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番外編~ side. ルーファス

「そら、追加だ」

「まだあるんですか!?」


 叔父のマーヴィンが書類の束をドサッと置いた。既に机の上は書類の山である。悲鳴のような声を上げるルーファスをマーヴィンがジロリと睨んだ。


「嫌なら、領地の私兵団に入れてやってもいいんだぞ」

「や、やりますよ……」


 ルーファスは現在、アシュバートン侯爵家の領地にいる。領地を管理しているのは侯爵の弟、マーヴィンだ。

 侯爵の指示により、ルーファスはマーヴィンの下で領地の内政を一から学び直すことになったのだ。そこで2年以内に結果を出さなければ廃嫡という条件付きで。


 アシュバートン侯爵も決して甘くはないが、マーヴィンは更に厳しかった。泣き言を言っても全く容赦ないし、手を抜こうものなら叱責が飛んでくる。

 与えられる仕事量は多く、夜中までかかることもあった。普段から執事やアデラインに頼り切っていたルーファスに、それがこなせるわけもない。


「全て今日中にやっておくように。終わるまで食事は与えないからな」と言い捨てて、叔父は去っていった。


 叔父の姿が見えなくなったのを確認してから、ルーファスはペンを床に投げつける。

 

(くそっ。叔父上は、自分の息子を侯爵家の跡継ぎにしたいんだ。だから必要以上に俺へ厳しい課題を与えているに違いない)


 実のところ、マーヴィンは甥のルーファスを本当に案じており、彼のためを思って厳しく指導しているだけだった。ルーファスがそこへ思い至れるような性根であれば、そもそもこんな状況にはなっていないのだが。


「今頃、あいつはどうしているんだろうな」


 ルーファスはアデラインのことを考えていた。


 あれほど愛おしいと思っていたクリスティーナだが、なぜか今は会いたいと思わないし、思い出すこともあまりない。以前なら彼女を思い浮かべただけで胸が高鳴ったのに。


 アデラインが横にいるからこそ、クリスティーナが輝いて見えたのだ。そのことに、ルーファスはようやく気付きつつあった。

 だからといってアデラインに対する想いが変わったわけではない。今でも可愛げのない女だと思っている。


 だけど少なくともアデラインと結婚していれば、こんな状況にはならなかっただろう。


(……今さら後悔したところで、仕方ない)

 

 ルーファスはペンを拾い上げ、また机へ向かった。


◆ ◆

 

「ルーファスはどうだ?お前の目から見て」

「率直に言わせて頂くと、とても当主に相応しいとは思えません。仕事は遅い上にミスも多く、執務能力に欠けています。また配下に対する指示もいい加減。さらに見下す態度を隠さないため人望もありません。何より人の助言に耳を貸さないところが致命的です」

「……そうか。残念だが仕方あるまい。以前話したように、お前のところの次男エドワードを養子に迎えたい」

「はい。父親の私が言うのもなんですが、エドワードは勤勉かつ優秀です。兄上の元で数年揉んで頂ければ、良い当主になるでしょう」


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