第70話 オペラ座の矮人 その10
将臣は王都でのOJT研修にあたり、妹のファイ、ターニャ、ゆあと同居することになった。
ある日、ゆあは将臣たちとの合同訓練で、将臣の同僚お小夜と知り合いになった。
一ヶ月もすると、ターニャは将臣のはっきりしない態度に不安と苛立ちを持ち始めた。
数日後、ゆあの姉であるヒルダ皇太子妃の命令で、オペラ座の地下に幽閉されている皇太子を探しに行くことになった。
ゆあたちは舞台裏から地下に潜入し、オペラは第一幕が終わった。
「まあくん、まあくん。第一幕、終わったよ!?」
ターニャは第一幕が終わった拍手が鳴ると将臣の肩を揺らした。
「ふにゃ!?お、おお。寝ちゃったよ、助かった」
将臣は腰をかけたまま両手を前に出してブツブツ言い始めた。すると、水神を召喚した時の様な光が出現した。
「よし、これだな!」
将臣はその光に頭を突っ込んだ。
一方、地下のゆあ達は。
地下は石壁の道になっており、そこを進んで行った。少し水が出ているのか、道の脇に掘られた溝に水があり、空気もじめっとしていた。
ゆあのスキル「冒険者の光」で周囲は照らされ、あまり暗いとは感じない。少し進んだところでゆあが立ち止まって動かなかった。
「お嬢様?」
ヘルポスが不思議な面持ちで訪ねると、ゆあは焦りの表情を隠さなかった。
「ここにマップがありますわ。ですがわたくし、既にどこなのか分からなくなりましてよ」
「えっ?」
ゆあは地図が読めなかった。困ったゆあの顔を見て湯八が助け舟を出した。
「ではあっしが。どの方向に何回曲ったかは記憶しておりやす。ふむ……ここに行けばいいんですね」
その時、何かが鳴く声がした。チュイー!チュイー!
ヘルポスが周囲を警戒すると、カピバラよりも更に大きなドブネズミが威嚇してきた。
「でたな!モンスターだな!?」
「不衛生ですわ。接触には気をつけて戦いなさい!」
「せあっ!!!」
ゆあの話を聞く間も無くラヌクスが飛び出し、ドブネズミの顔面を素手で殴った。ドブネズミはピギャーという声をあげて吹っ飛んだ。
他のメンバーがそれぞれ身構えたと思ったのその時、水神の胸の辺りが輝き始めた。
「お、おお、何だ?」
水神の胸に輝く光はバチバチと音を立たと思ったら、その中から将臣の頭が出てきた。
「おし、あれ?どこから見てるんだ?あ、ゆあ、第一幕が終わった!」
「ま、将臣?随分変なところから出てくるのね?あ、ちょっと、あのモンスターのレベルわかって?」
「え?モンスター?あのネズミかな?ええと……、5だね。戦闘中か!じゃ、頑張って!」
そう言うと将臣の頭は光の中に消えた。
ゆあ達が唖然とした時、それをスキと見計らってドブネズミが突撃してきた。
「汚いネズミはワシにまかせい。はああああ、せい!」
水神がドブネズミに手をかざすと、地面から水が噴き出しドブネズミを覆った。
「滅せよ!水獄棺!」
水の中でドブネズミはもがき苦しみ、やがて痙攣して窒息死した。
「見た目に似合わず恐ろしい技を使うのね……」
「一応神じゃからの」
戦闘が終了したが、何か納得がいかなかった。ゆあは憮然とした表情でつぶやいた。
「レベル5……。ちょっと弱すぎると言うか、違和感がありますわね」
ラヌクスはドブネズミを殴った拳をじっと見つめている。
「お嬢様、ドブネズミを殴った拳ですが、早くも痒くなってまいりました」
ゆあはリヨイのダンジョンでも似た様なことがあったと思い出した。
「ラヌクス、学びなさい……」
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