1 逃げたら知らない景色
「今日の夕飯は何にしようか」
一人しかいないアパートの一室で一人でつぶやく俺、春川聖。傍から見れば気持ち悪いことこの上ないが、気にする人間はいない。
夏休みで学校がない中、親は旅行。一人暮らしと化している部屋で悠々と暮らしている。絶賛夕飯の献立決め中だ。冷蔵庫の中身はほぼゼロ。明日にでも餓死するかもしれない。両親の旅行についていけばよかったのだが、俺は一般世間でいうバカで夏期講座と称した補習を受けに学校へ登校しているはずなのだ。だが軽く不良の気も入り(認めてはいないが)、行っても意味がないと分かるのか一度も行っていない。
今はパソコンに向かっている。さっきから何度が電話が鳴っている。一度もとっていないが。
また電話が鳴る。今日だけで6回目の電話だがとらない。
「あー……、ゲームに集中しすぎるのも直さないとな。死にたくないし」
買い物に出かけようとパソコンの前から立ち上がる。ちなみに部屋にあるものはパソコン、テレビ、ゲームのハード、のほかにはベッドくらいしか持ち込んでいない。かなりのゲーマーである。
背を向けている電話からは留守電が流れる。
『おい、春川! お前毎日毎日サボリやがって。明日じゃない、今日来い。お前の家から今から向かってもあと1時間は受けられる。さっさと来い』
ほぼ毎日言葉は違うがニュアンスが同じ言葉が流れている。
「だーれが補習なんて行くかよ。ばっかじゃねーの」
そんなこと言ったら「バカはお前だ」って言われて終わる。
机の上にほかられている財布を手に取り玄関へ向かう。そんな時、
――接続されました
どこからか変な音がする。つけっぱなしのゲームか。靴を履き、玄関のドアをあける。
そこに広がる光景はいつものアパートから見える住宅街ではなかった。
建物は一軒もない。見渡す限りの草原。上には雲一つない青い空。空気も澄んでいる。
「……は?」
俺は乾いた声しか出なかった。開いた口がふさがらない。夢かと思い目をこすってみても風景は変わらず、後ろを見ても自分が出てきたはずのドアもない。
後ろに気配を感じて振り返るとどう考えても日本人ではありえない服装の人間がいた。ジジィに始まりババァもいる。若いやつまでいるが黒髪黒目のやつはいない。
「とりあえず……、きゃ、きゃんゆー、すぴーく、じゃぱにーず?」
話せる英語はそれだけだ。「ノー」と返ってくれば即座に逃げる。英語というのか不安を覚えるが。