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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

姉の服を奪う妹

 妖精のように可愛い妹がいる。

 もちろん可愛がるし、甘やかして、蝶や花のように見守るのが姉の勤めである。

 しかし最近その妹が、ちょっとおかしい。


「お姉ちゃん、この服まだ着る予定ある?」

「え、それは……たしかしばらく着てないかな」

「じゃあもらってもいい?」

「うん、いいよ」


 やたらと服をねだる。

 物価高で、お小遣いではろくに新しい服を買えないのはわかる。でも洋服は日用品で、必需品だから、親に相談すれば多少は工面してくれるはずだ。

 私の服だって別にブランドでもないし、似たような服くらいなら新品で買ってくれるはずなのに。


「でも着てないやつか……こっちは!?」

「え、そっちはよく着るけど」

「もらってもいい!?」

「えええぇっ……まあ、ほしいなら、いいけど」

「やったー!」


 着ているかどうか確認してもらうおうとするのは――私のファッションセンスを頼りにしているのか?

 たしかに年頃で、何を着るのが正解なのかわからなくなることがある。

 でも妹よ、申し訳ないけれど私もおしゃれな方ではないぞ。プチブラでそれっぽい服を適当に見繕っているだけで、おしゃれカースト的には中層だ。参考にするならもっといい相手がいるんじゃないのか。クラスメイトにだって、おしゃれな友達のひとりやふたりいるだろうし。


「……でもこれ、洗濯してあるよね?」

「え、それはもちろん。さすがに私もそんなズボラじゃないってー」


 笑いながら答えるが、これだけ服をねだっておいて衛生面についての指摘をもらうと少し棘がささった。思春期だし、気になるんだろうか。親の服と一緒に洗濯してほしくない、みたいな話聞くものな。姉妹だからといって油断していると、妹に嫌われてしまうかも知れない。

 ちゃんと清潔感を大事にしていこう。


「……それとか、もらっちゃダメ?」

「それって、……これ?」

「うん、ダメ……かな」


 妹は私の着ているシャツを指さしている。

 どういうことだ。これは部屋着だし、けっこう首元もよれて着ているとちょっと気になってきているくらいのものだ。

 もちろん、ほしいというならあげられるけれど。


「い、いいけど……洗濯しても……ちょっとこれは着倒しているから、どうかな? あ、部屋着用のシャツがほしいなら、まだこっちに新品で余っているやつが」

「ううん! それがいいの!」

「えええ……いいけど、じゃあ今日洗濯するから、そのあとね」

「やだ、今ちょうだい」

「今!?」


 妹の狙いはなんだ。さっきは服が綺麗かどうか気にしたかと思えば、今度はこんなくたびれたシャツを洗濯もせずにほしがる。

 でも妹は可愛い。よくわからないけれど、わがままも聞いてあげたい。


「うーん、わかった。じゃあ脱ぐからちょっと待ってて」

「えっ、そんなにサービスしてくれるの!?」

「え、うん。サービスっていうか……このシャツは全然……ちょっと捨てようかと思っていたくらいだけど」

「じゃなくて、今ここで脱いでくれるの?」

「だって今ほしいって」

「う、うんっ! その、ちょっと心の準備するから――あっ、待ってね、まだ脱がないでね! いいって言ったら脱いでねっ!?」

「えええぇっ? まあ、いいけど」


 本当に妹のことがわからない。

 洋服に困っているのはわかるけど。

 最後まで読んでいただきありがとうございます。

 他にも百合小説をいくつか投稿予定ですので今後ともチェックしていただけますと喜びます!

 11/20に百合長編の書籍も発売予定(下のランキングタグ部分に詳細あります)ですので、こちらも是非のぞいてみてください!!

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