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不在
ヤクザ達に追い掛けられた、あの日から一週間以上が経った。
「───…。」
ベランダで煙草を咥え、何とはなしに隣のベランダへ視線を向ける。だが、ここ数日、人の気配はなかった。
スマホを手に取り、無意味だと分かっていながら画面を確認する。
通知は何もない。ほぼ毎日のように、どうでもいい内容のメッセージを送りつけてきていた男が、沈黙したままだ。
喧しい男、面倒な男が不在なだけだ。そう思おうとするのに、どうにも落ち着かない。
隣人の動向を気にする程、俺は暇だっただろうか。
自嘲気味に息を吐き、煙を空に逃がす。
それでも視線は、無意識のうちに隣へと戻っていた。二条が仕事で何日か姿を見せない事は、今までもあった。
それなのに、今回はやけに静かだ。
隣人だと知る前は、顔を合わせた事すらなく、どんな人間が住んでいるのかも知らなかった。知ってからも、特別気に留める理由などなかった筈だ。
──それなのに。
ここ最近、こうして隣を意識してしまっている。
その事実を、煙と一緒に誤魔化す事は出来なかった。




