表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
嘘と煙の仮面舞踏会  作者: 男鹿七海
14/38

再来

 顔や手の傷はほぼ治っていたが、左眉と口の端だけは切れたせいで、ミミズ張りの跡が残っていた。二条は鏡で軽く確認してから、浮足立つ気分で歩を進める。

 立て続けに商談が成立しなかった二回の教訓から、今回も覚悟していた。

 だが、今日は違った。まともな相手で、商談はスムーズに成立したのだ。

 吾妻が居ると分かっていても、二条は自然とホストクラブへ足を踏み入れていた。

 閉店まで店に居座り、客が居なくなった後、壁際に立ち煙草を吸う。

 夜風に混じる煙を吐きながら、吾妻が店から出てくるのを視界に捉えた。

「──龍臣君」

 低い声で手をひらひらと振る。

 本名で呼ばれる違和感に、二条は眉をひそめる。

 前方には女が一人だけ。背後を見ても誰も居ない。

 ──なら、やはり前方の女が呼んだと判断するしかない。

「(……さっきの客だよな)姫、何で俺の名前を?」

 怪訝そうに問う吾妻に、女はにやりと笑った。金色のウィッグを外すその動作で、視界が一変する。

「龍臣君、俺だよ」

 ──女じゃない。二条宗親だった。

「…アンタか。何だその格好、金髪似合わねぇな」

「え〜、結構気に入ってるんだけどなぁ」

 久しぶりの会話だった。

 口調はいつも通り軽口だが、二条の心は少しだけざわつく。吾妻を目の前にすると、無意識に声が低くなる。

 なのに、吾妻は表情ひとつ変えず、静かに立っている。

 ──やはり、吾妻の存在は厄介だ。

 つい目で追ってしまう自分に、舌打ちしたくなる。でも、二条はいつも通り胡散臭い笑いを浮かべてしまう。

 吾妻と二条、二人だけの夜の時間が、静かに流れていた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ