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仲間

「ヤブキさん!

私達は日本から来た仲間じゃないですか!

協力し合いましょう!

みんなで力を合わせれば必ず帰れる筈です。

私達全員女子だから、ヤブキさんみたいな大人の男の人を頼りにしたいんです。

まずはパーティーを組みませんか?

冒険者ギルドの依頼を皆で一緒に受ければ、情報を収集する為のお金は貯めれると思うんです!」



『最後にもう一度警告する!

武器を捨てて後ろに下がれ!!

会話に応じると言った覚えはないッ!!!』



「ヤブキさん!!

何か誤解があるようですが話し合えば必ず理かッ



バキューン!!



ドサッ



『ハアハア、恐ろしい敵だった。』



今、俺が撃ち殺した女は地球から一緒に転移してきた女だ。

転移時に制服のようなものを着ていたので中学生か高校生だろう。

城壁の外にあるという安宿(実際はテントサイト)を見学する為に、郊外に出た所を尾行して来たのだ。

何度も距離を取る様に警告しながら逃げたのだが、林の奥まで執拗に追跡されて追い詰められた。

武装解除を5度要求したが全て無視されて一方的に捲し立てられた。


背中から大量の冷や汗が流れていたことに今更気付く。

仕方あるまい、ここまで恐ろしい目に遭ったのは生まれて初めてだったのだから。

俺の戦闘手段はピストルによる銃撃しかない。

距離があれば優位に立てるが、3メートル圏内まで距離を詰められると反射神経勝負になってしまい、無傷で殺せる自信がない。



バキューン!!

バキューン!!

バキューン!!



念の為、顔面・心臓・腹部に撃ち込み完全なる死亡を確認する。



バキューン!!



残弾も撃ち込んでおく。

恐る恐る蹴飛ばしてみて、死亡を確信し安堵の溜息を漏らす。

背中から流れ落ちた汗はズボンの裾をグチャグチャに濡らしていた。



【reload】



突然脳に響いた音声に驚き、不覚にもしゃがみ込んでしまう。

どうやら俺は自覚していた以上の臆病者だったらしい。

慌てて銃を確認すると弾倉には5発。

やはり時間制だな。

…ここで試しておくか。


バキューン!!

バキューン!!

バキューン!!

バキューン!!

バキューン!!


呼吸を止めて銃を凝視する。


…。

…。

…。

…。

…。

…。


【reload】


装填まで59秒掛かった。


バキューン!!

バキューン!!

バキューン!!

バキューン!!

バキューン!!


…。

…。

…。

…。

…。

…。


【reload】


今度は58秒数えた所での装填。

まだ断定は出来ないが、1分で自動装填されるルールと仮定して問題ないだろう。

…1分か。

実戦での弾切れ=死だな。

今度からは今まで以上に計算して殺さなくては。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



周辺を警戒しながら何度も深呼吸をして気分を落ち着かせる。

恐らく銃声は誰かに聞かれてしまっただろう。

直接の目視はされてない筈だが、どうだろう?

この女から必死に逃げる様は何人かに見られていただろうから、この女の消息が問題になれば当然俺が疑われ兼ねない。


倒れた拍子に開いたのだろう。

女のウエストバッグから大量のコインがこぼれ落ちているが、当然指一本触れない。

俺は正当防衛の権利を行使したいだけであって、強盗殺人を犯すような悪党ではない。


女の腰に差されていた佩刀。

柄の意匠からして、この世界の基準でもかなりの逸品である事が窺い知れる。


そう、俺以外の転移者は全員武術の実績があったのだ。

最初に転移した時も、剣道やらフェンシングの大会で好成績を収めたと王に申告していた。

眼前の女も含めて明らかに運動が出来そうな雰囲気の少女ばかりだったし、鑑定水晶に表示されていたステータス値も俺の数倍あったので、虚偽申告ではなかったのだろう。

或いはこの佩刀も王宮からの支給かも知れないな。

そんなランクの剣士に追われていた事実に改めて戦慄する。


死体の処理に悩んだが、半透明の物体が俺の足元に沸いたのを見て冒険者ギルドの受付嬢キャシーの言葉を思い出す。



  『キャシー。

  まずは人手を減らしてしまった埋め合わせをしたい。

  早速、冒険者ギルドの仕事を受けたいのだが…

  ああ、駆除系が好ましいな。

  この魔物退治一覧、一番弱い魔物はどれだ?』



  「一番弱い魔物はスライムです。

  ほぼ戦闘力はありませんので。

  生物の死臭を嗅ぎつけて漁るのみのモンスターです」



キャシーの言葉は嘘ではなかったらしく、女の死体に近づいたスライムは緑色の液体をまき散らし始めた。

どうやら消化液で死体を溶かしながら栄養素を摂取する仕組みらしい。

俺が感心しながら眺めていると女の左手首が崩れ溶けた。

…スピードも悪くない。

  

少し離れた所に鹿の死体を食べているスライムを見掛けたので、木の枝で持ち運び女の死体の真上に落とす。

彼が不満そうに「キュキュー」と鳴いたので、慌てて詫びる。

そりゃあね、俺だって食事中に勝手にメニューを取り替えられた怒るよ。

同じ要領で計5匹のスライムで死体を処理させる。


死体隠蔽までの所要時間は概算で15分。

つまり、一匹で人間一人を処理するのなら一時間強も掛かってしまう計算になる。

仕事遅い奴だなぁ…。


いや頼んだのはこちらだ。

文句を言うべきではない。

現に骨や衣服まで消滅してくれたのだから感謝しなければ。


ただ、金属は担当外なのか武具だけが残ってしまった。

参ったな。

寧ろ、こちらを消して欲しかったのだが。


取り敢えず逃げる途中で見掛けた沼らしき場所に戻り、何度も石を投げてその深さを計ってから、一番深そうな場所に鎧と剣を投げ込んだ。

投げ入れた瞬間にスッと沈んで消えたので、多少疑われても当面はとぼけ続ける事が出来るだろう。



『ステータスオープン』



周辺警戒を続けながらステータス画面を開く。

PC画面大に空中投影されるのはありがたいのだが、どうやら真正面以外には開かない仕組みらしい。

戦闘中に誤発動してしまったら死ぬな、注意しよう。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



「パラメーター」


《LV》 4

《HP》 19/19

《MP》 01/16

《力》  7

《速度》 12

《器用》 19

《魔力》 10

《知性》 12

《精神》 18

《幸運》 26


《経験》 1000


本日取得経験値  100

次のレベルまでの経験値100



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



ステータス画面を開いて再度確信。

人間1人を殺した経験値は100。

王であろうがチンピラであろうが女であろうが、誰を殺しても平等に100。

素晴らしい、やはり命は平等だったのだ。

掛け替えのない人命に軽重などあってたまるか。


いや、哲学を語っている場合じゃない。

考えるべきはそこじゃないのだ。


問題はMP。

残りMPが1しかない!

いや、俺のMPは16あった筈だが…

いつの間に…


!!

そうか!!

発射数だ!!


確か俺は今日15発撃った。

つまり一発撃つごとにMPを1消費する仕組みだったのか!?

じゃあやっぱり、MPがゼロになれば撃てなくなるのだろうか?


…今までの行動を思い出して寒気がする。

俺、ルールも知らずによくあんなに無茶出来たな。


どうしよう。

弾倉には5発装填されているが、実質的な残弾は1発しかない。

ここで会敵したら終わるな…

そうかそうか、弾数とMPを並行して管理する必要があるのか…

参ったな。

俺はそんなに頭が回る方ではない。

脳内の計数処理なんて一番苦手な分野なのに…



『まずはギルドに戻ってMPの回復方法を聞くか…』



呟きながら後悔する。

ゴンザレス一味に入っておけば良かった。

奴隷扱い上等じゃないか。

それで知識が手に入るなら安いものだ。

俺の能力さえあればいつでも殺せたのだから、何も衆人環視で皆殺しにする必要はなかった。

いや、違うな。

不安要素を殲滅したことで、俺は安心を獲得出来た。

期待値などいらん、俺が欲しいのは確実な安心だ。

不安要素には確実に死んでもらわなくては、精神の安定が保てない。

怪しい奴は殺すしかない。



林から戻る前に座って腹ごしらえをする。

冒険者ギルドの入会特典のレーション。

騎士団の払い下げ品なので消費期限は切れかけているが、軍用品なので消毒は完璧らしい。



『…モシャモシャ。

マズい。』



腹が減っていなければ、こんな物絶対に食べない。

昔、一度だけ食べて断念したオートミールの100倍はマズかった。

だが、このレーション。

栄養価はあるらしいからな。

無理にでも食い切るべきであろう。

あまりの食感の悪さに泣きながらレーションを貪る。

…くっそ、どうして俺がこんな目に。



『…。』



自らの頬を叩いて折れそうになる心を必死に鼓舞。

気持ちを切り替えろ。

ここはもう日本ではないんだ。

適応しながら帰還方法を模索するしかないじゃないか。

手持ち無沙汰なので、再度ステータスウィンドウを開く。

気を紛らわせながらじゃないと、こんなマズい食事は出来ない。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



「パラメーター」


《LV》 4

《HP》 19/19

《MP》 03/16

《力》  7

《速度》 12

《器用》 19

《魔力》 10

《知性》 12

《精神》 18

《幸運》 26


《経験》 1000


本日取得経験値  100

次のレベルまでの経験値100



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



『ん!?』



さっき1しか無かったMPは3まで回復している。

時間制?

時間経過で回復するのだろうか?

だとしたら嬉しいが…


レーションを食べきると、立ち上がりギルドに戻る。

ここからなら2時間掛からずに戻れる筈だ。

2時間あれば纏まったMPを回復させられるんじゃないか?


そう思って帰ったが、MPは3のまま動いていなかった。

肩を落としながらキャシーに尋ねると、MPは一般的に食事や睡眠で回復するらしい。

エーテルなるMP回復薬剤もギルドで販売していたが、ガチの軍用品なので半分しかMPが回復しないエーテル(小)でも金貨10枚するらしい。

全快機能のあるエーテル(大)に至っては金貨50枚。

…かなり迷ったがエーテル(小)を一本だけ購入。

まあ、命綱だ。



「ヤブキ様、討伐は如何でしたか?

モンスターとは遭遇出来ましたか?」



遠慮がちにキャシーが尋ねて来たので、正直に一匹しか殺さなかったことを打ち明ける。



「あ、では!

魔石を提出して下されば買い取りますよ!

討伐対象モンスターであれば報奨金も支払います。」



『ああ、申し訳ない。

魔石というのがよく分らなかったので、持ち帰ってない。』



キャシーはしきりに恐縮し、モンスターの体内にある魔石なる物質のレクチャーをしてくれた。

謝る必要はないさ、尋問にかまけて質問を怠ったのは俺の責任なのだから。

魔石の実物も見せて貰う。

濁った宝石のような石であり、この世界では珍重されているようだが、俺は内心気持ち悪いと感じた。



「今月はダイヤウルフという狂暴な狼型のモンスターの討伐キャンペーンなのです!

何とダイヤウルフの魔石を持って来て下されば、通常の報奨金に加えてレーションも特別支給されます!」



…やれやれ。

この世界でやって行く自信はないが、腹は何とか満たせそうだ。

今回の殺害人数  1名

総殺害数     10名



【ステータス】



「名前」


矢吹弾



「能力名」


ピストル



「能力」


詳細不明

リボルバー式の銃がホルスターごと腰に固定される。

弾倉数5。

1発射撃するごとにMPを1消費する。

撃ち尽くすと約60秒後にリロードされる。




「パラメーター」


《LV》 4

《HP》 19/19

《MP》 03/16

《力》  7

《速度》 12

《器用》 19

《魔力》 10

《知性》 12

《精神》 18

《幸運》 26


《経験》 1000


本日取得経験値  100

次のレベルまでの経験値400



☆レベルアップルール


召喚者の初期レベルは1。

レベルアップに応じて必要経験値が100ずつ増加する。


1→2  100

2→3  200

3→4  400

4→5  700

5→6  1100

6→7  1600

7→8  2200

8→9  2900

9→10  3700

10→11 4600



「経験値表」


人間 100ポイント




【筆者から】


貴重なお時間を割いて頂けた事に感謝しております。

面白いと思ったら☆5とブックマークを付けて貰えると励みになります!


撃って欲しい相手がいたらコメント欄に書いて下さい。

主人公が撃ちに行きます!!




拙作異世界複利が2025年06月25日にMFブックス様から刊行されます。

そちらも宜しくお願い致します。

https://ncode.syosetu.com/n3757ih/

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