表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
嘘と煙の仮面舞踏会  作者: 男鹿七海
16/31

告白

 午後の日差しは、少しだけ冬の冷たさを帯びていた。吾妻はスーパーの外にある、喫煙所の片隅で煙草を吸っていた。火を点けると、白い煙が室内にゆっくりと立ち上り、冷たい冬の空気に溶けていく。

 出勤までの自由時間。周囲のざわめきはドア越しに聞こえるだけで、喫煙所内には静けさだけがあった。

 そのとき、ドアの開く音がした。

「……あ、龍臣君。偶然だね」

 振り向くと、二条が立っていた。吾妻は答えず、ゆっくりと煙を吐き出す。

 二条も自分の煙草に火を点け、煙を吐きながら小さな箱を差し出す。

「はい、誕生日プレゼント」

 吾妻は目を見開き、箱を受け取る。

「……何で知ってんだ」

 二条は、口元に微かな笑みを浮かべる。

「昨日、お姉様方が、玖礼の誕生日だって言ってるの聞こえて」

 小さな沈黙の後、吾妻は箱を開ける。中にはシンプルで上品なピアスが入っていた。普段つけているものに似合いそうだ。

 二条は少し間を置き、視線を逸らして言った。

「俺ね、龍臣君の事、好き、なんだ」

 その声は微かで、室内の静けさに溶け、聴こえるか聴こえないかの告白だった。

 吾妻は一瞬、箱を握る手を止める。心臓が跳ね、頭は冷静を装おうとするが、胸は確かに熱くなる。

 二条は言葉を続けず、煙草の火を灰皿に消し、静かに喫煙所を出て行った。

 その後ろ姿が、午後の陽射しの中でゆらりと揺れる。

 吾妻はただ立ち尽くし、箱を握った手を下ろせずにいた。風がドアの隙間から入り、髪を揺らす。

 聴こえたか、聴こえなかったか。それはまだ分からない。

 けれど、胸の奥で確かに何かが動いたのを、吾妻は感じていた。


 ──誰かを好きになった途端に、皆、同じ顔になる。


 期待して、疑って、縋って、壊れていく。それを何度も見てきた。

 だから俺はその輪には入らなかった。



 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ