れるかもしれないということか。試し続ければそのうち完成するような気もするが。
「で、それに水を足せばシチューになるのか?」
「それだけでもシチューになるが水を入れる前に材料を入れろ。ソースを熱した後に入れるんだ。そうすればソースのうまみを吸うからな。最後に水を入れて煮立てるんだ」
地球とは真逆の作り方だな。地球はどこの国でも大抵水が最後ってわけじゃないからな。日本はソースとか味付けが最後のことが多かったし。
「意外と俺の知っている料理と似てるな。モンスターの肉の調理方法を教えてほしい。臭みとかならまだいいが毒を持っているモンスターもいるだろう?」
「基本的に毒は生成されるのが内臓だ。自分の肉も毒に触れるとダメになる奴が多いからな。爪や牙には管が通っていることが多い。それを破裂させないように取り除けば肉が食べられる」
「内臓と管をきれいに取れれば血も回収できそうだな。戦いの道具にもなるか?」
毒の効きやすさに差はあるだろうが動きが鈍くなるくらいはするはずだ。武器に塗るだけで付与効果が出るだろう。
「毒は大抵のモンスターに効くぞ。毒持ちにはほぼ効果はないが。見た目で毒持ちか判断できないモンスターもいるから使うなら気をつけろよ」
「ああ、気を付けるよ」
俺には今までのゲーム経験から毒を持っていそうなモンスターはだいたいわかるんだけどな。オオカミとか見た目持ってなさそうなやつが牙に毒持っていたりするから厄介なんだがな。
「それでだ、なにか焼くときには材料を入れる前にこのぺルカの実をフライパンに絞るんだ。風味もつくから先にだぞ」
地球の油の役割だな。匂いはオリーブオイルと一番近いな。
「先に入れるんだな。ぺルカの実以外にも使えるものはあるか?」
「いや、ぺルカの実の果汁の水と交わらないという特性を生かした調理法だからほかでは使えないな」
これは本格的に油だな。たくさん使えば揚げ物とかできそうだな。
「じゃあ見といてやるからハル、なんか作ってみろ」
「俺、今日は教わりに来ただけなんだが。急に作れとか……、はあ、わかったよ」
ちょっと楽できるとか思ってんだろ。お前の仕事だろ。目を輝かせるな。
結局、朝食は俺が作る羽目になった。
「おはよう、ハル。ラカに教えてもらうと分かりやすかったでしょ」
「うん、まあわかりやすかったけどね……」
まだ朝で、しかも勇者の剣を取りに行く日なのにこの疲労はなんなんだろうか。ちょっと、いやかなりおかしい。盛り付けと配膳しか手伝ってくれなかった。
「今日の朝食はパンとサラダとスープだ。戦闘で動くことを考えて重くない食事になっている」
ちなみにこの言葉はラカではなく俺が考えた。栄養とか運動とか一切考えてないだろうからな。この世界の住民にはそれが普通なのかもしれないが俺には無理だ。俺は学校で午前に体育が入っているときにはヨーグルトなどを朝食として食べる。
「なんか今日はよくわからないけど考えられた食事なのね。スープもおいしい」
それは俺の作ったスープです、レオナさん。俺好みで薄味に作りました。
俺は終始無言で食事を進めた。周りでもスープは好評だったようだ。よかったです。
俺は絶対に食事後は呼ばれてもキッチンにはいかない。片付けくらいやらせてやる。俺が作ったことも言わない。料理マシーンになってたまるか。
「俺、もう食べ終わったから先に部屋に戻るよ。出発準備が始まったら呼んでくれ」
「わかったわ」
レオナがそう言うのを聞いてからラカに見つからないうちに逃走した。