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短編小説

竜に殺された魔法少女、二度目の人生で、竜と恋に落ちる

作者: 久遠琥珀

 私の名前は――もう、覚えている人もいないだろう。


 最後に覚えているのは、巨大な鱗に覆われた爪が私の胸を貫いた瞬間だった。邪悪な竜の金色の瞳が、冷たく私を見下ろしていた。魔法少女として十六年間生きてきた。そして戦い続けた末に、私は敗北した。この世界を守る最後の希望だった私が、ついに力尽きたのだ。


「これで終わりだ、魔法少女よ」


 竜の声が頭上から響いた時、世界が白く染まった。人類の運命は、これで決まってしまった。もう誰も、竜たちの脅威から世界を守ることはできない――


 そして――


「セリア、起きなさい」


 孤児院のシスター・マリアの声で目が覚めた。


 私は、呆然としていた。


 ここは――孤児院の寝室。窓から差し込む朝日。隣のベッドで眠る他の子供たち。そして、鏡に映る私の顔は――八歳だった。


「嘘でしょ……」


 私は震える手で自分の頬を触った。確かに幼い。でも記憶は鮮明だった。十六年間の人生、魔法少女としての戦い、仲間たちの死、そして最後の敗北――。


「時間が、戻った?」


 そんなことがあり得るのだろうか。でも、手の平に刻まれた星型の魔法印は確かにそこにあった。胸の奥に宿る魔力の感覚も、間違いなく本物だった。


 私は混乱していた。なぜ私が? なぜこの時に? そして、なぜ記憶を保ったまま?


「信じられない……本当に戻ってる……」


 私は小刻みに震えていた。あまりの衝撃に、現実を受け入れることができない。八年前の世界。まだ竜の脅威が本格化していない時代。魔法少女の数も多く、人々がまだ希望を抱いていた頃。


「今度こそ」


 私は小さな拳を握りしめた。今度こそ、あの竜を倒してみせる。そして、あの悲劇的な未来を変えてみせる。


 この世界では、魔法少女が人類最後の希望だった。古来より竜は人間の天敵として君臨し、その圧倒的な力で文明を破壊し続けてきた。対抗できるのは、選ばれた少女たちに宿る魔法の力だけ。私たち魔法少女は、人類の盾として戦い続ける運命を背負っている。


 前の人生で、私は多くの仲間を失った。リナは炎竜に焼かれ、ユイは氷竜に凍らされ、アヤは雷竜に打たれた。一人、また一人と仲間が散っていく中で、最後まで残ったのが私だった。そして、その私も結局は――


「絶対に、変えてみせる」


 私は決意を新たにした。今度は違う。前世の記憶と経験があれば、もっと効率的に強くなれる。そして、あの黒い竜――私を殺したあの憎むべき存在を、必ず討ち取ってみせる。


 孤児院での日々を我慢して過ごすつもりだった。けれど、あの悪夢のような敗北の記憶が私を苛んだ。竜の圧倒的な力、私の魔法が全く通用しなかった絶望――。


 このまま待っているだけでは、また同じ結末を迎えてしまう。


 月の明かりもない夜、私は孤児院を抜け出した。竜について、もっと詳しく知る必要があった。前の人生では、竜が突然現れて人々を襲い始めた時、私はまだ魔法少女として未熟だった。今度は違う。事前に情報を集めて、完璧な準備をしてから戦いに臨むのだ。


 森の奥深くに向かった。あの竜が住んでいたのは、確かこの辺りのはずだった。夜の森は恐ろしかったが、前世の経験があれば――


 足を滑らせたのは、崖の縁を歩いている時だった。


「きゃあっ!」


 体が宙に舞った。八歳の小さな身体では、バランスを取ることもできない。死を覚悟した瞬間、何かが私を掴んだ。


 巨大な爪だった。


「何をしている、人間の子よ」


 その声を聞いた瞬間、全身の血が凍りついた。間違いない。この声は、私を殺したあの竜の声だった。


 恐る恐る見上げると、月光に照らされた巨大な竜がいた。黒い鱗に覆われた威厳ある姿。人類の敵。私が憎み、恐れ、そして最後に敗北した存在。


 しかし――前世で見たような邪悪さは感じられない。むしろ、どこか困惑したような表情を浮かべていた。


「こんな夜中に、こんな場所で何をしている?」


 竜は私を安全な場所に降ろしながら尋ねた。その仕草は、まるで大切な何かを愛おしむ男性のようで――


「あ、あの……」


 私は混乱していた。この竜が、八年後に私を殺すことになるなんて、とても信じられなかった。


「住む場所は?」


「孤児院から……逃げてきました」


 竜は深いため息をついた。


「困ったな。この深い森で、お前のような小さな子が一人では生きていけまい」


 私は呆然としていた。この竜は、なぜこんなにも優しいのだろう。前世で戦った時の冷酷さはどこにもない。それどころか、本当に私を心配してくれているように見える。


「私の名前はアルティメア。お前は?」


「セ、セリアです」


「セリアか。美しい名前だ」


 アルティメアは私を見つめながら言った。その瞳に宿るのは、優しさだった。間違いなく、優しさだった。


「セリア、お前にはどこにも行く場所がないのだな?」


 私は頷いた。孤児院に戻るわけにはいかない。あそこにいても、結局は同じ未来を迎えてしまう。


「それならば」アルティメアは少し考えてから言った。「しばらく、私と共に暮らすか?」


「え?」


 私の心臓が激しく鼓動した。敵であるはずの竜が、私を家族として迎え入れようとしている。これは、一体どういうことなのだろう。


「この森は危険だ。魔物も多い。しかし、私がいれば安全だ。それに――」


 アルティメアは少し寂しそうな表情を見せた。


「長い間、一人で暮らしていたからな。話し相手がいるのも悪くない」


 私は震えていた。頭では分かっている。この竜は敵だ。人類の脅威だ。いずれ私が倒さなければならない存在だ。


 でも――


 でも、その優しい瞳を見ていると、どうしても敵だと思えない。むしろ、胸の奥で何かが熱く脈打っている。


「どうする?」


 アルティメアの優しい声に、私は小さく頷いた。


 そして、私の最も深い葛藤が始まった。


 それから始まった日々は、前世では決して経験できなかった幸福な時間だった。


 アルティメアは本当に優しかった。私に読み書きを教え、森の知識を授け、そして何より、愛情深く接してくれた。夜は大きな体で私を包んで温めてくれ、昼は一緒に森を散歩した。


「セリア、お前には特別な力があるな」


 ある日、私が何気なく使った魔法を見て、アルティメアが言った。


「魔法少女の素質がある。珍しいことだ」


 私はどきりとした。自分の正体がばれたのかと思ったが、アルティメアは気づいていないようだった。


「その力、しっかりと鍛えなければ危険だ。私が教えよう」


「でも、あなたは竜で、私は人間で――」


「そんなことは関係ない。お前は私の……」


 アルティメアは言いかけて、何かに気づいたように口を閉ざした。そして、少し困ったような表情を浮かべた。


「お前は私にとって、大切な存在だ」


 その言葉を聞いた時、私の心は激しく動揺した。何か、とても深い意味が込められているような気がした。


 私は、アルティメアを殺すためにここにいるのだ。人類の敵として、憎むべき存在として。でも、アルティメアは私を大切に想ってくれている。そして私も――


「どうして……」


 夜、一人になった時、私は涙を流した。


「どうして、こんなに温かいの?」


 アルティメアは確かに、八年後に私を殺す。それは間違いない事実だ。でも、今のアルティメアは邪悪でも残酷でもない。ただ、孤独な竜が、迷子の少女を救っただけ。


 そして私は、少しずつアルティメアに惹かれていく自分に気づいていた。


「私は、何をすればいいの?」


 答えは出なかった。


 こうして、私はアルティメアから魔法と戦闘技術を学ぶことになった。前世では独学に近い形で魔法を習得したが、今度は竜から直接指導を受けられる。私の力は前世を遥かに上回る速度で成長していった。


「素晴らしい成長だ、セリア」


 アルティメアは私の魔法を見て感心していた。


「お前なら、いつか素晴らしい魔法少女になれるだろう」


 その言葉を聞くたび、私の胸は締め付けられた。


 私たちは、いつか敵同士になる運命なのだ。私はアルティメアを殺し、アルティメアは私を殺す。それが、定められた未来。


 でも――


「アルティメア、今日も一緒に散歩しましょう」


「ああ、セリア。どこに行こうか?」


「川のそばがいいです」


「分かった。お前の好きなようにしよう」


 アルティメアと過ごす日々は、本当に幸せだった。朝起きれば、アルティメアが森の果実を取ってきてくれている。一緒に川で魚を捕まえ、夕日を眺めながら他愛のない話をする。私が悪夢を見て泣いた時は、大きな翼で優しく包んでくれた。


 そして、時が経つにつれ、私の心は二つに引き裂かれていった。


 一方では、アルティメアへの想いが日に日に深くなっていく。ただの保護者への感謝を超えた、もっと深い感情。


 もう一方では、魔法少女としての使命感。人類を守るため、竜を倒さなければならないという義務感。


「私は、一体何者なの?」


 夜が深くなると、私はいつもこの問いに苦しめられた。


 魔法少女セリアなのか。それとも、アルティメアを愛する女性なのか。


 前者なら、アルティメアを殺さなければならない。後者なら、人類を裏切ることになる。


「アルティメアを殺すなんて、できない……」


 でも、アルティメアを放置すれば、未来は変わらない。多くの人が死に、世界は滅びる。


「でも、人々を見捨てることもできない……」


 私は魔法少女だ。人類の希望だ。その責任を放棄することはできない。


 こうして、私の心は深い葛藤の渦に飲み込まれていった。


 年月が流れ、私成長していった。そして、アルティメアへの想いも、より深く、より複雑なものになっていった。


「セリア、お前は美しくなったな」


 ある夜、満月の光の下でアルティメアが言った。その瞳には、複雑な感情が宿っていた。


「お前は私にとって、かけがえのない存在だ」


 私は胸が激しく鼓動するのを感じた。アルティメアの瞳の奥に、恋慕に似た何かを見たような気がした。


「私も、アルティメアのことが……」


 私は言いかけて、言葉を呑み込んだ。この想いは、決して口にしてはいけない。私たちは、やがて敵同士になる運命なのだから。


 しかし、アルティメアは私の心を見透かしたように微笑んだ。


「セリア」


「はい」


「お前が人間で、私が竜でなければ――」


 アルティメアは途中で言葉を止めた。でも、その意味は十分に伝わってきた。


 私たちは、種族を超えて愛し合っていた。でも、それを口にすることも、受け入れることもできない。なぜなら――


 こうして、八年が過ぎた。私は再び十六歳になり、魔法少女としても前世を上回る力を身につけていた。アルティメアとの絆も、恋慕の情も、日に日に深くなっていく。


 そして、私の葛藤も、日に日に深刻になっていった。


 私は時々考えた。もしかしたら、歴史を変えることができるのではないかと。アルティメアが人間を襲わなければ、私たちが戦う必要もない。このまま二人で愛し合って暮らしていけるのではないかと。


 でも、その小さな希望は、現実の前に無力だった。


「セリア、森の様子がおかしい」


 ある日、アルティメアが深刻な表情で言った。


「人間どもが、聖域に足を踏み入れている」


 聖域――それは森の最も神聖な場所で、長い間誰も立ち入ることを許されていなかった。


「木々を切り倒し、土地を荒らしている。許せない」


 アルティメアの瞳に、初めて怒りの炎が宿った。そして、私は知っていた。これが始まりなのだと。アルティメアが人間を憎み始める、その最初の瞬間。


「私は行かねばならない。奴らを止めなければ」


「待って!」


 私は慌ててアルティメアを止めた。


「話し合いで解決できませんか?」


「話し合い?」アルティメアは首を振った。「人間は欲深い。一度味を占めれば、決して止まらない。力で思い知らせるしかないのだ」


 私の心は激しく動揺していた。愛するアルティメアの中に、確かに憎悪の種が芽生えている。このままでは、前世と同じ道を辿ってしまう。


「でも、殺さないで」


 私の必死の頼みに、アルティメアは少し表情を和らげた。


「分かった。お前のためだ。できるだけ穏便に済ませよう」


 しかし、翌日戻ってきたアルティメアは、さらに怒りを燃やしていた。


「奴らは私の警告を無視した。それどころか、さらに多くの人間を呼んだ。もう我慢ならない」


 私は絶望していた。歴史は、まったく同じ道を辿っている。


 そして、ついにその日が来た。


「セリア、しばらく洞窟から出るな」


 アルティメアは出かける前に私に言った。


「今日で決着をつける」


 私は知っていた。今日、アルティメアが街を襲う。そして、私は魔法少女として立ち上がらなければならない。


 私の心は、千々に乱れていた。


 アルティメアを愛している。女性として、心の底から愛している。何年間も共に過ごし、互いを想い合ってきた。離れがたい。失いたくない。


 でも、無実の人々が苦しんでいる。魔法少女として、見捨てることはできない。


「どうして……」


 私は床にうずくまって泣いた。


「どうして、こんなことになったの?」


 なぜ、愛する人が敵なのか。なぜ、大切な人と戦わなければならないのか。なぜ、私がこんな選択を迫られるのか。


「アルティメア……」


 街から悲鳴が聞こえてきた。炎と煙が空を覆い、人々が逃げ惑う声が風に乗って届く。


 私は震えていた。体が動かない。心が拒絶している。


 でも――


 でも、私は魔法少女だ。人々を守るのが、私の使命。


「ごめんなさい、アルティメア……」


 私は魔法少女の衣装に身を包んだ。涙で顔がぐしゃぐしゃになっても、それでも立ち上がった。


 街へと向かう足取りは、とても重かった。


 街は地獄のような光景だった。建物は破壊され、人々は恐怖に震えている。そして、その中心にアルティメアがいた。


 私の愛するアルティメアが、憎しみに狂って暴れている。


「アルティメア、やめて!」


 私は叫んだ。


 アルティメアは振り返り、私の姿を見て驚いた。


「セリア! なぜここに――」


「お願い、やめて。こんなことしても、何も解決しない」


「セリア、お前には関係ない。下がっていろ」


「関係ないことなんてない!」


 私は涙を流しながら叫んだ。


「私は魔法少女なの。人々を守るのが私の使命」


「何を言っている?」


「そして――」


 私は震え声で続けた。心の奥底に封印していた真実を、ついに口にする時が来た。


「私は未来から来たの。私たちは戦うことになる。そしてあなたは私を殺すの」


 アルティメアは言葉を失った。


「最初から全部、分かってたの。あなたが将来、人類の敵になるって。でも、一緒に暮らしているうちに――」


 私の声は嗚咽に変わった。


「本当に、本当にあなたのことが好きになったの。愛してしまったの」


 アルティメアは長い間、無言で私を見つめていた。その瞳に、様々な感情が渦巻いているのが見えた。驚き、困惑、そして――愛しさ。


「そうか……それで、お前は私を止めに来たのか」


「アルティメア、お願い。やめて。一緒に帰ろう。二人だけの世界で暮らしましょう」


 私は必死に懇願した。でも、アルティメアは首を振った。


「セリア、お前の気持ちは嬉しい。私も――私もお前を愛している」


 その告白に、私の心は激しく震えた。


「だが、私には譲れないものがある」


 アルティメアは再び街の方を向いた。


「この森は、私の故郷だ。私が守らねばならない聖域だ」


「でも――」


「お前が未来から来たというなら、理解してくれるはずだ。私は、やらねばならないことをやるだけだ」


 そして、アルティメアは再び炎を吐いた。


 私は絶望した。愛では、憎しみを止められない。どんなに想い合っても、運命は変わらない。


「アルティメア、ごめんなさい」


 私は決断した。愛する人を止めるためには、戦うしかない。


 魔法の光が私を包んだ。鍛え上げた力が、私の体を駆け巡る。


「光の槍よ!」


 私の魔法がアルティメアを直撃した。前世では全く歯が立たなかった攻撃が、今度はしっかりと効いている。


「成長したな、セリア」


 アルティメアは感心したような声で言った。でも、その瞳は悲しそうだった。


「だが、それでも私を止めることはできない」


 激しい戦いが始まった。私は涙を流しながら、全力でアルティメアと戦った。


「アルティメア、お願い!」


 攻撃の合間に叫ぶ。


「私と一緒に来て! 森で二人で暮らしましょう! あなたを愛してる!」


「セリア……」


 アルティメアの瞳にも涙が浮かんでいた。


「お前こそ、私を見捨てて人間の側につくのか?」


「見捨てるなんて、そんな!」


 私は必死に魔法を放ちながら答えた。


「あなたのことが好きだから、こうして戦ってるの! 止めたいから!」


 でも、私の心は激しく揺れていた。本当にこれで良いのか。アルティメアを傷つけて、それで解決するのか。


 魔法少女として正しいことをしているのか。それとも、愛する人を裏切っているのか。


「私は……私は……」


 混乱する心のまま、戦いは続いた。建物が崩れ、地面が砕ける。私たちの力がぶつかり合う度に、空が震えた。


 そして――


「アルティメア!」


 最後の一撃を放つ時、私はつぶやいた。


「愛してる……」


 光の矢がアルティメアの胸を貫いた。


 巨大な体がゆっくりと倒れる。私は駆け寄って、アルティメアの頭を抱きしめた。


「アルティメア……アルティメア……」


「セリア……」


 アルティメアは弱々しい声で言った。


「お前は……正しいことをした」


「嫌よ、そんなの」


 私は泣き崩れた。


「正しいことなんて、どうでもいい。あなたがいなくなるなんて……」


「セリア……お前を……愛している」


 アルティメアの瞳から光が消えた。


 人々は私を英雄として称えた。邪悪な竜を倒した勇敢な魔法少女として。でも、私の心は空っぽだった。愛する人を失った悲しみで、胸が張り裂けそうだった。


 夜が来ると、私はアルティメアの遺体を森の聖域に運んだ。そこは、アルティメアが最も愛していた場所だった。


「アルティメア、ここで眠って」


 私はアルティメアの牙を土に埋め、墓標とした。


「でも、このままじゃ終わらせない」


 私は残された全ての魔力を集中した。禁断の魔法――死者蘇生の術。膨大な生命力と引き換えに、死者を霊体として甦らせる究極の魔法。


「アルティメア、戻ってきて。私も一緒に行くから」


 私の体から光があふれ出した。全ての魔力、全ての生命力を注ぎ込む。


 淡い光の中から、アルティメアの霊体が現れた。


「セリア……なぜ、こんなことを」


「一緒にいたかったから。あなたを愛してるから」


 私も霊体となり、力尽きて倒れた。でも、後悔はなかった。


「セリア」


「アルティメア」


 私たちは抱き合った。もう誰も、私たちを引き離すことはできない。


 聖域の森で、竜と魔法少女の霊が永遠に寄り添って暮らしている。月の光に照らされながら、二人で散歩をし、永遠の愛を語り合う。


 これが、私たちが選んだ結末。悲しくも美しい、愛の物語。


 時々、森を訪れる人が、二つの光る影を見ることがある。それは、永遠に愛し合う男女の姿。種族の壁さえも超越した、純粋な愛の証。


 私の名前は、もう誰も覚えていないかもしれない。でも、それでいい。アルティメアと一緒にいられるなら、他に何も要らない。


 これが、魔法少女セリアと竜アルティメアの、誰も知らない真実の愛の物語。

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