表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
双宮機動ラグリール  作者:
プロローグ
1/4

プロローグ

 うっすら目を開けると、目の前には千切れた首があった。首から下は、ない。

 そしてそれは、かつて自分の友人だったものに他ならなかった。

 首すじからあふれた血液が辺り一面に池を作って、僕の皮膚をひたす。生温い。この感覚は、確かに自分が生きていて、そして目の前の首が死んだばかりだということを証明していた。


 体は、動く。全身が痛いが、意識ははっきりしている。僕はとりあえず大丈夫、らしい。

「こいつもダメなの!?」

 遠くで声がした。女の声だ。

「これも死んでる」

 視界に映った女は死体を軽々と持ち上げると、まるでゴミのように地面に放っていた。腕のないもの、胴のないもの。そして、首なし死体さえも。女は拾っては捨てを繰り返し、死体の山を築いていく。

「どいつもこいつも役立たずなんだから!」

 苛立ちを増しながら、女はどんどん近づいてくる。

 ……でかい。

 170……もしかしたら、180近くあるのかもしれない。

「あら」

 そのとき、パチリと女と目が合った。ヤバい、と思ったけれど、今さら死んだふりもできない。女は僕の首根っこを捕まえ、持ち上げるとにこりと笑う。

「よかった。生き残ってる人がいて」

「…………」

 あまりの恐怖に、声が出ない。

「私はラグリールのパイロット。わかる?」

 僕はこくこくとうなずいた。

 ラグリールとは、確か最新型の戦闘機だったはず。人型だったか、四足歩行だったか忘れてしまったけど、なんかニュースでやっていたのをぼんやり覚えている。

「今からあなたには、サブパイロットとしてラグリールに乗ってもらうわ」

「えええ!?」

 大声を上げた僕は、勢いのままに尻餅をつく。

「僕、操縦も何もしたことないんですけど。ほら、ただの一般市民だし」

「そんなことわかってるわよ」

 彼女の声は冷ややかだ。

「でも、仕方がないじゃない。ラグリールは二人いて初めて起動するんだから。そして、ここで生きてるのは私とあんただけ。意味、わかるわよね?」

「あの、元々乗っていた人は……?」

「死んだわ」

 何の感情もなく、彼女は言った。

「それに、ラグリールが動かなきゃ、どの道ここで死ぬことになるわよ」

 そう言って彼女は、上空を指差す。

 上空にうごめく、無数の“ムシ”――と呼ばれる、未確認飛行生物。羽のようなものと肢のようなものを持つそれは、図鑑で見た地球産の昆虫によく似ている。それよりはずっと、大きいそうだけど。

「選択肢はないの」

「…………」

 僕よりはるかに高い身長、見下すように刺さるような視線を浴びせられれば、僕に抗う術はもうない。

「ついてきなさい」

 そう言って、彼女はくるりと背を向ける。

「そうね。先に、一つだけ忠告しておくわ」


「死んだら殺す」

  

 どっちにしたって、僕が死ぬっていうことだけはわかった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ