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3 剣の在り処は



 俺に紹介したいやつって、まあ大方パティエスの誰かか。ラティオは後ろに控えていたやつと少し話してから誰かを呼びに行かせていたが話の内容は一切聞こえてこなかった。距離的には絶対に話が聞こえるはずだから何か特別な魔法でも使っているのかもしれない。




自分たちが勝手に呼び出しておいて信用していないのか、聞かれたらまずい内容なのか。まあどちらでもいい。俺はどうせやるなら助けなんて借りないし、誰かを信用したりもしない。見方だと思ってたら敵だったとかよくあることだ。




 だが、そんな魔法が存在すると分かった以上は俺に魔法が使えるのか確かめないといけないな。使えればそれでよし、使えなければ何かしら対策を取らないといけない。今使われた魔法は音声を消すだけで見た目に何か変わりはないから口が動いているのが見えた。発音する口の形を見極められたら読唇術が使えそうだ。その辺はただのRPGではなくて助かったというべきか。




 俺が思考を巡らせている間にラティオが紹介したいやつとやらが来たらしい。紫というか青というか紺というかなんとも言えない色の丈の短いローブを着、フードを深くかぶっている。左腰には剣をつっていていかにも剣士という感じだ。




「ハル、彼女が紹介したかったレオナじゃ。勇者の剣を手に入れるまで、あるいはもっと長くハルの身の回りの世話をする。では儂は準備があるから失礼する」




 ラティオはその場に俺とその彼女を残して離れていく。




 え……、「彼女」?




「は? 女なのか!」




 てっきり男かと思っていた。女で剣士をやるキャラはいくらでもいるが、もう少しおしゃれに気を使うぞ。




「私はレオナ。こう見えても女よ。魔法も使えるけど剣術のほうが得意なの。勇者の剣を使うための指南役も務めるわ」




 なるほど。やっぱりゲームとは違って装備したらすぐ使いこなせるとかいうのはなしか。




まあ直接攻撃ができる剣士を近くに置いて監視して邪魔になるようなら斬るってことか。剣を教えてくれるってことなら使える間は使うか。俺だって一人で生きていける知識と力を手に入れたら俺だって捨て置いてやる。ただ、今は隠さないとな。




「レオナ、悪かった。剣の指導よろしく頼むよ。俺は剣なんて握ったことないからな」




「ええ、剣なんか握ったこともないって体つきしてるわよ。私が指導するのだから勇者の剣を手に入れるまでには問題なく剣を振れるようにしてもらうわ」




 こいつに任せておけば安心か。とりあえずレオナを倒せるようになるのが当面の目標だな。魔法も少しといっても魔法を本職にする一族だ。一族内では全然でも普通の人間以上の可能性が高い。




「剣を手に入れるまでってお前らパティエスが保管してるんじゃないのかよ」




 勇者の剣っていうくらいだから特定の一族が保管しているものだと思っていた。




「私たちは保管してはいないけどある場所は知っているわ。実際に見た人もいる。だけどどうしても持ってこられなかったみたい。だから勇者であるあなたを連れて再挑戦よ」




 勇者にしか持てない剣、か。ありがちな設定だな。勇者の剣を手に入れる時までに自在に剣を振れるようになって隙を見計らって出て行くことにしよう、できれば。




「で、その剣はどこにあるんだよ。手に入れに行くまでに剣の鍛錬もしたいんだが」




「もちろん、ダンジョンの中。すごい剣がその辺に落ちてるわけないでしょう?」




 そりゃそうなのだが。RPGに例えるならおれのレベルは現在1、それか0だ。間違いなく死ぬ。ダンジョンとかはたいていレべリングに困って経験値稼ぎ、もしくはレアアイテム収集のために行く場所だ。それかストーリー上必須の場所か。ただ、ゲーム始まってすぐに行く場所でないことは間違いない。これが本物のゲームとの違いか。俺にこのストーリーをやる価値があるかの試練なのか。




「ちなみにダンジョンにはどんなモンスターが出るんだ?」




 俺的にはスライム的立ち位置のやつがいい。せめてゴブリンとか……。




「ああ、そのダンジョンは、アンデッドが多いわね」




 はい? アンデッド? ゾンビとかそういうやつだろ? きもい。てかそんなのに守られてる剣って本当に勇者の剣なのか……、すごく不安だ。……っていうか、




「アンデッドに剣は通用するのか? 俺が知ってるやつは剣とかの打撃系よりも魔法とかの攻撃が聞くんだが」




「もちろんそうよ。アンデッドに剣はほぼ効果はないわ。だから魔法が得意な私たちパティエスの一族がダンジョンの奥まで行けるの。アンデッド以外のモンスターも出るからそれを倒すのが私たちの役目であって鍛錬の場。ちなみにアンデッドはこれまでの勇者の霊魂だといわれているわ」




 はい? どんだけ生存率低いんだよ。というかそれ呼び出された勇者が死ぬたびにめんどくさいダンジョンになってんじゃん。




「じゃあ今までで勇者の剣手に入れた人とかいないってことかよ」




「それは違うわ。手に入れることが出来た勇者は何人かいる。でもあなたが呼ばれたということは今までの勇者は死んでいる。これはわかる?」




 そりゃあそうだろうな。一つの世界に勇者は一人で良い。




「ああ、勇者がいなくなったから違うのを呼ぶのが普通だろうからな」




「ここからが問題なんだけど、一度持ち出した勇者の剣も持ち主が死んだら勝手にダンジョンの元の場所に戻ってしまうのよ。だから勇者の剣は今まで何度も取りに行っているわ。

国王様に命じられて私たちが毎回勇者を剣の元まで案内することがパティエスの仕事といっても過言ではなくなってしまっているわ」




 おい、勇者何人殺してんだよ。やっぱり呼び出した勇者いきなり連れて行くからだろ。




「あら、もうみんなの準備が整ったみたいよ。早く出発しましょう」




 おいっ! お前らの頭には反省とか過去を生かすとかいう言葉はないのかよ!


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