日常
昼下がり。 吾妻と二条は、ふらりと雑貨屋の前で立ち止まった。
「見てよ、これ。スプーンが動く時計ってどういうこと」
二条は小さな置き時計を手に取り、サングラス越しに目を輝かせる。
吾妻は軽く苦笑した。
「……お前は本当に、何でも面白がるな」
店を出ると、今度はアクセサリーショップの前で足を止める二条。 棚の上の小さなピアスを指を差した。「これ、龍臣君に似合うと思うんだよね」
吾妻は眉をひそめて、少し距離を取る。「……俺に?」
二条は頷きながら、自分の手元にあるシルバーのフープピアスも見せる。
「うん、俺のと同じ位控えめでいいと思うんだ」
吾妻は無言で品定めをしている二条を眺め、少しだけ笑った。二条は決して口には出さないが、先日の騒動で吾妻を危険に巻き込んだ事へのささやかな「お詫び」の意味も込めて、二つを一緒に購入した。
会計を済ませ、二条はピアスの小箱を手にしてにんまりしている。
吾妻はサングラスを通してその様子を見て、静かに言った。
「……面倒臭い奴だな」
「面倒臭いのが、俺のいいところでしょ?」
二条は得意げに笑い、二人はそのまま歩き出した。
吾妻に背後を確認する癖が残ってしまっていた。
店先の風に揺れる木の葉が、二人の距離感を柔らかく包む。 重い事件の余韻はまだ消えないけれど、今日だけは──唯、隣で笑っている相手と、日常を共有するひとときだった。




