ギルド
「オラぁ!!
冒険者ギルドでやってく為にはなあ!!
このゴンザレス様の許可が必要なんだよおお!!!」
『あ、そうでしたか。
スミマセン。』
「オイオイオイオイ!!!
スミマセンで済んだら憲兵いらねえんだよお!!」
『はぁ、じゃあどうすればよろしいんですかね?』
「へっへっへ。
随分、物分かりがいいじゃねえか。
なあに、難しいことじゃねえ。
このゴンザレス様のパーティーに見習いとして入ればいいだけのことよ。
悪い話じゃないぜえ、確かにアガリは全額頂くが、冒険者としてのノウハウが学べるし、このゴンザレス様とのコネが出来る。」
ゴンザレスの両端にいた子分っぽい男達が「へへへ。」と笑う。
「別にカツアゲとかじゃないぜ?
あくまで正当な師弟関係。
弟子が師匠に授業料を支払うのは当然だろう?
どこの道場だってやってることさ。」
眼前のゴンザレス氏。
恐ろしくガタイがいい。
身長は少なく見積もっても2メートルはあるだろう。
特筆すべきはその肩幅。
まるでアメフトのショルダーガードの様に筋肉が盛り上がっている。
「へっへっへ。
妙な考えは起こさない方がいいぜぇw
ゴンザレスの兄貴は生意気言った奴を何人も殴り殺してきたんだ。
オマエも黙って雑用奴隷になれやww
優しくコキ使ってやるからよ。」
『はあ、丁寧なご説明ありがとうございます。』
「はっはっはww
お利口さんじゃねえかww
気に入った、オマエは特別にたった10年の見習い期間で勘弁してやるよ。」
「「「「ギャハハハハハwww」」」」
取り巻き達が一斉に爆笑する。
治安悪すぎだろ。
「良かったなあ、新入りィ!
まずは有り金全部ゴンザレスの兄貴に献上しろやww
俺達がありがたく飲み代に使ってやるよwww」
「「「「ギャハハハハハwww」」」」
さっきから何度もこっそり観察しているが、どう見てもゴンザレス一味は5人。
問題は俺のスキルで生成されたリボルバーが5発装填式であることだ。
この場でいきなり戦闘に発展した場合、全員を一発で仕留めないと確実に殺される。
王を殺害してからしばらくは弾倉に4発しか残っていなかったが、翌日起床すると5発装填されていたので時間経過でリロードされる可能性は高いが、それでも未検証の能力を当てにするのは怖い。
『弟子入りは仕方ないのですが、有り金は勘弁して貰えませんか?』
「いーや駄目だ。
俺様の勘だとオマエは今まとまったカネを持っている。
くくく、俺様もこの稼業が長いからな。
懐具合は何となく見当がついてるんだw
それを寄越せ。」
参ったな。
実は数日であれば雑用奴隷も悪くないと思ったのだが…
王から貰った30枚の金貨をくれてやるほどの価値はコイツらにない。
いやあ、残念だ。
現時点で喉から手が出るくらいに欲しいのが異世界知識。
むしろ俺から授業料を払っても良かったくらいなんだけどな。
『あ、手が滑った。(棒)』
俺は無造作に掴んだ金貨を10枚ほどバラ撒いた。
ゴンザレス一味は何故かそれを譲渡と解釈したようで、嬉しそうな表情で中腰になって拾おうとした。
「ふひひひ、しばらく飲み代には…
バキューン!!
「「「「?」」」」
初弾は当然ゴンザレスの頭部に命中させる。
幾ら俺が素人でも目の前に屈んだ相手なら当てられる。
脳漿が飛び散ったという事は恐らくは死んだのだろう。
いや、死んだと仮定して次を殺さなくてはならない。
「え? ちょ?」
バキューン!
最初に我に返った手下の顔面を吹き飛ばす。
「わ!」
「え?」
「凄い音?」
バキューン!
バキューン!
バキューン!
全員の顔面を撃ち抜いて殺す。
素早く弾倉を見るが当然空っぽ。
実質丸腰になる。
この場から一旦去って新王ワイリーに庇護を頼んだ方がいいか?
それとも正当防衛を主張しておくべきか?
「何しとるんじゃコラア!!!!!!」
考えたのが失敗だった。
ギルドの奥からもう1人似たような風体の大男が飛び出して来る。
「ゴンの兄貴ッ!?」
大男は一瞬ゴンザレスの死体を見てパニックになり掛けるが、俺と目が合った瞬間地面に落ちていた蛮刀を拾い上げて敏捷なバックステップを踏む。
ヤバい、この大男はかなり戦闘慣れしている。
「そこのオマエ!!
動くなア!!!」
真っ直ぐ突っ込んで来るかと思われた大男は左右を高速度で確認しながら摺り足でゆっくりと近づいて来る。
なるほど。
俺は如何にも素人臭いし、周囲に仲間が潜んでいると考えるのも無理はない。
だが、俺が1人であることはすぐにバレる。
バレたら当然報復に嬲り殺しにされるだろう。
逃げ出そうと重心を落としたその時だった。
【reload】
脳内にそう響いた。
僅かに銃が重くなった気がした。
reload、リロード。
英語に疎い俺でも意味はわかる。
今、俺のピストルは装填されたのだ。
「殺すぞコラア!!!!」
大男が絶叫して左方向を威嚇した瞬間を狙った。
バキューン!
文字通り、腹に穴が空いた。
結構大柄で肉厚な男だったが、それでも一瞬向こうが見通せる位の穴が開くのがハッキリ見えた。
「ゴ! ぁ…」
大男は一瞬不思議そうな顔で俺に振り向いた後、苦悶の表情を浮かべて崩れ落ちた。
そりゃあね。
お腹に穴が空いたら絶対痛いよね。
「あ゛ あ゛」
バキューン!
大男の頭部を破裂させる。
あまりのグロさに撃った俺の心が折れそうになる。
ギルド内は静まりかえって皆が呆然としていた。
どう反応していいのか分からないという表情で皆が俺を見ている。
撃った俺に分からないのだから、君達に分からなくても仕方ない。
『すみません!
この施設の責任者の方はおられますか?
話をしたい!』
俺がそう叫ぶと受付嬢らしき少女が慌てて飛び出して来た。
年齢は20歳前後であろうか?
女子大生くらいの雰囲気である。
「ギルド長が出張中の為、受付の私が応対します。
案内担当のキャシーと申します!」
『キャシーさん。
御丁寧にありがとうございます。
私はヤブキと申します。
まずは貴団体に危害を加える意図の来訪ではなかった事を宣言させて下さい。』
正直に言えば俺は不満だった。
責任者を出せと言ったのに、キャシーのような小娘がしゃしゃり出て来たからだ。
侮られているのかと思った。
ただ、キャシーの指示で壮年の男性(作業員?)がゴンザレス一味の死体を片付け始めたので、見た目より強い権限を持っているのかも知れない。
「ヤブキ様、まずは当施設でトラブルに見舞われたことを深くお見舞い申し上げます。」
『…。』
「ヤブキ様?」
『キャシーさん、貴女は何か勘違いしているようだ。
私はトラブルに見舞われたのではなく、貴施設から攻撃を受けたのだ。
責任者を出して頂けますね?
敵意が無い事をそちらから証明して欲しい。』
「…。 (ゴクリ)」
相手も馬鹿ではないので、俺が握り締めている銃がゴンザレス一味を全滅させたことには気づいているし、それとなく向けられている銃口の危険性も悟っている。
「ヤブキ様、せめて事情を説明をさせて下さい。」
『…どうぞ。』
額から大量の汗を流しつつキャシーは俺から目を逸らさず、意志のある言葉を吐き出し始めた。
「まずゴンザレスパーティーはフリーの冒険者グループであり、弊ギルドの所属ではありません。
裏を取って下さって構いませんッ!!」
『了解した。
彼らが君達と雇用関係にない事を前提に話を聞こう。』
「先月、グリーン伯爵領から流れてきたグループなのです。
かなり乱暴なので我々も持て余しておりました。
王都の招集に応じてやって来たグループなので、こちらもあまり強く出られず。」
『彼らが私に金品を強要した時に、あなた方は何の注意喚起もしなかった。
私に言わせれば、この時点で共犯関係を疑われても仕方ないのだが。
特にキャシーさん。
女性を責めるのは心苦しいが、貴女は案内担当なのだろう?
結託を疑われても文句は言えまい?』
度胸のある女だ。
俺の殺意を悟っても、パニックにならずに必死に冷静さを保っている。
「仰る通りです。
反論の余地もありません。
ただ、問題解決の為に騎士団憲兵部に通報したことだけは信じて下さい。」
『論点を逸らさないで欲しい。
今は貴施設の私への敵意の有無を論じている。
憲兵に通報?
私を不当に売ろうとしているだけじゃないのか?』
「本当です!!!
ゴンザレス氏の言動が悪質な脅迫行為に該当すると判断し、その旨も伝えた上での通報です!」
『口では何とでも言える。
やって来た憲兵が有無を言わさず私を斬る可能性もある。』
「こちらは通報記録です!
本来の規約ではお見せ出来ないのですが、どうぞご閲覧下さい!
万が一裁判に発展してもヤブキ様の側の証人として証言すると誓約します!」
キャシーは電報文のような紙片を差し出して来るが、生憎俺にはこの世界の文字が読めない。
『この国に正当防衛の概念があるかは不明だが、私はその状況にあったと主張する。』
「はい!
私も正当防衛に該当すると考えます。」
『君が考えた所で、この国の司法機関がそう思わなければ意味がない。』
「仰る通りです!
ですが!
それでも私個人がまずヤブキ様の戦闘行為に正当性があったと認識しております!」
『…口では何とでも言える。』
「正当防衛です!」
キャシーは必死に震えを押し殺しているが、怖いのは俺も一緒である。
むしろアウェイの恐怖に潰されそうになるのを必死に堪えているのだ。
「ヤブキ様に最大限の便宜を図ります!」
『いや、それでは私が怖いので最小限の便宜を図って欲しい。』
最小限という単語を聞いた瞬間に、キャシーの目元に恐怖が浮かんだ。
なるほど、この女は馬鹿じゃない。
「…はい、何なりと。」
『ゴンザレス氏に弔意を示す為にも、仲間の方に弔慰金をお支払いしたい。
紹介してくれるか?』
キャシーの知能ならば、これが踏み絵だと理解してくれると期待していたし、踏んでくれるとも信じていた。
「はい!
ゴンザレス氏と親しい方はあちらのテーブルの2名です!
ジョンソン氏とモロゾフ氏。
両名とも短刀術の達人として尊敬を勝ち取っております。」
『ありがとう。
君は私の尊敬を勝ち取った。』
「恐縮です。」
キャシーとの会話はギルド内に居た全員が固唾を飲んで見守っていたから、ジョンソン・モロゾフの両名も俺と目が合うなり卑屈に笑いながら近づいてきた。
「ゴンザレスの奴には俺達も迷惑してたんですよぉ。」
「弔慰金なんて申し訳ないですぅ。」
なるほど。
一味で雰囲気は似ているな。
スチャッ。
「え!? ちょ!?」
「違ッ!!! 待ッ!!!」
バキューン!
バキューン!
死体が2つ。
ギルドは恐怖に包まれ、鼓動すら聞こえない程の静寂が支配した。
一味全員の死を確認した俺は顔を上げようとするが、それよりも早くキャシーが叫んだ。
「正当防衛ですッ!」
駆け付けた憲兵隊にも更にもう一度同じセリフを吐いたので、キャシーを殺害リストの最後尾に回してやった。
この様にして、俺はめでたく冒険者ギルドへの登録を済ませることが出来た。
今回の殺害人数 8名
総殺害数 9名
【ステータス】
「名前」
矢吹弾
「能力名」
ピストル
「能力」
詳細不明
リボルバー式の銃がホルスターごと腰に固定される。
弾倉数5。
撃ち尽くすと数秒後にリロードされる。 (要検証)
「パラメーター」
《LV》 2→4
《HP》 15→19
《MP》 10→16
《力》 5→7
《速度》 10→12
《器用》 15→19
《魔力》 10→10
《知性》 10→12
《精神》 10→18
《幸運》 20→26
《経験》 900
本日取得経験値 800
次のレベルまでの経験値500
☆レベルアップルール
召喚者の初期レベルは1。
レベルアップに応じて必要経験値が100ずつ増加する。
1→2 100
2→3 200
3→4 400
4→5 700
5→6 1100
6→7 1600
7→8 2200
8→9 2900
9→10 3700
10→11 4600
【筆者から】
貴重なお時間を割いて頂けた事に感謝しております。
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主人公が撃ちに行きます!!
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