第六話 そして二人は岐路に立ち④
なんかグダグダな感じがします………。
面白くなかったら、ゴメンナサイ(涙)。
「なぜレヴィナスではないのですか!?」
女性の金切り声が、アルジャーク帝国皇帝の執務室に響いた。
「わらわは確かにあの子を遠征軍の総司令官に、と申し上げたはず!」
なのになぜあの下賎な女の子がその役職につくのか、と皇后は執務机に手をつき唾を撒き散らしながら夫たる皇帝ベルトロワに迫った。
「そのレヴィナスがクロノワを自分の後釜に、と推したのだ」
「そのような言い訳を聞きたいのではありません!」
ベルトロワが非公式にレヴィナスの意思確認を行い、その席でレヴィナスが遠征軍の総司令官としてクロノワを推したことは、もはや公然の秘密としてささやかれている。これはまったくの事実であるし、もとより知られて困ることでもないため、ベルトロワとしても情報統制をするつもりなどない。それどころかこの噂によってベルトロワの器の大きさとレヴィナスの見識の高さについてさらに評価が上がっており、皇帝も皇太子も大いに面目をほどこしたといっていい。
面白くないのは、レヴィナスを推した皇后だけである。
「レヴィナスを総司令官に、と勅命をお出しになればよいではありませぬか!」
アルジャーク帝国において皇帝の権威は絶対である。確かに勅命という鶴の一声が下れば、たとえ今からであってもレヴィナスを遠征軍総司令官に据えることは可能だ。可能だがベルトロワにその意思は、当然のことながら、ない。
「悪しき前例を残すわけにはいかぬ。これはレヴィナスも言ったことだぞ」
アルジャークの法は「結婚して一年以内のものは兵役を免除される」と定めている。この法は帝室にも適用され、皇太子たるレヴィナスはむしろ率先してこの法を遵守しなければならない。
にもかかわらずここで皇帝の勅命により皇太子を遠征軍総司令官にしてしまえば、「皇帝が皇太子の免除の権利を放棄させた」という前例が残ることになる。そんな前例を残しておけば、後の時代に皇帝の強権により法が有名無実と化してしまうかもしれない。
「皇帝と皇太子が法を守らずして誰が法を守るのか」
この国は法によって治められているのだ。皇帝にのみ許された“超法規的処置”という伝家の宝刀はそうたやすく抜いてよいものではない。国を預かる者は法を揺るがすようなことをしてはならないのである。
(だからこそ「法を過去にさかのぼって適用する」ことは禁じ手なのだ)
一瞬だけ、ベルトロワの思考がオムージュ領に、そしてレヴィナスに向く。だが彼はすぐに目の前の問題に意識を戻した。
さらに喚きたてる皇后をなんとかなだめすかし、執務室からお引取りを願う。台風が去った執務室で、ベルトロワは一人苦笑を漏らすのであった。
執務室を後にした皇后は、苦々しく苛立ちながら廊下を歩いていた。まったく、気に入らない。なぜあの下賎な女の子なのか。
(まさか陛下はレヴィナスではなくクロノワを………?)
皇后のうちに生まれた疑念の種は、すぐさま彼女の心のうちに根を下ろし芽を出した。そして彼女はそこに推測の水を注ぐ。
(彼奴に箔を付けるため、と考えれば確かに筋が………)
考えれば考えるほどに、彼女の苦々しさと苛立ちと腹立ちは強くなっていく。そしてそこにはいつの間にか焦燥が混じり始めていた。
「いいでしょう。ならばこちらにも考えがあります」
ポツリと呟く。その言葉からは狂気の響きがした。
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苦々しさと苛立ちと腹立ちと焦燥の具合ではこちらも負けてはいない。
場所はカレナリア王国王都ベネティアナ、人物の名はエルネタード・カレナリア。カレナリア王国の国王である。彼の精神状態が劣悪になった原因は、ひとえに一つの噂のゆえである。
曰く「アルジャーク帝国が近くカレナリアに出兵するらしい」
この噂はここ一ヶ月ほどで国全体に広がり、今巷はこの話題で持ちきりであった。無論、悪い意味で。
昨年、アルジャーク帝国はオムージュとモントルムを完全に併合し、その結果ここカレナリアはアルジャークと国境を接することになった。アルジャークの版図は二二〇州でカレナリア六三州の実に三倍以上である。しかもその兵は精強をもって大陸中にその名を知られている。
突然強大な力を持つ隣国が誕生し、カレナリア王宮中は慌てに慌てた。主だったものを集めて対応を協議してみたところで、明確な方針は出てこない。結局「帝都ケーヒンスブルグに大使館を置き情報を収集する」ということだけが決り、軍備の増強や国境警備の強化などは見送られた。
一見して温い対応だが、ある意味では仕方がない。カレナリアはアルジャーク兵の精強さを聞いてはいても実際に見たことがあるわけではない。それに彼らにとってアルジャークの遠征はあの大併合をもって終わったはずであったのだから。
閑話休題。例の噂である。
カレナリア政府は巷に噂が広がる前から同様の内容の報告を大使館から受けている。ただしその内容は、
「そういう話もあるらしい」
といった程度のもので、いわば憶測の混じった噂と変わらない。この時点でのカレナリア政府の警戒度は低かった。
それが最近になって大使館からの報告に現実味が出てきた。
曰く「遠征軍総司令官はモントルム総督のクロノワ・アルジャークらしい」
曰く「アールヴェルツェ・ハーストレイト将軍が補佐につくらしい」
曰く「兵の規模は二十万~三十万らしい」
加えて「これは複数の筋からの信頼できる情報である」との旨が、報告書には書き添えられていた。
巷に広がっているのがただの噂であれば、エルネタードの精神も劣悪な状態に陥ることはなかったであろう。しかしその噂はカレナリア政府がつかんでいる信頼できる情報と矛盾せず、そしてその情報が巷に普通に出回っているということは、すなわち宣戦布告が近いことを予感させた。
「どう考える?」
キリキリと痛み出した胃に顔をしかめながら、エルネタードは目の前に居並ぶカレナリア王国の主だった者たちにそう切り出した。
「恐れながら」
そういって一歩前に出たのは、カレナリア王国の将軍の一人、イグナーツ・プラダニトであった。
「アルジャークが宣戦布告をしてくるのは、もはや時間の問題であると考えます」
大使館が比較的容易に情報をつかめたことや噂が巷に広がっている理由は、アルジャークが意図的に情報を流しているからと考えるべきであり、その目的は当方を混乱させ戦う前から戦意を挫くことであると思われる。
イグナーツ将軍はそう分析してみせ、そしてその分析は大筋において正しかった。確かにアルジャークは遠征に関する情報を意図的に流し、カレナリアの戦意を挫くことを意図していた。
ただアルジャークにはもう一つの意図がある。それは「カレナリアを攻める」と声高に宣言してみせることで、もう一つの目的であるテムサニス王国への遠征をギリギリまで悟られないようにすることであった。
イグナーツの言葉にその場がざわめいた。誰もが「まさか」とは思いつつも、否定できるだけの明確な論を持っていなかった。
「静かにせよ」
エルネタードの言葉で静寂が戻る。彼はそのまま視線をイグナーツに向けた。
「してイグナーツよ。そなたはどのような対応を取るべきであると考える?」
「一戦を避けることは叶わぬでしょう。なれば早急に兵を集め準備を整えるべきです」
武人らしくイグナーツは主戦論を唱えた。敵が武力をもって侵略してくるというのであれば武力をもって対抗するほかない。武官であれば誰もが理解を示すであろう思想を、イグナーツもまた持っていた。
「少々、お待ちください」
しかしこの世は武官だけで構成されているわけではない。その中には無論、イグナーツの考えに異議を唱えるものも存在するのだ。
「正式な宣戦布告もないのに、こちらが戦の準備をすればアルジャークを無用に刺激することにはなるまいか」
「その通りだ。それにこちらから動けば向こうに戦争の大義名分を与えることになる」
「そもそも戦争回避のための外交努力を行わないまま、ただ兵を整えるのは横暴というものでしょう」
いわゆる文官勢力というヤツが、口々に反論を述べていく。彼らは別に武官たちに手柄を立てさせたくない、と思っているわけではない。たった一つの輝かしい武功が国家百年の計に勝るといわんばかりの風潮は、確かに彼らにとって面白いものではない。しかし、彼らは「戦争をすればお金が掛かり労働力が減りモノが壊れる」という歴然たる事実を知っているから反対するのである。
ただイグナーツからすればいかにも迂遠である。すでに剣を研ぎ矢を揃えている敵を口先八丁で丸め込めるならば、この世に戦などありはしない。
「では方々にお聞きするが、この事態に際しどのような対応を取るべきと考えられる?」
イグナーツと同じ武官の一人が、そういって文官たちの方に目を向けた。言葉は丁寧だが、音には若干の侮りが含まれている。
「当面は大使館を通じ戦争回避のための外交努力を行うべきでしょう。軍を動かすのは、実際に宣戦布告がなされてからでも遅くはないはず」
侮りの口調にムッとした表情をしながらも、若い文官は滑らかにそう答えた。この場にいる以上は優秀なのだろうが、心のうちを顔に出す辺り、イグナーツから見てもまだまだ若い。
「それでは遅いのですよ。軍というのは命令を出してすぐに動けるのはごく一部です」
例えば弓兵一万人に矢を五十本ずつ持たせれば、それだけで矢は五十万本必要になる。これを一日分として考え一週間戦うとすれば、さらに七倍の三五〇万本の矢が必要になる。装備はこれだけではないし、当然の話として食料が必要になる。常に臨戦態勢ですぐに動ける部隊などほんの一部である。
カレナリアですぐに動かせる常備軍はおおよそ十万といったところであろうか。しかしそれにしたって国中全てあわせて、である。そもそも集結させること自体に時間がかかる。なによりも二十万とも三十万とも予測されるアルジャーク軍には、これだけでは足りないのが目に見えている。
要するに軍を動かすには、準備の段階で時間と金が必要なのだ。今回のように大軍を動かす必要がある場合は特にそうだ。
「それはアルジャーク軍とて同じであろう?」
「左様。ですからアルジャーク軍と同じく、今このときより準備を始めなければなりません」
イグナーツが穏やかにそう切り返すと、文官は言葉に詰まった。その文官は、
「アルジャークは宣戦布告をしてから準備をするはずで、ならばこちらもそれにあわせれば問題はない」
と考えていたが、イグナーツは
「アルジャークがこちらの都合に合わせてくれる保証はなく、宣戦布告がなされた時にはすでに準備が完了していると考えるべきだ」
と主張したのである。
「加えて遠征軍の総司令官はクロノワ・アルジャークであると聞く。ならば宣戦布告と同時に国境が破られることも有り得るかと」
ここでイグナーツが言う「宣戦布告と同時に国境を破る」という行為は、「国境付近に軍を待機させておき、あらかじめ決めておいた宣戦布告の時間に行動を開始する」ということではない。この場合であれば、カレナリアは事前に敵軍の襲来を高確率で予測できる。なにしろ国境付近に大軍が集結している。それを察知するのは比較的容易であろう。無論、対処できるかは別問題であるが。
イグナーツが言っているのは「アルジャーク軍が不意をうって領内に侵入する可能性がある」ということである。
イグナーツの言葉に会場がざわめいた。エルネタード国王がそれを制し、彼に説明を求める。
「前回クロノワは騎馬隊による先行を決行し、それにより大きな功績を挙げました」
クロノワがどのようにしてモントルムを征服したかは、無論イグナーツも聞き及んでいる。騎馬隊の機動力を生かした先行作戦は、あの場合にしか使えないような奇策だが確かに上手くいった。ましてモントルム領とカレナリアの国境には、防波堤となるべき砦はないのだから。前回の成功に気を良くしたクロノワが、しかるべき改良を加え今回もその作戦を用いることは十分に考えられる。
「宣戦布告をされてから準備を整えるなどと悠長なことを言っていては、戦わずして降伏しなければならなくなるでしょう」
イグナーツはそう締めくくった。準備は早ければ早いほど良い。彼はそう主張したのだ。
「だが、将軍の論は全て憶測であろう………?」
「左様、全ては憶測。しかし憶測なくして国家の展望を描けないのもまた事実」
未来のことを語るときに大なり小なり憶測が混じるのは仕方がない。重要なのはその憶測が過去の事実に基づいているか、ということだ。基づいていればそれは“予測”となり、基づいていなければ“妄想”と呼ばれるのだ。さらにクロノワの名に付随する「策略家」としてのイメージがその“予測”の確率を上げていく。
会場が沈黙した。弁論は出尽くしたようである。あとはエルネタード・カレナリア国王の采配を仰ぐのみである。
「大使館を通じ戦争回避のための努力を続けよ。軍部はいつ宣戦布告がなされても良いように準備を整えるように」
ただし間違っても国境侵犯などしないように、とエルネタードは厳重に注意した。それではアルジャークに宣戦布告のための正当な理由をくれてやるようなものだ。
こうして、落ち着くべき結論に落ち着いて御前会議は終わったのであった。
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来るべきアルジャークとの決戦に備え、軍の準備を任されたイグナーツの基本姿勢は実に明快であった。
数で敵を上回ること。これこそが戦略において最も重要であると、イグナーツは考えている。
古来より曰く「大軍に兵法なし」
敵を上回るだけの戦力を整え、遊軍をつくることなく真正面からぶつかる。一見すれば地味であるが、それだけに堅実で勝算も高いといえる。ぶつかった後は戦術レベルの世界になるが、国家という組織であれば一定水準以上の指揮官をそろえていることを期待できる。実際イグナーツの同僚たちは優れた武人だ。
イグナーツの基本姿勢に則って、カレナリアの軍部は二五万の兵を集めた。いや、この時点では集めるメドを立てた。なにしろ本来畑違いである海兵を陸に上げてまで数をそろえたというのだから凄まじい。
イグナーツの本音を言えばもっと集めたかった。だがしかし理想を実現するには様々な障害が立ち塞がるものだ。資金不足とか資金不足とか資金不足とか。それでも二五万集めるメドが立ったのだ。御の字というべきであろう。
さて、兵の数についてはメドが立った。すでに指示は出してある。後は部下が上手くやるだろう。
ちょうどそんなときであった。イグナーツのもとにとある報告がもたらされたのは。
「国境付近でアルジャークの斥候と思しき目撃証言が多数、か………」
国境侵犯だの不法入国だのはこの際置いておこう。そちらは大使館にでも任せて置けばよい。問いただしてみたところでしらばっくれらるのがオチだろうが。
提出された報告書を読み進めていくと、目撃証言は国境線全体から上がっている。これだけでもかなりの数が組織的に動いていることが予測された。
「果たしてその目的は………?」
普通に考えるならば、開戦を控えての情報収集だろう。詳しい地形などの地理的な情報は多いほどいい。だがそれにしても探る範囲が広すぎる。
「行軍の基本的なルートはまだ決めていない、ということか………?」
イグナーツはそう考え、しかし自分の考えに確信を抱けないでいた。
今回アルジャークが動かすのは二十万とも三十万とも言われる大軍である。その大軍を動かすには、当然街道を、踏み固められた道を用いるのが最も良い。主要な街道はすでに地図に記載されており、それはアルジャークも持っている。なればこそ国境線全体という探査範囲は腑に落ちないものがある。
報告書によると、斥候のほとんどは馬に乗った騎兵であるという。もとより騎兵はその機動力を生かし、斥候などの情報収集にも活躍する。ゆえにこれ自体はおかしいことではない。
「騎兵、か」
イグナーツはポツリと呟き、報告書に目を走らせていく。今のところ衝突した事例や流血沙汰になったことはないようだ。アルジャーク側も恐らく気をつけているのだろう。そして報告書の最後には、次のような噂がまことしやかに囁かれている、という付記が載っていた。
曰く「クロノワ・アルジャークはモントルム遠征で騎馬隊を先行させ大きな戦功を上げた。今回もそうするに違いない」
その噂話はイグナーツの予測とピタリと一致していた。さらに報告書の内容とあわせ、彼の頭の中で思考の連鎖反応が起こった。
「国境付近に出没しているアルジャークの斥候は、先行する騎馬隊の侵入ルートを下見していたのか………!?」
そう考えれば、筋は通る。クロノワの名にちらつく策略家としての影が、イグナーツの中で肥大化していく。
思いもよらぬ場所から騎馬隊を侵入させこちらをかく乱する。あるいは適当な場所に戦線を張らせて本隊を導きいれる。領内に潜んでおいてこちらの補給線を脅かす。そんなシナリオがイグナーツの頭に浮かんでは消えていく。
「いずれにせよ………」
いずれにせよ、早い段階でクロノワ・アルジャークの思惑に気づけたのは僥倖であった。要は先行してくるであろう騎馬隊が好き勝手に動くのを防げばよいのだ。それだけでアルジャークの、いやクロノワの戦略に狂いが生じる。
「そのためには………」
そのためには、どうすればよいか。イグナーツは「対先行騎馬隊作戦」を急速に練り始めていった。
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大陸暦一五六四年七月の半ば、ついにアルジャーク帝国はカレナリア王国に宣戦布告した。その口上は歴史書を紐解けば簡単に知ることができる。
曰く「カレナリア王国は軍備を整え我がアルジャーク帝国を侵略せんしている。我が帝国は国土と臣民の安寧を守るためカレナリア王国へ出兵するものなり」
明らかな言いがかりであるが、そもそも宣戦布告などというものはされる側にしてみれば、どのような内容であろうとも言いがかりであろう。特に今回のカレナリアのように国力で劣っている場合は。
宣戦布告の報を受け、イグナーツを始めとするカレナリア軍部はすぐさま動いた。彼らの想定としては、宣戦布告からそう間を置くことなくアルジャークの騎馬隊が先行してカレナリア領内に侵入してくることになっている。それに対処するためには時が要であり、可能な限り速やかに部隊を展開する必要がある。
イグナーツはかき集めた二五万の兵をまず三つの部隊に分けた。右翼、本陣、左翼である。次に本陣を街道上に、右翼をその右前方、左翼を左前方に配置した。両翼と本陣の間の距離は、馬を走らせて半日といったところであろうか。地図上でその配置を確認すれば国境に底辺を向けた二等辺三角形を描く。それぞれの戦力は両翼がそれぞれ六万五〇〇〇、本陣十二万である。各部隊には索敵を密にし、報告を欠かさないように厳命してある。
仮にアルジャーク騎馬隊が街道以外の場所から国境を破っても、これにより早期に発見できるだろう。街道を駆け上ってくるならば本隊に突き当たる。
(これでアルジャークの騎馬隊の動きを制限できるはずだ…………)
イグナーツは頷いた。そしてできることならば早期に敵騎馬隊を補足し、本隊と合流する前に叩いてしまいたい。そうすればクロノワの戦略を多少なりとも狂わせることができるし、また敵の絶対数を減らすこともできる。なにより緒戦に大勝できれば兵の士気は大きく上がるだろう。
「いつでも来るがよい」
イグナーツは腕を組み、まだ見ぬアルジャークの騎兵隊に鋭い眼光を向けるのであった。