告白
午後の日差しは、少しだけ冬の冷たさを帯びていた。吾妻はスーパーの外にある、喫煙所の片隅で煙草を吸っていた。火を点けると、白い煙が室内にゆっくりと立ち上り、冷たい冬の空気に溶けていく。
出勤までの自由時間。周囲のざわめきはドア越しに聞こえるだけで、喫煙所内には静けさだけがあった。
そのとき、ドアの開く音がした。
「……あ、龍臣君。偶然だね」
振り向くと、二条が立っていた。吾妻は答えず、ゆっくりと煙を吐き出す。
二条も自分の煙草に火を点け、煙を吐きながら小さな箱を差し出す。
「はい、誕生日プレゼント」
吾妻は目を見開き、箱を受け取る。
「……何で知ってんだ」
二条は、口元に微かな笑みを浮かべる。
「昨日、お姉様方が、玖礼の誕生日だって言ってるの聞こえて」
小さな沈黙の後、吾妻は箱を開ける。中にはシンプルで上品なピアスが入っていた。普段つけているものに似合いそうだ。
二条は少し間を置き、視線を逸らして言った。
「俺ね、龍臣君の事、好き、なんだ」
その声は微かで、室内の静けさに溶け、聴こえるか聴こえないかの告白だった。
吾妻は一瞬、箱を握る手を止める。心臓が跳ね、頭は冷静を装おうとするが、胸は確かに熱くなる。
二条は言葉を続けず、煙草の火を灰皿に消し、静かに喫煙所を出て行った。
その後ろ姿が、午後の陽射しの中でゆらりと揺れる。
吾妻はただ立ち尽くし、箱を握った手を下ろせずにいた。風がドアの隙間から入り、髪を揺らす。
聴こえたか、聴こえなかったか。それはまだ分からない。
けれど、胸の奥で確かに何かが動いたのを、吾妻は感じていた。
──誰かを好きになった途端に、皆、同じ顔になる。
期待して、疑って、縋って、壊れていく。それを何度も見てきた。
だから俺はその輪には入らなかった。




