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君の傘になってあげる

 俺、八高茂(やだかしげる)38歳独身男。日々上司に怒鳴られる社畜だ。

 大人になったらそんな毎日が続くとは子供の頃は思っても見なかったなぁ。と一人悲しくなる。

 現在時刻は11時–––。

 とりあえず家に帰って酒でも飲むか、と思い家に帰る為のバス停のベンチへ向かう。

 この時間帯のベンチは俺の特等席だ。特等席と言ってもこんな深夜にバス停で待っている人を見たことがない、というのが本音だが。

 

 ポツ、ポツポツ...ザーーーーー


「わ、わ、わわわ!」


 急に大雨が降ってきてしまった。でも大丈夫、俺の好きなお天気お姉さんの川南(かわみな)さんが

『今日は夜から大雨になるでしょう!折り畳み傘を持っていくとGOOD!」

 と言っていたから持ってきているのさ!


 雨の中ら歩いてるうちにバス停が見えてくる。

 いつもの少し古びたバス停。そのにはいつものベンチが–––––


 なかった。そこには人影があった。


 近づいて見ると"それ''はびしょ濡れの女の子だった。


「えっと、大丈夫?君びしょ濡れだけど...」

 俺は声をかけると同時に傘を差し出す。

「...」

 その女の子はちらっとこちらを見ると、俯いたまま黙り込んでしまう。


 見た目は15歳ほどの何故か中国味を感じる服を着た女の子だった。

 その子に無視されてしまい無言の時間が続く–––。


 少しすると家へ向かうバスが着いてしまった。 

 俺は最後に少女の方を向いて思い切って言う。


「君、この傘あげるよ。この後も雨止みそうにないし...」


 そういうと少女はびっくりしたような顔でこちらを向くと、何か呟き始める。

「くれ...すか...?」


「ん?なんっていった––––」


 次の瞬間、少女は俺の手首を掴んで言った。


「あたしの、カサに、なってくれるデスカ?」


 バズが後ろで雨を切りながら走り去っていくのを背中で感じながら言葉を探した。


「君の...傘に?」


 どういうことだか全くわからなかった。でも日本語がカタコトだったことから、外国人なのだと予想がついた。


「シショウ、言ってた。カサになってくれる、人、探しだし、その人についてイケって。」


 少女はさっき黙っていたのが嘘のように話し出すと、可愛らしい笑顔を浮かべる。


「アタシ、『シー ハオレン』。よろしくネ、八高さん」


 そういうとハオレンは俺の手首を掴んだまま、雨の中を走り出す。

 その瞬間、俺とハオレンの冒険は始まっていった。



 なぜハオレンは俺の名前を知っていたのか。それを思い出すのはずっと先のことだった––––。


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