第83話 残響のオペラ その2
将臣は王都でのOJT研修にあたり、妹のファイ、ターニャ、ゆあと同居することになった。
ある日、ゆあは将臣たちとの合同訓練で、将臣の同僚お小夜と知り合いになった。
一ヶ月もすると、ターニャは将臣のはっきりしない態度に不安と苛立ちを持ち始めた。
数日後、ゆあの姉であるヒルダ皇太子妃の命令で、オペラ座の地下に幽閉されている皇太子を探しに行くことになった。
ゆあたちは舞台裏からドブネズミのモンスターが出現する地下に潜入した。
ドワーフの家には皇太子は誘拐ではなく遊びに来ていると言う。
状況を整理すると、皇太子の暗殺を企てている者がいる疑いが強まった。
翌日、将臣はお小夜の家で二人きりで時を過ごしてしまった。
お小夜の家から帰ると、ターニャが夕飯の仕込みをしていた。
「ただいま。これ、お小夜ちゃんから漬物」
「おかえり!あら、わざわざ研修所に持ってきてくれたの?」
「え?あ、うん。そうそう。持って来てくれたんだよ」
将臣は直感が働き、咄嗟に嘘をついてしまった。ターニャは将臣に違和感を覚えた。
「まあくん?」
「あ、ご飯までちょっとあるからさ、俺、クリーニング屋で受け取って、そのままドワーフの奥さんに服を返してくるよ」
将臣は逃げる様に家を出た。頭の中に、お小夜の「また来な」という言葉がこだました。
途中でクリーニング屋で借りた服を受け取って、そのままオペラ座へ向かった。オペラ座のスタッフ通用口の受付の前に来た。
「すみません、ドワーフさんいらっしゃいます?服を返しに来たんですけど」
「はい、お待ちください」
館内放送が流れて、しばらくするとドワーフが来た。
「ら?あんた誰だい?」
「初めまして。昨日奥様から服とカツラを借りたので返しに来ました」
「え、うちの妻と、どういう関係?」
ドワーフはちょっと苛立っていた。
「あ、いや、怪しい関係ではありませんよ。昨日王太子殿下とお話しして、急に女装する羽目になったんです」
「そうなの。じゃあ受け取っておくよ。はい。どうも」
「それじゃ、奥様にありがとうございましたとお伝えください」
そう言うと、将臣は通用口を後にした。少し当たりが強いヤツだったなと思いながら敷地の外に出た。通りのカフェテラスが目に入ると、自分でも信じられない光景が展開されていた。
「えっ?」
そこには、ファイがいた。そしてその向かいには、あのドワーフ少年がいて、楽しそうにお茶をしていた。
「あのドワーフ親父!何が「うちの妻と、どういう関係?」だよ!俺の妹とあんたの息子はどう言う関係なんだよ!?」
将臣はダッシュで二人のテラス席に駆け寄った。
「はあっはあっはあ。やあ、ドワーフくん、昨日は妹たちが世話になったみたいでありがとう」
「わっ。お、お兄ちゃん!?ど、どうして」
「それはこっちのセリフだぞファイ。お兄ちゃんは、ドワーフくんのお母さんに服を返しに来ただけだ。ちゃんとした用事がある」
ドワーフくんは呆気に取られていた。
「ファイ、さあ帰ろう。ターニャが美味しいご飯を作って待っているよ。じゃあドワーフくん、これお代ね。はい、これで払って。じゃあ、ありがとう」
「ちょっとお兄ちゃん!」
将臣はファイの手を引いて連れて帰った。ドワーフくんは依然として呆然としていた。
「ファイ、一体いつ連絡先を交換したんだ?」
「してないよ。オペラ座がすごいなあと思って。それでもう一度来たら、ばったり鉢合わせしたんだよ?」
「そうか、じゃあ、もう会うこともなさそうだから安心だな」
「もぉ〜、お兄ちゃん……」
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